01:こんなアタシ。の紹介
何かに追い込まれれば、こんなアタシでも『すき』の一言が言えるのだろうか。
こんなアタシ。
32歳。独身。板橋区在住、独り暮らし。彼氏イナイ歴2年半。
2年前の冬、編集マンの彼から年下の元カノと会ってることを打ち明けられ、脱力。
今となっては数えたくもない想い出である。
怒ったり、許したりの気力もなく別れを切り出してあっけなく終わり。そして引越し。
最寄り駅の北から南へ移っただけという行動力の無さ。
薄型液晶テレビを買ったのに、部屋のコーナーにバカでかいブラウン管用の家具。
結局26インチしか入らなくて大画面を諦め、無駄な家具を使い続ける貧乏性。
こんなアタシの仕事。
DTPオペレーター。
デザイン事務所で、デザイナーがもっともらしくクリエイトしたモノを、仕事になるように現実のデータにおこしていく仕事。職人に近い。
自分のセンスを信じてデザイナーを目指してた時期もあった。
ある時期、自分の限界を感じ、同時に正確なデータを作る職人的クリエイターな自分を誇らしくも思ったりしたが、今では大量生産の担い手。
皮肉にもその正確な作業能力が認められ、今では名刺だのハガキだの、個人情報を取り扱うチームで黙々とひたすら件数をこなし、気づけは一日が終わる。
デザイン事務所に勤めていても決してクリエイティブなお仕事では無い。
こんなアタシのルックス。
言いたくはいけど『デブ』。背中に付いた肉が落ちない。
昔はぽっちゃりとか言ってごまかせたけど、32歳になると、ちょっとダイエットしても痩せない。体重が落ちてもヤツレて見える年齢になってしまったのか。
顔も冴えない。それも個性と笑えるほどの愛されキャラでもない。
一重で時々疲れると左目だけ二重になる。嬉しいような、悲しいような。
美容室はこまめに行くが、髪をカラーリングするのを止めてから4年程経つ。楽だ。
化粧は好きだが、職場へはスッピンメガネで行く事もある。
その日の気分によって、カッチリきめたり、ラフとごまかし手を抜いたり。
こんなアタシが10年以上悩んでいること。
それはあのヒトに「すき」と伝えるかどうかだ。