聖剣でデーモン・コアしてみた。
色々とやばい作品を作り出した自覚はあります。
それでも良ければお読みください。
「魔王デーモン、覚悟!」
勇者の聖剣が悪魔を貫く。
致命の一撃は心臓まで達し、その肉体は闇の粒子となって崩れ去る。
それは、長きに渡り、多くの犠牲を出してきたこの戦争に終止符が打たれた事を意味していた。
魔王が断末魔を叫ぶ。
「━━おのれ、勇者。だがこの魔王、ただでは死なぬ!」
「何!? 悪足掻きを!」
魔王の言葉に身構える勇者。
しかし、何も起こらない。
「……何も、起こらないんだが?」
「ふふふ、甘い! 我が秘術は既に完成しているのだ!」
「何だと!? まさかアレか? アレなのか? 俺を倒しても第二第三の魔王が現れるとか言うアレなのか!?」
「待て、待て、落ち着け。貴様何か勘違いしてないか? 後、妾は女だ。間違っても俺なんて下品な一人称を使うな! そんな事をしたら妾の性別が男として伝えられてしまうだろうが!」
魔王は赤面して叫ぶ。
「そこ気にするのか!? お前は残虐非道な魔王だろう!?」
「魔王である以前に乙女だ! 繊細な乙女心を舐めるなボッチ勇者! だからお前はモテぬのだ!」
「はぁー! そこ言うか、言っちまうか! お前こそ胸もないから男だと思ってたわ! 女を名乗るならもうちょっとナイスなバディになってから出直してこい!」
「な、なんですってぇ!?」
死ぬ間際なのにギャーギャー元気な魔王。
最終決戦の結果ボロボロな筈の勇者も対外おかしいのだが、そこは選ばれし魔王&勇者パワーという事で容赦してもらいたい。
「ま、まぁいい。貴様はここで死ぬのだからな! 勇者よ、下を見ろ!」
勇者は言われるがままに足元を見る。
「床だな。鉄か?」
「炭化タングステンだ。次、上を見ろ!」
言われるがままに今度は上を見る。
「なんだあれ? 反球状の鉄塊が、鎖でぶら下がってて……?」
「未臨界の超巨大プルトニウムの塊だ」
「ふーん、で?」
消えかけの魔王は無い胸を張って、超巨大プルトニウムをぶら下げている鎖を示す。
「あの鎖は妾の魔力でできておる。そして、妾が完全に消滅したとき、あの塊はここに向かって落ちてくるという寸法だ」
……。
勇者は黙ってプルトニウムの真下から外側に移動する。
これであれが勇者の頭蓋を砕く心配はなくなった。
「そして、あの塊がこの炭化タングステンの床と接触した時、臨界反応による核分裂を起こる、すると━━」
「すると?」
魔王はこれ以上無いほどのドヤ顔でこう言ってのけた。
「致死量の放射線が放出され、お前は死ぬ。ついでにこの国は終わる」
「お前、何てもん作ってくれちゃってるの!?」
勇者は頭を抱えて絶叫する。
魔王はニマニマ笑いながら勇者の耳元で囁く。
「お前が私を殺す事でこの装置は完成したのだ。美少女との初めての共同作業だぞ、喜べ勇者━━コア君? この子の名前は、デーモン・コアでどうだろう? 私達の名前をから取ってみたんだ、いい名前だろう?」
魔王がそういうと同時。
ガシャン━━と、鎖は弾け飛び、未臨界の超巨大プルトニウムの塊が炭化タングステンの床に接触する。
━━その直前。
「させるかァァァ━━!」
勇者はその間に聖剣を滑り込ませ、プルトニウムの臨界を未然に防いだ。
「な、何ぃぃ━━!?」
既に体の殆どが闇の粒子となっている魔王が驚愕の声を上げる。
そして、勇者は魔王に向けて高らかに彼女の敗北を宣言をする。
「どうだ魔王! 貴様の目論見は失敗に終わったぞ!」
「そんな馬鹿な、その程度で防げる訳が━━」
「あ、聖剣には聖域の加護があるからプルトニウムはタングステンと非接触状態になっているから」
「そんなぁ………」
心臓を貫かれてから数分後、無駄にしぶとい魔王は闇の粒子として拡散し、今度こそ完全に消滅した。
勇者はこのダンジョンの近隣にあった村に、デーモン・コアに挟まった聖剣ドライバーを誰かに抜かぬよう守護するように伝え、帰路に着いた。
『封印の聖剣が抜かれし時、世界に厄災が訪れる』
その言い伝えを忠実に守り、村人達はダンジョンの入り口を完全に封鎖し、守り伝えていく事を誓った。
━━そして数百年後、歴史は時の流れと共に改変される。
王国に伝えられた言い伝えは、あろう事か正反対の意味である、
『聖剣を抜いた者が世界に厄災を撒き散らす魔王を倒す勇者となる』
という言い伝えに変化してしまった。
そして、不幸な事にお金目当ての邪悪な占い師(もとい詐欺師)が、魔王の復活という嘘っぱちを国王に進言したのだ。
当然、村人達は反対した。
しかし、その伝承を代々と伝えてきた結果、村人達は"デーモン・コア"を御神体として信仰しており、王国や教会により悪魔崇拝と指定されて、魔女狩りによる一族郎党皆殺しにあった。
そうして、時は魔王討伐より500年後の現在に至る。
王国指定勇者、ワンダは勇者コアの聖剣を抜く事に成功した。
そして、超巨大プルトニウムの塊からの青い光を全身に浴びて。
「祝福の光だ━━!」
と叫びながら絶命した。
アホである。
ついでに王国も消しとんで滅びた。
━━BAD END━━