三話「擦れ違いの二人」
ちょっとシリアス回かもしれないです。
私には責任がある。
私の妹である、古明地こいしが第三の目を閉ざしてしまった責任が
こいしは、私と同じで、見た目は幼く見える、薄く緑色が入っている灰色の髪色、頭には丸みがある帽子を被っており、服装は黄色の上着で中心に三つのボタンが一定の間隔で並んでいて、緑色のスカートを着ている。
見た目だけなら可愛らしい女の子なのですが、彼女も妖怪であり、そこそこの年月を生きている。
そのため、覚妖怪の力で心の闇を長い間見てきている。だから、こいしは心が折れてしまい、第三の目を閉じてしまった。
能力を無理矢理閉じたことで、彼女の存在は他人から認識されづらくなってしまったのだ。
こいしは昔から他人と関わりを作りたいと考えていたのに、能力を封印したことで関わりが難しくなってしまった。
「…せめて、私だけでもこいしを簡単に見つけることができれば……」
認識されづらいため、自分のことをアピールしないと存在を把握してもらえない。
だから、こいしは寂しい気持ちになっているかもしれない…
あの子は昔から悩みを抱えていても、一人で悩んで周りには明るい姿を見せ続ける癖がある。
その傾向が分かっていたのに、私は表面上の姿を見て安心してしまい、こいしの内面を見ようとしてなかった…
「何が覚妖怪ですか……」
日頃は心の中を見ることができるから便利な力だと思っているのに、妹がピンチの時を把握することができないなんて優れた力ではありませんね。
いえ、能力に責任を負わせても意味がありません。使っている本人が無能だから気付けることも気付くことができなかったんでしょう。
「私なら未然に防げたかもしれないのに」
「さとり様、そんなにお悩みにならなくても…」
ふと声が聞えてきた。
顔を上げてみると、目の前に可愛いペットのお燐が心配そうな顔でこちらを見ていた。
…また、やってしまったようですね。
私は、一人になるといつもこいしが目を閉じたことを深く考えてしまう。そのため、心の声が聞えていても雑音程度にしか気にしてなく、近づいて来ていることに気付かない場合なども多い。
「…お燐、それは無理な話よ。だってこいしは私の妹なんですから」
私は最低の主人だと思う。心配してくれて声を掛けてくれたペットに対して突き放すような言い方しかできてないのだから…
そんな心配をしてくれるペットに対してしっかりと対応できない主人でもお燐は、私の悩みを解決できる方法を一生懸命考えてくれようとしている。
(さとり様がここまで悩んでいるということは、こいし様のことだろう。放浪癖の件かな?こいし様興味が湧いたものがあったら、時間のことを忘れて数日地霊殿に帰ってこないことは、ざらにあるからね)
その件も心配ではあるのですが、私が今考えていた悩みとは少し違いますね。
普通なら、心を読むことで考えていることが分かり、相手の先手を取ることができるから多少のトラブルは、当人に会うことができれば解決するのですが…
「こいしの心を読むことはできませんからね」
だから私は、目を閉じても尚こいしが苦しんでいるのではないだろうか?と考えてしまい、早くこいしと話をしたいと思ってします。
しかし、こちらからこいしを見つけ出すことは不可能に近い、だからこいしが話し掛けてくれた時に、それとなく聞こうとも考えているが…嬉しそうに話をしてくれるあの子の顔を見ていると、私が抱えている不安を聞いたことによって私達の前に二度と姿を現さなくなってしまうのではないだろうか?という考えも過ってしまう。
そのため、私は一歩を踏み出すことに躊躇をしてしまっているのでしょう。
そんな考えを巡らせていた日から数日が経っても、こいしは姿を見せてくれない。
数日地霊殿に帰ってこないことは、日常茶飯事だが今回は少し違った。
私達の周りには居るようなのだが姿を見せてくれない。
最初はこいしに何かトラブルが起きてしまい、姿を現すことができなくなっていると考えていた。
でも、それなら姿を見せることができなくても何かしら伝えることはできるだろう。
それもしてこないということは、妹の悩みに気付けなかった私に嫌気を差したという可能性も考えられる。
だからこいしは私の前から消えたのだと……
私はさとりお姉ちゃんの妹!でも、さとりお姉ちゃんみたいに心を読むことはできない。
自分で心を読むための第三の目を閉じたから読めなくなっちゃった。
