一話「妄想はほどほどに」
プロローグでは東方キャラをあまり出すことができてなかったので、今回からしっかり出します。
「今日は死体を手に入れることができたよ」
あたいは、ウキウキ気分で独り言を言っていた。
ここ最近人里で知力が低い妖怪を接客的に退治する人間がいるようで、死体を見つけることが出来なかったから今日はいい日だね。
しかもこの死体は見た目から、結構若いようだからね。死体や怨霊も若い方が働き手として役に立つからいい収穫だよ。
まぁ、年配の死体や怨霊は知識が豊富で会話ができるあたいは、そっちの方が楽しめるんだけどね。
独り言を言いながら火車を押しているのは、火焔猫燐という名前で「死体を持ち去る程度の能力」を持っている少女だ。
また、彼女は普通の少女ではない、いや、人間ではないのだ。
猫の妖怪であり、現在は炎のように赤い髪をサイドで二束結びしており、ダークグリーンのゴスロリっぽい姿をしている。この容姿だけなら派手な髪色をしている美少女と思う人が多いだろう。
だか、ある部分が目に付き人とは違う生き物だと認識させてくれるのだ。その部分とは、頭頂部にある耳だ。頭のてっぺん部分に猫耳が生えている。
その部分で人ではない雰囲気を醸し出しているのだが、彼女の容姿と猫耳が相まって更に少女の魅力を引き出しているのだ。
「さぁ!この死体を置いてきて、さとり様に帰宅したことを伝えないと」
地霊殿に着き彼女は自分の主人に挨拶をする為、死体置き場に火車に乗せている男性を運置いて、その場を後にしたのだ。
…パタン
微かに何かが閉まる音がした。俺はその音で目が覚めたようだ。
「頭が痛い、俺は何をしていた?」
目覚めたばかりでボーっとする頭を回転させて自分の身に起きたことを思い出そうとした。
「確か、スキマを広げて、森の中に落ちて、見た事のない生き物に遭って、匂いを嗅ぎたい美少女が現れて」
は!俺はその後、頭をぶつけて意識を失ったんだった。よし、一旦落ち着こう状況を整理しないと。1、今何処かの建物の中。2、あの場に居たのは俺を助けてくれた美少女。…ってことは、「あら、イケメンね、お持ち帰りしちゃいましょう。」と俺の罪深いフェイスが少女を誘惑して罪を犯させてしまったのか。
「ふん、まだ結婚なんて早いよベイビー」
俺は自分の中の妄想を極限まで膨らまして、まだ姿を見ていない美少女との披露宴に浸っていた。
しばらくの間だ妄想の世界にお邪魔していたら、少し落ち着いてきて周りを見る余裕ができてきたようだ。
「しかし、薄暗くてよく見えないな」
そう、今俺が居るところは薄暗い建物の中なのだ。周りに暗闇を照らす電気は一切なく、どこにドアがあるのか見当が付かないのだ。
そのため、辺りを手探りで探索していると何かに指先が触れた。
「何だ?硬い何かに触れているぞ」
俺はその硬い何かを把握する為にも、能力を使って目を凝らした。その結果今触っていた正体が分かったのだ。
「…嘘だろ、なんだこれ」
自分の目を疑ったそこには死体の山があったのだ。不思議とまだ腐っている死体はなかったが異常な光景が目に入った。
「う、気持ち悪くなってきた」
平凡な人生を過ごしてきた俺にとって、死体の山を見る日が来るとは考えてもいなかったからだ。
今にもリバースしそうな気分を抑えている時に、足跡が近づいてきていることに気付いた。
「おいおい!こんな死体の山を見た生存者がどのように扱われるかなんて、アニメでイヤというほど観てきたぞ」
くそ、どうする?俺は、焦りながら周りを見渡した。すると、あることに気付いたのだ。
女性の死体は、特に変わった個所がないのだが、男性の死体は頭に布袋を被っていることに。
「普通に隠れても俺だけ袋を被ってないことで目立ってしまう可能性がある。なら、俺も袋を頭に被らなければ!」
そう考えて、死体の一体から袋を取って被ろうかな?と思ったが、さすがに死体を追い剥ぎすることには抵抗がある。
「何かないか?」
ズボンのポケットに手を入れて被れるものがないかあさってみた。
「ん?これは」
俺のズボンのポケットから出てきたのは半透明で三角型に畳まれていたビニール袋だ。
