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292話 調査報告(1)

「クレハ!!」


「レオン……あ、ただいま戻りました」


 リアン大聖堂から帰宅すると、レオンが出迎えてくれた。時計は12時半を過ぎたところ。それほど遅い時間でもないというのに、まるで待ち構えていたみたいな勢いだ。レオンは私の頭からつま先に向かって視線を巡らす。この行動に少しだけ居心地の悪さを感じたけど、これは私の体に異常が無いかを調べているのだ。

 彼は私のリアン大聖堂行きを許可してくれた。でも、決して肯定的だったわけではない。私の強い希望ゆえに、渋々折れてくれただけ。こんなに心配している姿を見せられると、やはり申し訳ない気持ちが湧いてきてしまう。


「何事もなく終わったみたいだね。良かった……」


 レオンによる厳しいチェックに私は合格したようだ。特に変わったことがないと分かり、ようやく安心することができたみたい。彼は深く息を吐き出した後、私の体を抱きしめる。


「おかえり。無事に帰ってきてくれてありがとう」


「……心配かけてごめんなさい」


「レオンー、俺らも一緒にいたんだよ。気持ちは分かるんだけどさぁ……もうちっと楽に構えてなよ。これからしばらくは通うのに、毎度こんな調子で大丈夫なのか? あんまり考え込み過ぎるとハゲるぞ」


「ルーイ先生もおかえりなさい。すみません……先生や部下たちを信頼していないわけではないのです。クレハが絡むと俺は臆病になってしまう。ハゲたくはありませんが、こればっかりはどうしようもありません」


 レオンの心情を理解しつつも、もう少し気を抜いてもいいじゃないかとルーイ様は意見する。レオンも自分がやり過ぎであるという自覚はあるのか、気まずそうに笑った。


「まあまあ、おふたり共……用心に用心を重ねるのは決して悪いことではありませんから……」


「姫さんが関わることなら多少大袈裟なくらいが丁度いいってね。でもさ、俺たちはボスの方も心配なんだよ。先生の言う通り、あんまり思い詰めないようにね」


「分かっているよ。ルイスにレナード、ありがとう」


 忘れそうになるけど、レオンだって私と2歳しか変わらない子供なんだ。ルイスさんも言うように、無理をし過ぎないで欲しい。悩みの種を増やしている私が言えたことではないけど……


「レオン殿下。クレハ様は立派に調査を行っておられましたよ。マードック司教様を始め、聖堂の者たちも皆好意的でした。一番隊の警備も充分に行き届いていたようですので、安心して下さいませ」


「シャロン・フェリス隊員……案内ご苦労だったな。調査がスムーズに行えたのは君の存在も大きいだろう。引き続きクレハをよろしく頼む」


「はい! お任せ下さい」


 レオンは私に同行してくれた部下たちを労った。私のリアン大聖堂調査1日目は無事に終了した。


「クレハ、改めてご苦労様。疲れてるだろ? 今日はもう自室に戻ってゆっくり体を休めておいで」


「お気遣いありがとうございます。私は大丈夫です。まだ調査の報告もしておりませんし……休むのはそれが終わってからにします」


「報告は先生や兄弟たちに任せてもいいんだよ」


「いいえ。これは私が言い出した事です。最後まで私にやらせて下さい」


 レオンは眉間に皺を寄せているが、私だって譲れない。無言での見つめ合い。先に折れたのレオンだった。


「分かった。それじゃあ、クレハにお願いしよう。場所を移すからついておいで」


「はい!」


「あんな風にお願いされたら断れないよ。真剣な顔も可愛いんだからさ……」


 レオンは後頭部を掻きながらブツブツと呟いている。独り言らしくあまりよく聞こえないが、強情な私に呆れたのかもしれない。そんなレオンと私のやり取りをルーイ様がニヤニヤしながら眺めていた。なんなの、あの顔……どんな感情なんだろう。


「クレハ、俺も行くよ」


「えっ? あ、はい。よろしくお願いします、ルーイ様」


 よく分からない笑みを浮かべていたと思ったら、ルーイ様は私に同行すると名乗りをあげた。そのため、報告は私と彼で行うことになる。

 ルーイ様が一緒にいてくださるのは心強いけど……私が上手く報告できるか心配だったのかな。彼は途中で私たちと別行動をしていたので、出店での聞き取りに参加していない。単純に話の内容が気になるだけなのかもしれないな。









 レオンに連れてこられたのは、彼が現在執務室代わりに使っている客室のひとつだった。中には既にセドリックさんとミシェルさんが待機しており、私たちを出迎えてくれた。


「おかえりなさいませ、クレハ様……ルーイ先生。何事もなく無事にお戻りになられて祝着至極に存じます」


「セドリックさんにミシェルさん。ただいま戻りました」


「さあ、どうぞこちらにお掛けになって下さい」


 ミシェルさんに促され、私とルーイ様はソファに腰を下ろした。私たちに続いてレオンは向かい側の席についた。


「ミシェル、ふたりに何か飲み物を用意してあげて」


「かしこまりました」


 レオンはミシェルさんにお茶の準備をするよう命じた。正直のどが渇いていたので有り難い。


「さて……それでは、先ほどの話の続きをしようか。クレハ……そして、ルーイ先生。よろしくお願いします」


「はい。ルーイ様、まずは私からお話しさせて頂きますね」


「どうぞー。俺もそっちサイドの様子が気になってたからね」


 私は今回の調査で得ることができた情報をレオンたちに伝えた。ワンダさんから聞いたニコラさんのこと……そして、テレンスから教えて貰ったとある人物の名前。特に後者は今後の調査に大きく影響を与えるはずだ。

 レオンは私の話を黙って聞いてくれた。拙いながらも伝えるべき事はちゃんと言えたのではないだろうか。私の報告を受けて、レオンはどんな言葉を返してくれるのだろう。真剣な顔をしていた彼がゆっくりと口を開いた。



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