でも、私は第三の目を閉じたことを後悔してないんだ。だって、この目があることで、他人から嫌われちゃうんだよ…
だから、私は心を読むことができなくなることは別に、いーやって思ったんだ。
目を閉じたことで、周りは私のことを認識しづらくなったけど、これはこれでイタズラがやりやすくなったって考えると面白いもんね。
実際に今日も、認識されなかったから面白い光景を見ることができた。
「今日あったこと、お姉ちゃんに早速話そう」
こいしは、そう言いながら自分の姉である、さとりの笑顔をイメージしながら、スキップでさとりの私室に向かった。
程なくして、私室の前まで着くことができ、ドアノブを回そうとした時に中から、さとりと、そのペットである燐の声が聞えてきた。
「さとり様、そんなにお悩みにならなくても…」
ん?お姉ちゃんを悩ませているやつがいるのかな?…よし、私がそいつをやっつけて、お姉ちゃんの憂いを取り除いてあげよう!
「…お燐、それは無理な話よ。だってこいしは私の妹なんですから」
え!?お姉ちゃんを悩ませているのって……私?
確かに、考えてみると私はお姉ちゃんを悩ませていることに、いくつか心当たりがあるような気がする。
同じ、覚妖怪なのに心を読むことができない点、第三の目を閉じたことで無意識化で行動することも多くなっているし、その時にお姉ちゃんに迷惑を掛けた可能性もある。
こいしが思考を巡らせて、自分がさとりに迷惑を掛けた場面などを思い出そうとしていた時に、また、扉越しから声が聞えてきた。
「こいしの心を読むことはできませんからね」
そうか、私は第三の目を閉じたことで心を読むこともできなくなったけど、心を読まれることもなくなった。
それは、周りの心の声が聞えるお姉ちゃんからしたら、とても怖いことだと思う……だって、周りの心は聞くことができるのに、できない存在が居て何を考えているのか分からないのだから…
言わば、私はさとりお姉ちゃんの天敵なんだ。もし、お姉ちゃんに敵対心を抱いている人に私が唆されてしまった場合、かなり危険な状況になってしまう。
そんな私の存在はお姉ちゃんからしたら目障りかもしれない。
……うん、お姉ちゃんにとって私の存在が悩みのタネで、恐怖を抱く対象なら地霊殿に近づかない方がいいかもしれない。
運良く私は、周りから意識されづらい…
だから、居なくなっても数日で私の存在を忘れて、お姉ちゃんは悩みがなくなってスッキリするはず。
「お姉ちゃんのためにもそうしよう」
こいしは、そう心に誓い行動に移すことにした。
……だが、地霊殿に近づかなかったのは一日だけだった。
一日だけで、こいしは自分の心に迷いが生まれてしまったのだ。
実の肉親である、さとりに会って話がしたい。地霊殿のペットである燐や空などと仲良くしたい。
そんな気持ちが一日で湧くほどに、こいしにとって地霊殿は…家族は大切な存在なのだ。
でも、その大切な家族に迷惑を掛けないためにも、関わらないようにしないといけない。
そのような考えが、近くに居るが存在を明かさないという中途半端な行動を取らせるようになってしまった。
そんな日々を過ごしていたこいしなのだが、その日は違った。
さとりの部屋から楽しげな会話が聞こえてきたのだ。
「どんな話をしているだろう?」
こいしは元々好奇心が旺盛な子だ。だから、さとりの部屋で何が行われているのか非常に気になってしまい、空が扉を大きく開けた時に一緒に部屋の中に侵入したのだ。
その部屋にはいつも見慣れている。
自分の姉とペットである燐、空以外にもう一人見知らぬ人物がいた。
その人間はさとりと気兼ねなく話をしており、最初は能力のことを知らないのかなと考えていたが、話の内容を聞いていると心が読めることは把握しているようと判断できた。
少し人間の話を聞いていると楽しそう気分になってきた自分も混ざりたいなと考えていた。
しかし、彼女がした決意がその行動をストップさせてしまい、楽しい気分から寂しい気分に変わってしまったのだ。
(お姉ちゃん楽しそうだな……私が居なくても)
そう考えたこいしは、更に悲しくなってしまいその場を離れることにした。
扉にその悲しい気持ちをぶつけるように少し強めに閉めて
「はぁ……私って最低な子だな」
先ほどの行動は自分で選んだことなのに、扉に八つ当たりをするなんて…
あの場の空気悪くなっちゃったかな?
