五話「稗田家のくノ一」
投稿が遅れてしまいすみません。。。
これからも、投稿期間に空きができるかもです。
「妖怪は人間の想像によって生まれる。つまり、人間は妖怪の母と言える存在ではないだろうか……ん~、今回の幻想郷縁起の始まりの語りはこれで行こうかな」
私は、筆を持ち紙に書く文章について悩んでいた。
「どうせなら、読んでくれる人がワクワクするようなストーリーを考えたいのよね」
私の名前は、稗田阿求、「一度見た物は忘れない程度の能力」を持っている。
この能力を利用して、私が得ている知識を誰かの役に立ってもらうためにも幻想郷縁起を書いているのです。
また、私は転生を繰り返していて今回で九回目となる。
ま!転生はしているけど、蘇る時に力を殆ど使っちゃうから前世の記憶は曖昧だけどね。
それでも、千年以上の経験と知識を書き記している幻想郷縁起を読むことで、前の私がどのようなことを調べていて、どう感じていたのかくらいは知ることができる。だから、全く記憶がないとは言い切れない。
「さ!妖怪と人間の関係性を書いた幻想郷縁起を仕上げないと」
私は、今日の予定を決めて早速本の続きを書こうとしたところで、ドタドタドタと廊下の方から音が聞こえて来た。
「…こんな騒がしく、廊下を入っている人物は一人だけ」
襖がザッと、開かれて一人の少女が明るい声で私に話し掛けてきた。
「阿求様!号外!号外!」
―――この瞬間私の今日の予定は崩れた。
ランランラン
私は軽快なステップをしながら、稗田家の屋敷に向かっていた。
「ラッキー、最近人里で噂の甘味処の団子をゲット出来た。いつも行っても売り切れているから、今日は運が良かったなぁ。早く阿求様の所に持って行こう」
手に入れた団子をサイドポーチに入れながら、目的地に向かって歩いた。
私の名前は、楽一祭お婆ちゃんの代から稗田家に仕えている“くノ一”。
そう私は忍者なのだ!ニンニン。
でも、忍者だからと言って、私は目立たない格好などは余り好きではない。
それに、元々髪の色が亜麻色で少し明るめとなっているから、逆に服だけを地味目にしたら目立ってしまう。
私は、亜麻色の髪に合わせて薄い黄色の長袖を着ており、胸より下で腰より上にある、白いコルセットを身に付けている。下の方はゆるりとした黄色い短パンを履いている。
私はお洒落も楽しみたい女の子なのだ!えっへん!
また、私には「色んなものを収納出来る程度の能力」を持っている。
さっきの団子もサイドポーチと比べて、大きいけど私の能力のお蔭で収納が出来るの。
それに、どんなに激しく動いてもポーチの中身がグチャグチャになる心配も無い。
本当に便利な能力だよね!
「よ~し、稗田家に着いた!…さてと」
稗田家の門の前で、準備運動を始めた。
一、二、三、四と膝を曲げたり、伸ばしたりした後に、屋敷の仲に勢いよく入った。
廊下は静かに歩いて下さいという誰かの声が聞えた気がするけど、き~こえなっと。
迷わず阿求様の私室の襖を開けて
「阿求様!号外!号外!」
「…はぁ、祭少しは大人しく入って来てよ」
「祖母の代から人生騒がしく生きないと楽しくないと教えられているもので」
「確かに、あの人ならそう言いそう」
阿求様は転生をしているから、私のお婆ちゃんのことも知っている。代々引き継がれている本に、お婆ちゃんのことも書いていたらしいから、転生で記憶が曖昧でも性格などを知っているらしい。
前に本に書かれているお婆ちゃんのことを聞いたことがあるけど、毎回騒ぎの中心で暴れまわっている人物と教えてもらったことがある。さすが、私のお婆ちゃんだよね!
「そんなことより、阿求様。コレ人里で今噂されている団子だよ!」
サイドポーチから、仕舞っていた団子を取り出して阿求様に見せたら、目を輝かして嬉しそうな顔をしている。
この顔見ると癒されちゃう。
阿求様は、紫色の髪をおかっぽにしており、鮮やかな緑色の着物の上から黄色の羽織を着けている。下は赤いスカートを着ていて顔は整っているので可愛い少女です!