「そう言えば朝コンビニに行った時に、ビニール袋を畳んでポケットに入れてたな。貧乏性がここにきて活かされているぜ」
ビニール袋を見つけた時には、かなり足跡が近づいてきていた。
「被るかどうか迷っている時間はねえ!」
俺は、そう思いすぐに折り畳まれていたビニール袋を広げて頭に被った。
「お燐、そんなに私に見せるのが楽しみなのね」
私は、隣を歩く可愛いペットに話しかけた。
「はい!さとり様!久しぶりに若い男性の死体を見つけることができたので、地霊殿の労働力不足を補うことができますよ」
そう言いながら、二股になっている尻尾を振っているお燐
「ふふふ、なら見るのが楽しみね」
嬉しそうに自分のペットと会話をしているのは、火焔猫燐の主であり、地霊殿の主でもある古明地さとり(こめいじさとり)
薄紫色のショートヘアで、水色の上着とピンク色のスカートを身に付けており、どちらもフリルが付いている。身長的に小学生ぐらいに見えるが彼女も妖怪であり、その外見からは想像もできない年数を生きているのだ。
また、彼女の体には管のようなものが巻き付いており、その中心となるのが、彼女が妖怪であると納得ができる「第三の目」と言われるものに繋がっている。
その第三の目の力によって彼女は「心を読む程度の能力」を持っているのだ。
他愛のない会話をしつつお燐の誘導で、死体を保管している建物の前まで来た。
ギィィィ
そこそこに年季がある建物となるので、少し不気味な音と共に扉が開かれた。
「さぁ、さとり様この死体が働き盛りの…あれ?あたいが運んできた死体がどっかに消えている!」
…死体が消えている?ってことは、生きていたんでしょうね。その死体、いえ人間は。
私はそう考えて、辺りの声に集中した。
すると、一人の聞き慣れない声が聞えてきたのだ。
(少女の声がする!多分声質やさっきまでと違う部屋の匂いから推測すると、絶対美少女だ!……でもさとり様?どこかで聞いたことがあるような?)
匂いと声だけで容姿を把握するなんてどんな人間なんでしょう?
何だかこのまま知らないふりをして、私室に戻りたくなってきました。
でも、お燐は困っているようですし、仕方なく声を掛けてみましょうか。
「お燐、先ほど言っていた若い死体なのですが、どうやら生きていたようですね」
「そうなんですか!?さとり様」
「はい、その死体の山の裏側に居るようなので、連れてきてくれる?」
「はい!分かりました。」
(なぜだ!なぜ気づかれた!俺は物音一つ立てないで潜伏していたのに!…いや待て、居場所が分かったところで、俺のこの完璧なカモフラージュによって死体と見分けは付かないはずだ。隙ができるまでじっとするのが吉!)
相当な自信ですね。こちらは心が読めるのでどんなに凄いカモフラージュだろうが見分けられるのですが。ま、警戒することに越したことはありませんね。
「お燐やっぱり私も付いて行きます」
そうお燐に伝えると頷きながら
「なんだい、あの死体生きてたのかい。さとり様が喜ぶと思っていたのに」
「ふふ、その気持ちだけで私は嬉しいわよ」
「さ、さとり様~」
うん、やっぱり私のペットは可愛いですね。人間を早く追い出してからお燐と撫でてあげましょう。
そう自分の日程を改めて決めた後に、お燐とさとりは死体の山に目を向けた。
「…さとり様」
「…どこから自信が湧いたのか気になりますね」
彼の心の中では完璧なカモフラージュと言っていたのですが、どう見ても他の死体とは一癖も二癖も違うので見分ける以前の問題ですね。
まずは服装、他の死体は着物に対して彼の服装はポケットがたくさん付いているズボンを着ており、上は白いTシャツで中央に「人生」と大きくプリントされている。
また、服装だけではなく頭に被っているものも特徴的、死体の山の中にも頭に袋を被っているものはいるのですが、その素材は布、彼が被っているのは半透明でどんな素材なのかいまいち分からない。
でもこれほど特徴的な格好をしている相手を見つけられない訳がない。
(ふっふん、完璧なカモフラージュのお蔭で見つけることはできないだろう。さあ!諦めて立ち去るがいい)
はぁ…警戒していた私が惨めに思えてきますね。
「あの自信たっぷりのところ申し訳ないのですが見つかっていますよ」
(!?)
