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東方三参祭  作者: ナナシ
3/6

二話 「みーつけた」

「兄さん、一つ聞きたいことがあるけどいいかい?」

そう言いながら、猫耳少女のお燐が声を掛けてきた。何で、俺がこのような美少女と一緒に歩いているのかというと、色々あって地獄まで来て、「もう終電きちゃっているから…」的なノリで美少女達がどうしても俺を帰したくないようで、地霊殿にお泊りすることになった。俺勝ち組確定じゃね?

「そこまで引き留めるつもりはないので帰ってもらってもいいですよ」

俺の浮かれた心に鋭いツッコミを入れてくれているのが、地霊殿の主であるさとりだ。

この少女は心を読む力があるので、俺の考えは筒抜けだ。…妄想の中だけでも自分をモテ男にさせてくださいよ。さとり様

「いいさ!何でも聞いてくれて!ただし、スリーサイズだけは非公開だぜ」

ウィンクをしながらキメ顔でそういった。

「いや兄さん、袋被っている状態だとガサガサと音が聞こえるだけで、どんな顔しているかいまいち分からないよ。」

「ウィンクをしながら決め顔をしてくれているらしいですよ。お燐」

「もちろん!俺のウィンクとキメ顔はさとりにもだから受け取ってくれ」

「謹んで受け取りを拒否させて頂きます」

「そこまで拒否るか!!」

さとりは頭を下げながらそう言った。俺は心の中で泣いた。

「あはは、兄さんは面白い人だね。…あたいが聞きたかったことは、何でまだ袋を頭に被っているのかい?ってことさ」

美少女に面白い人と言われるのは悪くないなぁ。うん!気分が良い。

そうか、お燐はビニール袋のことが気になっていたのか。

「あたい達から隠れるつもりで被ったなら、もう取っても大丈夫じゃない?」

確かに普通ならそう思うよな。よし、ここは聞くも涙、語るも涙のエピソードを話そう。

「ふぬ、お燐さん」

「何だい兄さん」

「時々狭い空間に入っていると落ち着くことはないだろうか?」

「そうだね。あたいは猫だから率先して狭いところに入ることはあるね」

「つまりそう言うことだよ」

「ん?つまり兄さんは、隠れるつもりで袋を頭から被って、居心地が良かったからあたい達と行動を共にしても被り続けていると?」

「オフコース!!」

「聞くも涙、語るも涙のエピソードはどの辺だったのですかね」

そこは聞くのはなしだぜ。さとり。

「ホント可笑しな人間だね。でも、その状態は見えづらくないかい?」

「そのことは心配無用」

俺はそう伝えて、被っているビニール袋の中に手を入れ、中から片方だけ見えやすく穴を開けた。

「これで視界を確保することができた」

「無理矢理穴を開けるほどに、その袋気に入っているんだね」

「でも、何で両方ではなく、片方だけを開けたんですか?」

「無論カッコいいからさ!」

俺は胸を張りながらそう答えた。

「ふふ、何ですかそれ」

「理由になってないと思うよ兄さん」



雑談を程なくしているとさとりの私室に着いた。

「そこに座ってもらっていいですよ」

そう言いながら、さとりは中央にあるソファを示した。


さとりの私室は中央にソファ、奥側にはさとり用の机と椅子、更にその置くに本棚が置いてあり、様々な本があるようだ。

「あまり女性らしい部屋とは言えませんが」

少し恥ずかしそうに答えるさとり

「いや、さとりの匂いが部屋に充満しているだけで、十分乙女の部屋だぜ」

「息を止めて頂いてもいいですか?」

「俺に死ねと!?」

クスクスと笑いながら、さとりはそう言った。そこに…



「あ~、今は温度調節が安定しているから休憩」

一仕事を終え地霊殿の中を歩いているのは、灼熱地獄の管理を任されている女性、霊鳥路空れいうじうつほ

彼女も妖怪であり、唯の地獄鴉だったのだが神様から八咫烏の力を授かったことで、強力な力を手に入れた。また、力の影響で右足にはゴツゴツとした鉄の塊がくっついており、右手には御柱のようなものがくっついている。更に彼女の胸には真っ赤な真珠のようなものもあるのだ。最も目を引く部分以外では彼女が鳥である証と言える羽が背中から生えているぐらいだ。

服装は、白いYシャツに緑色のスカートを着こんでいる。髪は真っ黒な鴉を連想させるほど黒くて長く、緑色をしたリボンを付けている。

「お空は頑張ったから、さとり様に褒めてもらえるはず。ご褒美に美味しいおやつとかもらないかな?」

ご褒美に何を貰えるか楽しみにしながら、空はさとりの私室前まだ来た。

「うにゅ?」

さとり様の部屋から笑い声が聞こえる。何か楽しいことがあったのかな?お空も混ぜてもらおう!