まあ!私も負けないぐらい美少女なんだけどね
「丁度甘い物が食べたかったから、廊下の件はこの辺にしとく」
私は目をキランとさせて、狙い通りと心の中で呟いた.
「いえーい!さすが阿求様話が分かるぅ~」
それから阿求様と一緒に団子を食べた。
「阿求様!タレが付いている団子美味しい!」
「私は、抹茶味の団子が美味しいかな」
二人で色んな味がある団子を楽しんでいる時に、襖が開かれて稗田家に仕える使用人が入って来た。
「阿求様、お食事中に失礼します」
「いえ、大丈夫ですよ。どうしました?」
「心遣い感謝します」
使用人は深く頭を下げて、お礼を述べていた。
あ、阿求様苦笑いしている。いつも、気楽に接して欲しいって愚痴言っているからなぁ~
使用人として正しい態度だと思うけど、もう少しフレンドリーにしても阿求様は怒らないよ。
ここは見本を見せるためにも、私が行動しなければ。
「阿求様~」
「ちょ!何でいきなり抱き着いているの!」
私の顔を押しながら、阿求様は照れ顔でホールドを拒否しようとしている。
照れなくてもいいのに。
「…ごほん、祭さんに用があるのですが」
使用人さんが呆れた顔で私と阿求様のやりとりを見ていたけど、痺れを切らしたようで用を伝えるために話し掛けて来た。
「私に用があるの?」
「はい、いつもの妖怪退治の依頼が来ています」
「ああ~なるほどね」
私は阿求様のくノ一として誇れるように、人里に住んでいる人達の身の安全を守るため、妖怪退治なども行っている。まあ、危険なことばっかりではなく、子供の子守などもお願いされることもあるけどね。
ふと、隣を見ると阿求様が心配そうな顔でこちらを見ていた。
「うん、団子も美味しかったからね。元気100倍。ぱぱっと妖怪退治してくるね」
私はニカッて笑って阿求様に伝えた。
「……慢心をすることなく、気を付けて行ってね」
「分かっている、分かっている」
ぴょんぴょん跳ねながら、阿求様の私室から出て行った。
祭は私のために、人里の役に立つことを率先して行ってくれている。最初は、買い物の手伝いや留守番を引き受けるなど、簡単なお願いだけを聞いていたけど、最近は妖怪退治を主にお願いされることが多くなっている。
…私的には、妖怪退治のプロが幻想郷に居るのだから、そちらの方に任せた方が安心なのですが、彼女は私のために動いてくれており、実際に人里の人達の手助けになっているから私情だけで止めるわけにはいかないと思っている。
「本当に怪我だけはしないで、元気なままの姿で帰って来てくれることを祈るしかないのね」
私は、元気いっぱいに部屋から出て行く祭の背中を見ながら、毎回そう呟きながら見送っている。
「さ!元気いっぱいに、レッツゴーだよーー」
私は使用人から、聞いた妖怪の特徴と大体の生息場所の情報を頼りに、捜索を開始していた。
最初の捜索場所として選んだのは『妖怪の山』天狗が管理課にしている所に向かった。
妖怪の山は、妖怪がたくさん生息している所だから探しているターゲットが居る可能性高いよね。
ついでに、美味しそうな山菜を見つけて採取しようっと。
私はスキップしながら妖怪の山に侵入した。
通常なら、天狗が管理している山に簡単に入ることはできない。でも、私は独自のルートを確保しているので気付かれることなく侵入が可能なんだよね。
ま、私くノ一だからね!侵入するのはお手の物だよん。
「あ!この山菜は油で揚げて天ぷらにすると美味しいだよね。いっぱいとって阿求様と食べよう」
山菜を取るために、木から降りた。
何で私が木の上に居たのかというと、移動手段として枝から枝に飛び移っていたから
地面を走った方が速いかもしれないけど、木の上を飛び移った方が忍者っぽいからね。
山菜をしばらく取っていると遠くから枝が折れる音と何かが地面に落ちたみたいな音が聞こえてきたのだ
何だろう?何かあったのかな?