「寧ろこちらがびっくりですよ。自分の格好と周りの格好をどのように見比べて完璧なカモフラージュと思ったのかと」
「…兄さん、何だかあたい涙が出てきたよ」
「や、やめろ俺を哀れみの目で見るなー!」
俺はここまで敗北感を味わったことがない。確かに、落ち着いて辺りを見渡してみると、男は全員袋を頭に被っていると思っていたのだが、寧ろ被っていたのは一部だけだった。更に、服装は何世代か昔の格好をしている人しか居らず、俺がどんな手段で隠れようが目立っていたのが明白だったのだ。
「くそ、殺せよう。こんな恥ずかしい失態をしてしまった俺を美味しく頂くといいわ」
恥ずかしすぎてオネエ言葉になってしまったわ。
…数分前まで自信満々だった俺をぶん殴りたい。
「殺しませんし、食べもしませんよ」
めんどくさそうに答えてくれたのは美少女だった。小学生ぐらいの見た目で、髪の色と体中に巻き付いている管が印象的な美少女だ。もう一度言おう美少女だ。
「…ありがとうございます」
なぜかお礼を言われたぞ?でもいい気分だ。何をしたか思いつかないがお礼を言うということは、ご褒美を貰うことができるかもしれない。
何を貰おう、は!この美少女に添い寝をしてもらうってのはどうだろう?
いや、ここはもっと欲張ってみて、こ、混浴なんてありなんではないでしょうか!?
ん?俺を見る美少女の目が汚物を見るような鋭さになっているぞ。
うん、ぞくぞくするね!あれ?今度は顔色が真っ青になったな?
「兄さんすまないねぇ、あたいがしっかりと確認をすることなく連れてきてしまって」
そう詫びを入れてくれた少女も美少女だった。しかもだ、猫耳を付けていらっしゃる。
何ここは?死体の山があるから猟奇的な殺人鬼の住まいかと、ビクビクしていたが目の前の美少女二人がお出迎えなんてここは天国なのでは?
「兄さん、大丈夫かい?」
心配そうに俺に声を掛けてくれる猫耳少女。
うん、ここが天国なら何しても許されるはずだ。よし、この猫耳少女の猫耳を思う存分もふもふしよう。そして、そのふっくらとしている夢の塊でパフパフもしよう。
そう考えて行動しようとした俺の前に、見た目小学生の美少女が猫耳少女を隠すように前へ出てきた。
「お燐に変なことをしたら容赦しませんよ」
鋭い眼光だ。思わず後ずさりしてしまった。
「…私は古明地さとり、こちらは私のペットで火焔猫燐と言います」
「よろしく兄さん」
「ああ、よろしく俺は…」
「いえ、言わなくても分かります。私心が読めるので」
何を言っているんだ?このロリっ子?ああ、そのお年頃なのね。なら俺も付き合ってあげよう。
「かなり失礼な勘違いをしていますが、本当に心を読むことができますよ」
「いやいや、そんな訳ないで…」
「先ほどから貴方は私とお燐に対して不埒な妄想をしていましたね」
(!?)
「褒美は混浴にしよう、夢の塊でパフパフなど」
「本当に心が読まれている―」
俺はその場で頭を床に擦り付けながら土下座を行なった。
失態だ。まさか数分以内に失態を二度も味わうことになるとは
「私はそこまで気にしていないので、落ち込まなくてもいいですよ。この能力を持っていることで下心を思い浮かべている男性には何度か会ったことがあるので…まあ、貴方ほど見境なく考える人は会ったことないですが」
この少女は天使ではないだろうか。最後の言葉はあまり聞き取ることができなかったが、まあいいだろう。
「まあいいですけど、さて落ち着いてきたようなので、そろそろ地上に戻ってもらってもいいですか?」
「地上に戻る?ここは地上じゃないのか?」
「そうだよ兄さん、ここは地下、旧地獄さ」
「旧地獄、地獄!やっぱり俺は命を落としたのか?」
「いや、残念だけど兄さんはまだ生きているよ」
「生きている?でもここは地獄だろう?生者は入ることはできないのでは」
「普通の人間が入ることができない点は正解ですが、死者だけが入れるところではないですよ」
「そうなのか、じゃなんで俺は旧地獄に入ることができてるんだ?」
「兄さんはあたいが連れてきたから入ることができたんだよ」
「また何で俺を連れてきたんだ?」
「死んでいると思ったからね。あたいは死体集めを趣味としているから」
死体集めを趣味って、悪趣味なことだな…は!
