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歪みは、波紋となって広がり、添って境界が顕現し、茫茫たる赤黒い界面を現した。
その対となる宙には、極光が如き淡い幕が垂れ込んでいく。
血の水面を見るように、艶やかな朱殷に染まる地平に、闇の帳に淡い多原色の幕を壮麗に揺らめかせる宙。
そして、それらの間にあって、皓皓と盛る白銀の灯...
これが、この煉獄のすべて。
霊妙な、澄んだゆらぎ...〈果実〉と呼ばれる、あの白銀の灯です。
どうやら、悪魔と称する得体の知れない存在とある約束を結んだらしい。
今でもそうですが、私には、その約束とやらについて、全く身に覚えがありません。
ですので、当時は、現実逃避、というか無視をしました。
が、その約束は恐ろしいもので、反故にすると、その先には死が待っているというものでした。
その約束といのは、こうです。
〈果実〉を採ってこい、と云うのです。
「幾つですか?」
と聞くと、その悪魔は云いました。
『胎が満ちるまで....そうじゃな、六六六』
......。
そんな理由で居る煉獄は、人間が認識できる世界ではない。
そんな私は今は人間ではない、、半分は。。
私の中にある、もう半分の私、
併せ持つことになった、内なるもう一つの存在、
"魔法少女"
使い魔曰く...
♀の内に宿る悪魔のこと。
創世♀は、悪魔の格と魂から創造され、その内に宿る悪魔の格・〈魔性〉を顕現させた存在が魔法少女と呼ばれる。
少女は、救済を祈り、悪魔は、それを叶えた。
悪魔は、救済を欲し、少女は、それを叶えなければならない。
それは、魔法(地獄の法)に基づき、交わされる契約。
その契約の対価、悪魔の救済は、六六六の〈果実〉。
それは煉獄に在る。
その為、霊なる存在に成らざるを得なかった。
肢片を喰らい、その身に宿した霊力の結晶体・霊象は、魔力によって魂と結合され、それにより〈魔性〉は覚醒する。
こうして、少女は魔法少女となる。
私にはその過程、記憶が一切ない。
が、今の私という存在が証明している。
逃れられない事実を。
私もその一人であるということを...
私の名は真野雪凛。
もう一つの名を、魔法少女という。
白銀まで一キロ。
上宙一帯を覆う多原色の膜が厚さを増していき、大きく緩やかに渦を巻いていく。
それは戦いの予兆。
始まろうとしていた。
私達の命を懸けた戦いが。