そう考えた空は、扉をバン!と思いっきり開いた。

「さとり様何か面白いことでもあったんですか…ん?」

そこには空が見られている燐やさとり以外に、見たことがない人物が座っていた。

「お兄さんは誰?」



扉から大きな音が発せられたと思ったら、そこにお空が居た。

立派な羽を背中から生やしており、右手と右足には奇怪なものがくっついている。そして美人さんだ!うん!原作通り。

「お兄さん誰?」

「お空!いつも言っているでしょう。さとり様の私室に入る時は、ノックをして静かに入ってって」

「うにゅ、ごめんお燐忘れてた」

「もうお空は…しょうがない子なんだから」

「まあまあお燐、お空も反省しているようなので、その辺で」

そうさとりが止めたことで、お燐の説教は中断した。そのためか、お空が再度俺に質問を投げかけてきた。

「それで、お兄さんは誰?」

「そう言えば、あたいもまだ名前聞いてないね」

そうか!俺が名乗ろうとした時に、さとりに止められてたからお燐も分からないのか。

「ああ、これは失礼。俺の名前は、工…」

いや待て、ここは所謂異世界と言える場所だ。そんな世界に来ているんだ。なら、本来の名前を伝えるよりも、昔考えたカッコいいと思う名前で呼んでもらうのはどうだろう。

「ふははは!よく聞けよ愚民共」

「ど、どうしたんだい兄さん?」

「ん?このお兄さん、もしかして偉い人なの?何か偉そうだよ」

無限の神(インフィニティゴッド)と言う」

「いんふぇ?え?」

「うにゅ?難しい名前」

ふふふ、恐れ入ったか!名前がカッコいいことで女性達の俺を見る目が変わっているな。

「そうですね。呼びづらいので彼のニックネームで呼んであげましょう」

ん?カッコいい名前のまま呼んで欲しいが、そうだな、呼びやすさは大事だ。美少女がニックネームを付けてくれるなら謹んで受け入れよう。

「ヒワイっと呼んであげるのはどうでしょう?」

(!?)

あれれ?さとり様?可笑しいぞ。無限の神(インフィニティゴット)と全然関係ないニックネームになっているぞ。…てか、このニックネームって

さとりの方をチラッと見ると、悪戯っ子が悪戯をする時のような微笑をしていた。可愛いじゃねーか!…ではなくて!