俺はふと思い出してロリっ子のところを見た
「そうですね、人からみたら悪趣味かもしれないですがお燐のお蔭で色々と助かっているので私は何とも思ってませんが」
「やっぱり聞かれてるよね、ごめんね、お燐他人の趣味を悪く言って」
「いいさ、大体の人間はあまりいい印象を持たないからね。普通の反応さ」
心が広い美少女だな。
ん?そうえば「大体の人間は」、まるで自分が人間ではないような言い方だな。
「それはそうですよ、私達は妖怪ですから」
「妖怪?またまた、そんなのが現実にいる訳ないよ」
「…確かに貴方が元居た世界なら、居ないようですがここは”幻想郷”人や妖怪、神様も住んでいる世界ですよ」
「ん?幻想郷?」
「はい、ここは幻想郷です」
待て、幻想郷とは確か「東方project」の世界にある忘れられたものが入ることができる楽園だったよな。
あれ?この世界が東方projectなら、コメイジサトリとカエンビョウリンは、あの「古明地さとり」と「火焔猫燐」ってことか!通りで名前と容姿をどこかで見たことがあると思った。
幻想郷と考えると色々と辻褄が合うな。俺を襲ってきた生き物、この死体の山、元居た世界ではなく、幻想郷なら常識的な考えは通じないはずだからね。
「貴方が居た世界には、この世界に通ずる文献などがあるのですが?」
「まあ、そうだね!俺の世界ではゲームで幻想郷の情報が得られるよ」
「げーむ?ですか、貴方のイメージで大体のことは想像が付きますが少し興味深いですね」
「なら、さとり様兄さんを今日だけ地霊殿に泊めるってどうですか?」
「いえ、それはあまりよろしくないでしょう」
「でも、もう時間も随分と立っているし、この時間から人間を連れて旧地獄を歩くのは危険だと思いますよ」
「…そうですね。確かにこの時間からだと危ないかもしれないですね」
「でしょう!」
「ですがお燐、なぜ貴方は彼を地霊殿に泊めたがっているのですが?」
確かに、お燐は何だか俺を帰したくないように、あれこれと理由をつけて引き留めているようだ。
これは、俺に惚れたのか!はい、違いますね。違うと分かったので、その冷えた目で俺を見ないでください。サトリ様…興奮するので。
「あたい嬉しいだよ。どいつもさとり様と話す時は、嫌そうな顔をするのに、兄さんはさとり様と楽しそうに会話をしてくれているからね」
「お燐…」
まあ、俺がこんな美少女と会話ができて嫌そうな顔をする訳がないからな!もし、そうなったら息子を切ってもいいぐらいだ!…やっぱ待って、せめて一回使わせてからにしよう。
「心の中はかなり下品ですが、そうですね。悪口を言われないで会話ができるのは楽しい気分になります」
何か照れくさくなってくるなあ、美少女からこれほどプラスの印象を持ってもらえるなんて。
「マイナスがない訳ではないのですが…お燐があそこまで言ってくれているので、今日は地霊殿に泊まってもらいましょうか」
「やったね、兄さん」
「おう、まさか美少女と一つ屋の下で寝泊まりができる日が来るとはな」
「変なことをしたら容赦はしませんけどね」
「は、はい!肝に銘じておきます」
「ふふ、では今日は外の世界での話を聞かせてくださいね」
美少女のはにかむ笑顔頂きましたーーー
「おう!任せとけ」
こうして、俺は地霊殿に泊まることになった。
まだまだ、他のオリキャラは出そうではないですね。