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89話 爆撃中?

 巨大な竜が空に舞い上がると同時に世界中に黒い綿毛が降り注いだ。


 雪のように降る綿毛は人々を苦しめた。


 生きたいと望むもの


 死にたいと望むもの


 巨大な竜の咆哮は大陸中に行き渡り、その声を皆等しく聞いた。


 生も死も、選ぶのは綿毛ではなく竜でもなく、各々の意思。


 さぁ、選べ


 竜はただそう告げて、空から巨大な大木に向けて下降した。


 錐もみ状態で下降した竜は、そのまま巨大な桜にぶつかると、光の粉をまき散らし、桜の花びらを舞い上げて砕け散った。



_________________________



 やけに笑われた気がするんですがね。

 誰だか知りませんが「命の有り無しを決めるは各々!」て当たり前のことに喜んで消えていきましたよ。

 なんだったんでしょう。


 揺蕩う海の中でゆったりしていた私は、爆笑を聞いた後、あまりの騒がしさに目を開き…開き…


「ウ…ギュワアアアアアアア~!!!!!」


 目を開けてはいけなかった!


 これは高度3000メートルとかそういう域ですっ。私は現在そんな場所にいます!

 ばたばたと風が顔と腹を襲い、私は暴れたかったのですが、とりあえず急降下するのを避けたかったのでスカイダイビングの真似をします。


 体で風を受けて…

 

 ちょっと浮いているような気分になりますが、落下してますよ。

 ですが、余裕が生まれました。

 周りを見れば、たくさんの古竜が空中ではっと目を覚まし、大慌てで暴れております。


『ま、真似してください~っ』


 スカイダイビングのコツなんて知りませんが、犬掻きする皆さんに真似るよう念話で叫べば、そこにできたのはスカイダイビング古竜バージョンの何重もの輪。


 これ、ギネスに認定してくれませんかねぇ…

 

 思わず考えたのは精神が逃亡しているからではありませんよ? たぶん。

 しかし、どうしたモノでしょう、この状態。

 

 手をつなぎながら輪になる古竜達の念話は皆混乱で大慌て。どうやらこのスピードでこの高さでは虫型になる余裕が生まれないようですね。

 

 落下決定! 


 あれこれ考えている間にセルニアの首都セレイルが見えてきました。

 このまま手をつないで仲良く落ちれば古竜爆撃弾完成です。

 それは避けねばと古竜達は相談のうえ、近くの竜を蹴ったりはじいたりしてわたわたとぎこちない動きで空に広がります。


 いよいよ町が近づいてくると、私ははっと気が付きます。

 竜族です! 彼等に拾ってもらえれば助かり…


ずがぁぁぁぁんん!


 助けを呼ぶ間もなく落ちました。

 

 私が落ちたのは、なんと、闘技場の舞台の中央です。

 落ちたところは隕石落下のように小さなクレーターができました。


 埋まった頭をぐいぐいひっぱって顔を出せば、周りで轟音が続きます。

 古竜爆撃は続いているのですが、悲鳴がないような?


 きょろきょろと周りを見回すと、爆撃の余波で頭をフリフリ目を覚ます人々、気絶していたようです。

 爆撃のせい?


 ハラハラしながら見ていると、目を覚ました人々が周りの音に驚き、その様子を見てようやく


「うわああああああ!」


悲鳴を上げました。


 空から落ちてくる古竜は人のいる場所を避けてはくれますがこれは怖いです。

 


「うわああああ!」

「おぎゃ~、あぎゃ~」


 ・・・ん?


 悲鳴に交じり、赤ん坊の声が聞こえます。

 きょろきょろと辺りを見回せば、起き上がる人々の傍で共に喚く赤ん坊の姿が!

 

 なぜっ!?


 赤ん坊の数も見まわすだけで4.5人はいます。そして、ここがミソなのですが、声を上げる赤ん坊の下には、まるで今着ていたものの内側から、人がするりと抜けた抜け殻のような大人の洋服があるのです。


 ちらちらと見回せば、やはりどの赤ん坊も大人の洋服の上。

 嫌な予感に冷や汗がだらだらと流れる中、(うめ)く人々の中にグレンとウィルシス、それに青竜隊と緑竜隊、レイファスとレイナさんの姿が!


『皆!』


 ぽてぽてぽてと駆け寄ると、胸を抑えつつ起き上がった面々が、何があったという様子で辺りを見回します。


『大丈夫ですか?』


 声をかけると、皆なぜか呆然としています。そして、時々思い出したようにびくっと脅えます。

 あぁ、古竜爆撃ですね…。


『そのうちおさまりますよ』


 青竜隊の騎士達の間からリオン君が奇妙な表情でこちらを見ます。なんでしょう、私何かしましたか?


「リア…声は?」


「キュアッ」


 出ると答えたつもりが出ませんでした。ナゼ?

 

 よく周りを見回せば、他の古竜もキュワキュワ言ってますが声になってません。


「しばらくは声も出ないだろう。魔力をかなり放出したらしいな」


 そういって呆然とする面々の前から、私を抱き上げたのは、いつの間にか背後に現れていたクロちゃんでした。


『クロちゃ』


『ル~ディ~ウ~ス~!』


 私の念話を遮って叫ぶ声はリアーナです。そして、それは上空から聞こえました。

 

 ばっと空を見上げると、そこには古竜爆撃弾と化したリアーナの姿が!


 なぜ真上に落ちてくるんですかあの人は!?

 


 味方による爆撃の危機が迫っていた…




 


 

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