「ヒワイ、うん!あたいはそっちの方が呼びやすいね」

「お空もそっちがいい!」

「ええ、私もです。どうやらヒワイさんの元居た世界で、そう呼ばれていたようですからね」

「ちょっとさとり様、このニックネームは俺には適さないので違うやつを…」

「何を言っているのですか、貴方の名前からしっかりと連想された名誉あるニックネームじゃないですか」

「不名誉しかないニックネームだよ!」

くそ、さとり分かっててこのニックネームを押してきてやがる。

ヒワイというニックネームは、俺の本名、工口好こうぐちこうから来ている。

友人が「漢字だけ見ると、“エロ好き“と読めるよな。よし、お前のニックネームはエロが好きな奴と言う意味で卑猥…ヒワイにしよう」って安直な理由で決められたのだ。

何がヒワイだよ。頭のてっぺんから足のつま先まで紳士的な俺に似合わないニックネームだよな。

「…いえ、かなり適切なニックネームだと思いますよ」

さとりが何か言っているが聞かなかったことにしよう。

「あたいは良い名前だと思うよ」

「お空も!」

…俺の顔を見ながらニヤリとしないでください。さとりさん。

この二人に関しては純粋に褒めてくれているのが分かるから少し嬉しくなってしまった気持ちをさとりは見逃さなかったようだ。

「本人も納得してくれたようなので、ヒワイと呼ばせて頂きますね」

「く、美少女じゃなかったら拒否ることができただろうが、俺には無理だ。…ああ、それでいいよ」

「ふふふ、よろしくお願いします。ヒワイさん」

「ま、あたいは今まで通り兄さんと呼ぶけどね」

「お空はお兄さんって呼ぶね」

あれ?だったら俺不名誉なニックネームを知られる必要なかったような……あ!はいはい、この予想もさとり様の計画通りと

「まあまあ、そんな捻くれないでください。ヒワイさん」

「捻くれてねぇーよ!唯いつか俺の手の上で踊らせてやるからな」

「ふふ、楽しみにしときまね」


それからさとりの私室で三人と数時間ほど、外の世界と東方projectに関する話題をした。

「凄いですね。地霊殿で起きた出来事が、外の世界でげーむとして存在するなんて」

「うん、あたいもびっくりだよ」

「さとり様!おやつ、おかわりしてもいい?」

…訂正しよう。一人は俺の話しを理解することを早々に諦めて、甘味の世界を存分に楽しんでいた。

「それに、外の世界には私の知らない様々な物があるようなので、その部分も楽しく聞かせて頂きました」

「あたいは海が気になるね。魚なんて滅多にお目にかかることなんてないのに、その海ってところには数えきれないほど居るんでしょう?」

「まあね!大きさも様々で、中には地霊殿波の大きさの魚も居るさ」

「…それはもう妖怪じゃないかい」

「いやいや魚だよ。一度だけ食べたことがあるけど、他の魚と比べて肉質が凄くて、魚よりも肉に近い感じがしたかな」

「兄さん、もしかして化物級に強いんじゃないかい?地霊殿ほどの大きさの魚を捕まえて、食べるぐらいだからね」


そんな他愛のない話しをしていると、さとりの私室の扉が勝手に開いて、勝手に閉じたように見えた。

するとさとりは驚いた顔をした後に、考え込むような顔をして、悲しそうな顔をした。

「…すみません。話しはこのぐらいにしてもらってもいいですか?…お燐、ヒワイさんを客間に案内してあげてね」

と急に会話が中断された。命令を受けたお燐は、何かを察したように俺に声を掛けてきた。

「すまないね、兄さん、客間に案内するから付いて来てくれるかい」

「ああ、分かった」

そう言って俺とお燐は、さとりの私室から退出した。



「お燐、一つ聞いていいか?」

俺は地霊殿の廊下を歩きながら、お燐に話し掛けた。

「何だい兄さん?」

「さとりは何で悲しそうな顔をしていたんだ?」

そう聞いた俺の顔を見ながら、お燐は少し考えて口を開いてくれた。

「兄さんは存在を知っているようだから、教えても問題ないと思うから伝えるけど、さとり様には妹様が居てね」

さとりの妹?ってことはこいしのことか。

「さとり様と同じ覚妖怪なんだけど、自分が持っている能力のせいで嫌われ者になると思い能力を封印したんだ。その影響で無意識を操る能力を手に入れたようなんだけど、周りに認識されにくくなったんだよ。さとり様でも、心を読むことも出来ないから見つけることができないほどにね」

うん、俺が知っている知識と一緒だな。

「それでも、時々さとり様に話し掛けて姿を見せていたんだけど、最近姿を現さなくなってね。でも、さっきのように私達の周りにはいるようなんだけど、声は掛けてくれないだよ」