反省しながら最近彼女の落ち着く場所として選んでいる、死体保管場所に籠っていた。
自分の部屋に籠ってしまうと、本格的に地霊殿を離れられなくなってしまうと考えているため、燐しか使わないような施設の中に逃げ込んでいるのだ。
そんな逃げ場に一人の人間が入ってきたのだ。
さっきの人間…
何しに来たんだろう?
まぁ、私には関係ないか…
そう考えたこいしは、彼に対する興味を失った。
自分の能力である「無意識を操る程度の能力」の力で自分の存在を把握することは無理だろうと考えての行動でもあった。
…しかし、彼は他とは違ったのだ。
彼自信の能力である「見極め把握する程度の能力」によってこいしの姿ははっきりと見えている。
だから、彼は彼女に近づいて「みーつけた」と言いながら、彼女に触れたのだ。
「え?何で、何で私が見えているの?」
「ふふーん、この俺が美少女を見逃すと思っているの?」
「…何を言っているか分からないけど、完璧に私が見えているってこと?」
どう言うことだろう?私は能力を使っている状態で、この人間が私のことを把握できるアピールはしてないはずなのに、私に触れて言葉を交わしている……私から始めた会話ではなく、目の前に居る人間から始めた会話で
こいしは、ここ何年か自分から話し掛けないと会話は成り立たなかった。
理由は明確であり、彼女の能力が影響している。
だから、向こうから話し掛けて来てくれて、会話が進んでいることは第三の目を閉じた日から諦めていた。
それに、話し掛けるということは、少なからず自分に興味を持っていてくれていると思いとても嬉しい気分になっていた。
(でも、この人間はさっきお姉ちゃんと話してた人だよね?
ダメ、そのままお姉ちゃんのところに私が居たことを伝えに行ったら、また、お姉ちゃんに迷惑を掛けてしまうかもしれない……)
何でこの人間は私を見ることができるのか?
この人間と話をしたらき楽しいのかな?
などの様々な思考を巡らせていたが、最終的には家族に迷惑を掛けないようにしないといけないという結論に行き着き
(逃げなきゃ)
こいしは、その場から全力で逃げるために能力をフル活動して、肩に置かれていた手を払いのけた。
だが、すぐに捕まってしまった。
まるで、動きが読まれていたような早さで捕まったのだ。
「離して!」
こいしは、今も彼女の手を摑まえている人間に対して強い口調で言った。
実際は、彼女は妖怪で、掴んでいる相手は人間だ。
そのため、こいしが本気を出せば難なく拘束を解除することができるが人間は脆い。
(お姉ちゃんの大切なお客だから傷つけたらダメ)
彼女は、相手を傷つけないためにも力尽くで、拘束を解除することに抵抗を感じていたのだ。
「イヤだね!この手は離さないよ。どうしても離したいなら力尽くでどうぞ」
む!この人間、私が力尽くで離さないと分かっていて、この提案をしている。
「…分かったよ。私に何か用なの?」
分かっている。
この人間が私に用があるとしたら一つしかない……お姉ちゃんの所に連れて行くって用だけだろう。
そう考えていたこいしだったが、彼の一言で彼女の思考は停止することになる。
「俺の妹になって下さい!!」
「……え?」
彼は確かにそう言ったのだ。
いかん、いかん。
余りの可愛さに本来の目的を忘れてしまっていた。
こいしも突拍子なことを言ったから、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
その顔も実にキュートだぜ!
