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90話 落し物はどこいった?

 こ、ここは総員退避~!


 という前に私とクロちゃんの頭上を横切る黒い影…


 ばしぃぃぃん!


 空中で尻尾アタックを繰り出したのは古竜改の一人です。もちろん攻撃されたのはリアーナで、落下速度と尻尾アタックの速度が合わさって、そのまま闘技場観客席に突っ込んでいきました。

 

『ふぅ、いい汗かいた』


 汗を拭き拭き、また落ちてくる古竜に猛然と向かって走り去ってしまいました。


 いや、味方を攻撃してどうするんですかアナタ。

 唖然とするのはもちろん私だけではありません。私の傍のウィルシス達も、飛んで行った弾丸が、もうもうと砂煙をあげる中、ピクリと動くのを見ております。

 

 どんだけ丈夫なんでしょう古竜というのは。

 

 あ、感心してる場合ではないですね、クロちゃんに奥様のことを伝えねば。


『クロちゃん、リアーナさんですよ。魔穴の中でずっと生きていたそうです』


 完全に硬直したクロちゃんの腕をぺちぺち叩けば、クロちゃんははっと我に返って私を見下ろし、土煙へと目をやり、そしてまた私を見下ろします。

 

 気持ちはわかるような気もします。長く離れていた愛しの奥さんが弾丸と化して飛んできたら、信じていいのか悪いのか…。

 そこは信じましょう、クロちゃん。


 うんと頷いて見せると、クロちゃんは私を降ろし、目の前から消えて、すぐにリアーナの埋まる闘技場観客席に現れると、ピンク色の古竜の脚を掴んで持ち上げ、目の前にぶら下げました。


 奥様との再会にその持ち方はどうかと思います・・・・あ、蹴られました。何やら盛大に文句を言われております。「ピキャ! プキョ!」とお怒りの声が響くのですが、ちょっと遠くて聞こえません。


 私はウィルシス達の元に近づくと、呆然とするウィルシスの腕にスリスリとすり寄ってみました。


 べ、べつに好きというわけじゃありませんよっ、ちょっと心配かけたであろうから甘えてみただけですよっ。(ツンデレ中)

 ドキドキしながらじっと上目づかいでウィルシスを見上げていると、彼は私を見下ろし、ついでふわりと優しく微笑んだ後、そっと抱きしめてくれました。


「キュゥゥゥゥゥ」


 甘えた声でその胸にすり寄ってほっと息を吐きます。

 ここが私の居場所なのかもしれません。


 ほっこりしていると、どたどたと走る足音がして、次に私の頭にバチンと衝撃が走りました。


「ピギャ!」


 振り返れば、肩で息をする国王と、それについてきたらしい竜王セルヴァレートがいました。どうやら私は国王に頭を叩かれたようです。

 動物虐待ですよ!


「こんの馬鹿古竜が! 生きる者の生死を丸投げするとは何事だ! 普通は全員生かせだろうが!」


 私が怒る前に怒られました。

 

 生死まる投げ?


 こてりと首を傾げます。何のことかと考えて、まさかあの爆笑して言った声との問答のことかと思い直します。。


『えぇと、何かありましたか?』


 ちらりと皆の顔を確認すれば、皆さん苦い笑みを浮かべて目を逸らします。

 まさかと思いますが、私の判断が世界を救うなんてそんな物語の主人公的役割ができると誤解していたりしませんよね? 私この度食物連鎖四段ピラミッド三段目から四段目に落ちた蠱竜ですよ?


「おまけにコレ! どうするのだ!」


 じゃじゃ~んっと指差すのは、すぐ傍にいた赤ん坊です。

 先ほどからグレンが睨みつけてますし、赤ん坊の抜け殻服がウィルシスの兄、グレンの敵のダグラスの物であることがひっじょ~に気になりますが、赤ん坊です。


『あかちゃ~ん!』

 

 どうやらひとしきり夫婦間の戦いを終えたリアーナが飛んできました。もちろん低空飛行です。

 赤ん坊の横に同じようなサイズのピンクの竜。可愛いです。額に飾っておきたいツーショットです。


 あ、そういえば牛柄じゃなくなってますね…。どこかで一皮むけたのでしょうか、私の時のように。

 

 余計な想像してぞっとしつつ、赤ちゃんをあやすリアーナに皆毒気を抜かれたようです。

 国王もため息を吐いて興奮が収まったようです。


『そういえば、クラウスったら私の赤ちゃんどこやったの?』


 リアーナのセリフに、(みんな)目が点。


 先ほど爆撃弾として落ちてきたときは何やらクロちゃんの真名らしきものを叫んでましたが、今は通り名を使ってますね。て、それが問題じゃないです。


 魔王の赤ちゃん。


 私も聞いたとき驚きましたからね。しかもどこかに放置したという恐ろしい発言されましたし。


『あ、私驚かすために隠してたから知らないか~』


「いや、知ってはいたが、それはあの時死んでしまったのでは?」


 クロちゃんが珍しく狼狽しております。


『あの時って、あぁ、全力で魔穴開けて突っ込んでいったときのこと? そうなのよ~、あの時生んでその場に放置しちゃったの。あの辺に落ちてたと思うのだけど、見なかった?」


 なんですかその落し物しました的なノリは!!


 ちなみにその突込みはクロちゃん含む全員の想いだったと思います。


『村の傍に化石なかった? 私の赤ちゃん。女の子。真名はあなたの考えたものよ』


 クロちゃんがびしぃっと固まりました。それこそ化石のようです。全身黒づくめなのになぜか白っぽく見えますよ?


 込み入った話だし、と皆が少し離れようとすると、呻き声が聞こえました。

 何かに耐えるような呻き声は…どうやらクロちゃんからですね。


 皆がそちらへ視線をやると、クロちゃんはプルプル震えた指先を、私に向けてきました。


「あれ、しか、いなかった」


 ぎこちなく放たれた言葉に私が首を傾げると、リアーナは目をキラキラ…いや、ピカピカさせて私に弾丸タックルをかましてきました!

  

「私の赤ちゃん~! ここにいたのねリーシェリア~!」


 ぐ…


 ぐほうっ!


 私はウィルシスと共に後ろへと吹っ飛びました。


 衝撃の事実より、あなたのタックルが強烈です…



 

魔王を落としたと噂される強烈タックル!

  

リーリアに花咲か爺さんがあるように、リアーナには強烈タックルがあります

一芸に秀でる古竜達


国王「芸…なのか?」

古竜「「「さぁ?」」」


その生態の謎は深まるばかり!


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