「それで、さとりは自分が何かしたのではないか?と考えて落ち込んでいると?」

「そうさ、さとり様はこいし様が第三の目を閉じたことも自分のせいって考えているから、今回のことで余計に落ち込んでいるようで」

「何か姉妹喧嘩をしたとかはないのか?」

「いや、あたいが知っている限りはないね。さとり様はこいし様のことを大切にしているし、逆にこいし様もさとり様を大切に思っているからね」

「そうなると、考えられることは一つだな」

「!兄さんには、こいし様が姿を現さない理由が分かったのかい?」

「いんや!細かい理由までは分からない」

「うん…そうだよね」

「でも、お互いを大切に思っている姉妹の蟠りってのは、大体がお互いの擦れ違いだ」

「そうなのかい?」

「ああ!俺のアニメ知識がそう言っている」

「じゃあ!その蟠りをどうにかしたら、こいし様とさとり様は元通りになるってことだね!何をやればいい?」

「本人達に確認して相違している点を見つけ出し指摘するだけさ!既に、さとりの理由は分かっているから、後はこいしを見つけて聞き出すだけだな」

俺が自信満々にそう答えると、お燐が猫耳をへにょんと垂らしていた。

「それは無理だよ兄さん」

「ん?どうしてだ?」

「さっきも言ったけど、こいし様は無意識を操る能力を持っているからね。だから見つけるなんて至難の技だよ」

なるほど、それでお燐は諦めた顔をしていたのか。

でも、俺なら無意識化に居るこいしを見つけ出すことができるはずだ。

「そのことなら心配ない、俺が絶対に見つけてやる」

「…凄い自身だね。どうやって見つけるつもりだい?」

「俺は「見切り把握する程度の能力」を持っている。この力を使えば、無意識に潜伏しているロリっ子だろうが見つけ出すさ」

まあ、ロリっ子なら能力がなくても見つけ出せる気はしますけどね!

「兄さん、能力持ちだったんだね。その能力が本当ならこいし様を見つけ出すことができるかも知れない!」

正直、主にこの能力は男性の楽しみを堪能することに使いまくっていたけどね。でも、スキマを広くする術を把握することができたんだ。能力を使っているこいしでも、見つけることができるだろう。寧ろ出来なくてもやれるようになればいいだけだ。

「よし、かくれんぼが得意なロリっ子をおじさんが見つけ出しちゃうぜ!げへへ」

「…なんでだろう、兄さんに頼んでは駄目な気がしてきたよ」



お燐は俺とは別の方法で情報を集めるそうで、別行動をすることになった。

何でも「こいし様は存在を把握するのが難しいだけで、完璧に消えている訳ではないから、何か不可解なことが起きてないか?他のペットにも聞いてくる」って言っていた。もし、俺が見つけることができなくても、その微かな情報から見つけ出そうと考えているのだろう。相当自分の主と主の妹の仲を戻したいらしいな。良いペットだよ!まったく。

「さてと」

俺は気合を入れる為に、両方の頬を叩いた。それによって、頭に被っているビニール袋がガサっと音を立てたのはご愛嬌。

目に力を込める感覚で、集中力を研ぎ澄ました。

「闇雲に探しても無駄な時間を過ごすだけだよな…」

それに俺の能力は、集中することで色んなことを把握することができる。例えば、地霊殿の壁に使われている素材がどんなものなのか?なども把握することが可能だ。だが、視野に入るもの全ての詳細を把握することができるため、長時間使い続けると頭痛に悩まされてしまう。

「俺自信の問題もあるから、あまり時間を無駄にしない探し方をしないとな」

そう思ってから、真っ先に探したのはこいしの部屋だ。自分の家だから部屋に籠っているのでは?と思い中に入ってみたが誰も居なかった。

お燐がもう地霊殿の中に居ないのでは?って言ってたけど、その可能性は低いと思う。

こいしは、ここ最近姿は現してないが皆の近くには居るらしい。多分それは、こいし自信がさとりや他の皆と関わりたいと思っている証拠だろう。だから関わろうと思っているこいしが、進展もないまま地霊殿から離れるということは考えにくい。

そして関わりたいと思っているが、思うように行動ができないと悩んでいる人は、徐々に自信をなくしていき、決して見つかりやすいところではないが、見つけられないところでもない場所に隠れる傾向がある。

「…ってことは、あそこに居るんじゃね?」

俺は、敷地内で特定の人しか利用することがないだろうと思う場所に一つ心当たりがあった。

その心当たりの建物に真っ直ぐに走って、その建物の扉をバンっと開けた。

目に意識を集中して辺りを見渡す。

「相変わらず明かりの一つもないところだな」

だが、今の俺は目に力を注いでいることで暗闇の中でも昼時のように辺りを見渡すことができる。そのお蔭で、死体の山をしっかりと直視することになったので少し気分が悪くなってしまったが、俺が入っていた時には死体の山だけだったのだが、そこに小柄な人影があることに気付いた

「!?…もっと健全的なところに隠れててもいいんだぜ」

俺は、そう呟きながら部屋の角で蹲っている人影の後ろまで歩み寄り、その小柄な肩に手をポンっと置いた。

「み―つけた」


次回こいしちゃんと会話しちゃうぞ!

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