「えっと…」
おおっと、本題を話すのを忘れて、そのまま放置してしまっていたな
ま!逃げようとしていた動きは止めれたから結果OKってことにしよう!
「おお!ごめん、ごめん本当はさとりのところに行こうぜって言ようとしたんだぜ」
「…うん、何となくそれかなって思ってたけど、さっきのは何だったの?」
「俺の欲b…いやいや、警戒してたから緊張をほぐそうって思ってさ」
「本音のようなものが一瞬聞えた気がするけど、いいや……私はお姉ちゃんのところには行かないよ」
「何で?」
「迷惑を掛けてしまうからだよ」
うう~ん、やっぱり何か勘違いしている点があるっぽいなあ、その勘違いを俺の口から指摘しても信じてはくれないだろうしどうしよう?
と、俺は悩みながら何か打開策がないかポケットを中を探ってみた。
そうすると、ポケットの中から三角型の布が出てきたのだ。
(こ、これは!…イケる)
「こいし、駄々をこねても無駄だぜ。さとりのところにどんな手を使っても連れていってやる」
「ふん!人間の貴方に私をどうこうすることはできないと思うけど」
さすが妖怪、自信満々だね。
まあ、確かに力ではこいしをどうにかすることはできないだろう
「さて、それはどうかな?」
俺はドヤ顔をしながら、ポケットの中で見つけた布をこいしに見せつける。
「何それ?それでどうし…よ…うと」
こいしは、俺の手の中にある布の存在が何なのか徐々に把握することができ焦り始めた。
「何で!そんなの持っているの!!?」
「さぁ?神様の導きかな」
俺が持っているのは神聖な三角様、パンツだ。
ただのパンツではない、こいしのパンツなのだ。
こいしの部屋に入った時に、偶然にポケットの中に入ったんだろう。そう!偶然に!
「か、返して!」
こいしは顔を真っ赤にしながら、俺からパンツを奪取しようとした。
だが、焦って動きが大雑把になっているので、俺はこいしの動きを予知できた。
俺の目は、「見切り把握する程度の能力」によって人と比べて動体視力などが桁違いとなっている。
だから、相手の動きを予測することも容易に行えるのだ。
「ははは!無駄無駄!」
俺は高らかに笑いながら、パンツを頭に被った。
「な、何を!」
こいしは更に顔を真っ赤にして、再度俺からパンツを奪おうと足に力を込めている最中だったので、飛び掛かって来る前に次の手を打つことにした。
「この姿のまま、地霊殿の中を走り回ってやる」
俺は、そう宣言してすぐに、死体の保管場所から飛び出した。
「待って!貴方は、その格好他に見られても恥ずかしくないの?」
「ん?俺にとっては名誉の行動でしかないが」
ん?こいしの顔が、こいつ正気か?って感じの顔になっているな何でだ?
あんなにも可愛い美少女のパンツを頭に被ることが出来ているのだ。名誉以外の何者でもないだろうに。
ま!俺は紳士だから直で被るという失礼はしない、しっかりとビニール袋の上からパンツを被っているのだ。
つまり、俺の頭はビニール袋を被り、更にパンツを被っているイケている格好となっている。
そんな姿をしている俺の顔の横をもの凄いスピードで玉が通り過ぎた。
「え?」
俺は、後ろを振り向いて信じられない光景を目にしたのだ。
こいしの周りに、様々な形をしている玉が展開していた。その内の一つが先ほど、俺の横顔を通り過ぎたのだ。
「私のパンツ…返してよ」
…こいしさん目からハイライトが消えているわよ。
俺は全力で逃げることにした。
主人公は紳士的ですね!