表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/95

9話 コミュニケーションしましょう

軽い戦闘描写あります かるーくしたつもりですが全くダメな方は飛ばしてください

 馬で盗賊を追い回している人々は皆同じ衣装に身を包んでいます。白地に紺瑠璃色の縁取りの入った短い上衣。白のズボン。マントは縁取りと同じ紺瑠璃で、白馬に乗っている人は目立ちますね。

 ひょっとしてこれが騎士というやつでしょうか。統制がとれていて華麗な身のこなし。顔立ちも美麗な人々ばかりです。いや、中にはちらほら筋肉ダルマひげ親父もおりますが、そこは四捨五入で消去します。


 私は森からちょうど出たところで馬上の彼らの動きだけに集中します。下は見てはいけません。そこには少なからずスプラッタな世界が広がるからです。


「はっ、残念だったな賊ども!たまたま青竜隊がいたおかげでお前らの悪事はここまでだっ!このゼノ様に成敗されろ!」


 たまたまを勝ち誇り、えらくご機嫌で挑発的な声にちらりと目を向ければ、馬ってあんな動きできるの?と驚くほど見事に回転をかけつつ、自棄になってかかってくる賊を斬り倒すいい笑顔がありました。

 飛び散る赤を見てしまって吐きそうになり、慌てて視線を他へ移します。見てはいけません。


 ほとんど音のしない方へ視線を向ければ、村の入り口であろう場所に村人らしき一団が固まり、その周辺を守るように兵士が立っていました。と、そこに村人を守るように立つ少年と目が合いました。

 年は10才前後ですかね。外国の子供なので見た目よりも幼いかもしれません。

 髪は栗色。瞳は緑。とても愛らしい顔立ちで、女装が似合いそうです。きっと美少女になれます。


 少年はしばらく目を(しばたた)かせると、隣に立つ騎士に声をかけてこちらへ向かってくるようです。


『発見されましたよ、クロちゃん!』


 振り返り、森の影を見れば、フィーラの姿はあれどクロちゃんの姿はありません。そして、クロちゃんの声だけが念話として響いてきました。


『お前の真名はリーシェリア。共に歩めるものを見つけたら名乗るがよい。お前には闇の加護がある。いつか、必要な時が来たら再び合えるだろう』


 いきなりのお別れ宣言です!

 驚きのあまり口をあんぐり開いて固まりました。

 フィーラはそんな私に憐みの表情を浮かべたかと思うと、くるりと背を向けて…


 ざっざっざっざっ


 犬のトイレ後のように後ろ足で砂を巻き上げて去っていきましたよ!

 なんですかっ、よるんじゃねーよってことですかっ!?


 砂をかぶって(ちょっと口に入った)、どよ~んと落ち込みました。



 真っ白な鱗が微妙に茶色くなり、ど淀よ~んとした空気を醸し出す私は、すっかり村の出来事を頭の隅にやっていたようです。

 ひょいっと軽く抱き上げられ、美少年と向き合ってそこで初めて思い出しました。


「すごいや、竜の子供だ」


 声変わりもしていない少年特有の声が、驚きと喜びを含んで響きます。

 少年は目をキラキラと輝かせ、私を両腕で抱っこしたまま、さっきまでいた村人達の傍へと駆け戻ります。


「サイっ!見てよほら、竜の子供だろ?」


 村人を守る騎士の一人が振り返り、少年の腕の中にいる私をじーっと見つめてきます。


「白竜かぁ?にしてはなんか小さいな」

「そうだよね、それにちょっとこの竜軽いよ。栄養不足かなぁ?親の姿がないし」

「会話できたのか?」

「まだ。喋れないほど幼いのかな」


 親の姿がないのはつい先ほど強制親離れを余儀なくされたからですよ。

 ずどぉぉ~んと再び落ち込んだ後、とりあえず自己紹介は大事だと顔を上げる。


「キュアキュルクルキュ~」


「うわ、可愛い」

「会話は無理か。飛龍の変種か?」


 どうやら念話が通じておりません。

 確か上位種と呼ばれる竜族は念話も人語も操るとクロちゃんのお勉強で習いました。古竜は竜の祖であるから上位種です。ですが、元人でありながらも現在私は人語を操れません。

 下位の種族に当たる飛龍や火トカゲ(サラマンダー)は念話も言葉もつかえない動物に分類される種族なので、今現在私はその種族が濃厚というわけですね。

 古竜は絶滅種ですしね。知っている人はいないかと思われます。

 

 う~ん…どうやってコミュニケーションを取ろう


 腕を組んで悩んでいると、その姿にサイと呼ばれた騎士が反応して、突然私の小さな手を取った。


『なんでしょ?』


 首を大きく傾げると、ぱあっと騎士の顔に微笑みが浮かぶ。


「なんだ、念話はできるじゃないか。リオンはまだ子供だから読み取れなかったんだな」


 なんだか理由はよくわかりませんが、言葉が通じたようですよ?


「子供ってなんだよ!俺だってあと数年でサイに追いつくんだからな!」

「あぁ~はいはい、ちょーっと黙ってろ~。今この子の話を聞くからな」


 サイの言葉に、少年の腕の力が強くなる。

 顔を上げれば、年齢の差を埋められない悔しさに頬を膨らませる少年の悔しげな表情があった。


「サイ、リオン、なぁ~に遊んでんだ?」


 呼び声に少年が振り返り、私はまともに見てしまいました。

 馬を下り、にこやかに手を振って寄ってくる熊男の服に飛び散る赤を。

 

 そして、リバースしました。

 ごめんよ少年…。


 




 

フィーラの砂かけは応援です。リーリアが知る日は来るのか…??


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