気になるから、音がするところに向かってみよっと
音がしたところの近くに来たところで、声が聞えてきた。
「ガォウウウウ」
どう考えても人間が発する声ではなかった。そのため、祭はスピードを上げていち早く正体を把握するために向かった。
そこには、使用人から聞いた通りの特徴の妖怪が居た。
一目で分かるほどにゴツゴツとした皮膚に覆われており、鋭利な爪がこちらを威嚇するように光って見えた。頭がないためどこを見ているのかいまいち分からない感じとなっている。
さてと、言葉は発しているみたいだけど知力はあるのかな?
この世界で生活している生き物が平等でいられるように、『弾幕ごっこ』と言われる決闘方法が設けられている。
でも、それはしっかりとルールを理解でき、お互いに賭けるものを決められるほどにコミュニケーション能力がないと適用されないのだ。
「やっほー、ちょっと貴方に聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
相手に知力があるのか調べるためにも、言葉を交わすことが大切だよね。
見た目はゴツゴツしていた可愛くないけど、喋ったら声が以外と可愛いかもしれないもんね。
さっき聞いた声は、喉に痰が絡んでしまってただけかもしれない。
「オオゥゥ!」
できるだけフレンドリーに近づいた祭に対して、向こうは右手?右前足?を振りかぶって祭目掛けて下してきた。
祭は咄嗟に、バックステップでその場から離脱した。
妖怪が力いっぱいに振り下ろした攻撃は、地面を抉っており、あのまま人間である祭に、その攻撃が当たっていたら命はないだろう……
自分の引っ掻きが不発に終わったことを悟った妖怪は、再度祭に攻撃を仕掛けるためにも、近づいてきた。
うん!コミュニケーション能力皆無だね。
じゃあ、仕方ないよね。文字通りの妖怪退治を始めようかな。
私はもう一度引っ掻き攻撃を仕掛けてきた。妖怪の攻撃を躱して距離を取り、反撃のタイミングを見極めようとした――――その時……
「おーい……道に……教えて…」
ん?人の声?
あ!ゴツゴツちゃんが、声の方向に向かって行こうとしている。
「ガォウウウウ」
大きな声で吠えながら、声らしきものが聞えたところに向かおうとしている
今だね!
サイドポーチに手を突っ込んで拳ほどの大きさの玉を取り出した。
それは、弾幕ごっこでは使われることがない高火力の爆弾、祭が妖怪退治をする際によく使うものだ。
「お願い爆爆ちゃん。やっちゃって!」
私は持っていた爆爆ちゃんをゴロゴロちゃんの足元に落ちるように投擲した。
確実に妖怪を退治できるように火力を高めているので、妖怪の姿を一瞬で爆炎の中に吸い込んだ。
――――ドカン
爆炎が引いて、代わりに煙がモクモクと出て来た所には、妖怪の姿は跡形も無くなっていた。
「やった!お願いされてた妖怪を倒したぞ、さてと、阿求様に報告しないとね」
……と、油断しないようにしないと。
「まだ、何処かに隠れている可能性ってあるよね……ふぅ、居ないみたい」
敵を倒した後が、一番油断が生まれる瞬間だからね。倒した時こそ警戒しないとね。
「さっき聞えた人みたいな声どこからなんだろう?」
声がした所の周辺を捜してみたけど人影ないなぁ。
やっぱり、妖怪の山に人が迷い込んでしまうことはないよね。
天狗が管理しているから、入ってしまう前に止められるから。
おっと……何か近づいて来ている。
ここは妖怪の山、私よりも強い妖怪がうじゃうじゃ居るところなんだよね。
うん、早く下山した方がいいかな。
そう思い私は妖怪の山から去ることにした。
妖怪の山から無事下山して、使用人の方に人里の住人が軽快していた妖怪を退治したことを伝えた。
「ありがとうございます。祭さん」
「いいよいいよ!一瞬で終わったから疲れることなかったからね。あ!コレ妖怪の山に入ったついでに、採ってきた山菜なんだけど、今日の夕食に使ってくれないかな?」
「これはこれは、新鮮な山の幸をありがとうございます。では、この山菜を使って天ぷらを作るとしましょう」
「わぁーい!」
今日の夕食の楽しみができちゃったな!
「じゃあ使用人さん、夕食の準備お願いね!私は阿求様のところ行って来るから」
「はい、分かりました」
――――阿求私室前
「阿求様!お待たせ!心配していた?」
「ふぁあ~…あら?お帰り祭」
「あ!阿求様、私が凶暴な妖怪と戦っている時に寝ていたのーーー!」
「えぇ、ぐっすり眠れちゃった」
見栄を張っちゃって、眠っていたなんて嘘簡単に分かっちゃうな。
だって、布団が敷かれるわけでもないし、幻想縁起は私が出掛けた時のままで進んでないんだから。
どう考えても、私のことを心配して執筆出来なかったと思える!
でも、そんなことを悟られたくないからって、私が入ってきた瞬間に欠伸をして眠ってたアピールするなんて!可愛いんだから!もぅ。
「ひどーい、妖怪相手だから怪我するかもしれないのに」
阿求様が心配していたことを隠したいと思っているなら、気付いてないふりをしないといけないよね。
「……怪我したの?」
「うんん、一瞬で終わったから、かすり傷一つもないよ」
イケない、阿求様をあまり心配させる発言は控えないとダメだね。
さっきまで、気にしてないふりをしていた阿求様が、かなり心配そうな顔しちゃった。
……うん、私は元気ですよ!って見せるためにも両腕で、力瘤を作るポーズをとってみよう。
「ほ、そうですか。ま!祭は強いから無名の妖怪に負けることはないよね」
「そうだよ!私は稗田家現当主のくノ一、そこら辺の妖怪に負けることなんてないのだ!えっへん!」
「はああ、ならこれからも知らないところで、怪我をしたら許さないからね」
「ははー、怪我なく安全に妖怪を退治します」
右手をおでこ辺りに持ってきて敬礼のポーズもしてよう。
暫く、阿求様と喋っていると使用人さんが部屋の中に入って来た。
「夕食の準備が出来たのですが、お食べになりますか?」
「あ!そうえば、阿求様、妖怪の山に行ったついでに美味しそうな山菜を採ってきたんだよ」
「そうなの?なら、今日の夕食は楽しみね―――――夕食の準備お願いします。」
「畏まりました」
使用人さんは、いつも通り深く頭を下げて食事の準備を始める為に、部屋から退出していった。
「ふぅ、やはり他の人達の態度は緩和されないな」
「まぁ、皆阿求様に敬意を払ってくれてるんだけどね。でも、私みたいに接してもいいと思うんだけどね」
「全員が貴方みたいな接し方をしてきたら疲れそう………って、また抱き着こうとしない!」
「ああん!阿求様のいけず」
また、恥ずかしがって…今は誰も見てないから気にしなくてもいいのにね!
今度は簡単に諦めないから!
私→抱き着く→阿求様→両手で阻止→また、抱き着く
私の第二の死闘が開始した瞬間だったのだ。
暫く、阿求様と戯れていると使用人さんが食事を持って来てくれた。
予告通り、私が採った山菜を天ぷらにしてくれていたので、阿求様と美味しく頂いた。
他にも、野菜がメインの味噌汁などもあったので、充実した夕食を食べられたと思う。
稗田家で食事だけではなく、お風呂も頂いたのでかなり日が落ちてしまっていた。
「祭、今日はもう遅いから泊まっていきなさい」
「やったー!今日は阿求様と一緒の布団で眠るんだ」
「狭いから、別々で眠るわよ」
「えぇー、そんなぁー」
こうして、私の日常が一日終わっていくのだった。
もう一人の主人公として活躍してもらう予定です!
次回は、最後の主人公の登場回となります。