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84話 集合しましょう

「ニルグを迎えに行くか。あんな奴でも少しは役に立つ」


 教祖ダグラスは目の前の竜など視界に入っていないかの様子で再び魔穴の中に姿を消し、グレンは国王の止めるのを聞かず、そのまま町の闘技場へと飛び立った。



_________________________


「ほっ」


 ベチンッ


「うおっ」


「よっ」


 ゴウッ


「まてい!」


 私は叫ぶゼノの方を振り向く。彼はすでに煤だらけ、お顔もまっ黒で熊みたいです。


「なんですか?」


「なんですか、じゃなく!、さっきから尻尾で跳ね返してる火がこっちに飛んでくるんだよ!」


「え~?」


 燃える薔薇怪獣の攻撃により炎を纏った棘と、蔓の欠片がバシバシ飛んでくるのです。おかげで闘技場大混乱。敵も味方も火のないところへと必死に逃げております。

 薔薇怪獣の蔓に捕まった魔獣なんて丸焦げでしたからね。猪魔獣は美味しそうな香りがしましたが、すぐに炭化してしまったので食べれません。お腹もすきましたね。


 私はべしべしと尻尾で棘と鞭の欠片を跳ね返しております。この体、炎にも負けませんでした。

 飛ばす方向は飛んでくる方向にそのまま戻す形になる、と思いきや、なぜかあっちこっちと飛んでいき、一部味方に大打撃? 見なかったことにします。


「レイファス隊長! ゼノ!」


 赤竜隊隊長レイファスと青竜隊副長ゼノと連れ立って逃げていれば、青竜隊の皆さんと合流しました。今は火のせいで魔獣も逃げることに専念しているのでそちらの方は手が空いたようです。


「無事そうだな。けが人はどうした?」

 

 轟々燃える薔薇怪獣が高速回転でいろんなものを飛ばしてきてますが余裕そうですねレイファス隊長…。

 青竜隊の騎士が結界を張って攻撃から皆を守ります。これでとりあえずは一安心。


「けが人はすでに外へ逃がしてあります。外には別働隊がいるので敵も魔獣も市街に逃げることはないでしょうが」


「問題はあれか…」


 皆が薔薇怪獣へ目をやります。


「あれだな」


 見ていれば、炎に塞がれた道から冒険者のレイナが飛び出してきました。かなり煤だらけで一部火傷もしています。そして、わき腹からは大量の血がっ。

 ふぅと気を失いそうになった私を青竜隊のリオン君が支えて抱き上げてくれました。


「総隊長は?」


 レイナがこちらに合流すると、レイファスがその脇腹に癒しをかけます。

 レイナはわずかに顔をしかめながらも息を整えて答えました。


「あのニルグってやつと戦ってる。あいつ、総隊長さんと同じ動きをするんだよ」


 レイナは何かを探るように騎士達を見ますが、皆その視線に困惑した表情を浮かべて返すだけで答えはないようです。

 竜派が同じとか、そういうこととは違うのでしょうか。


 う~んと悩んでいると、今度は闘技場の外側からバタバタと足音が響き、全員が身構えます。ですが、音の主は緑竜隊の人々でした。先頭にマリアさん、後ろに騎士の皆さん…とズタボロの人。


「お…ジェフ!、お前生きてたのか!」


 ゼノがよたよたする男の人の背をバシバシ叩きます。そのせいでジェフと呼ばれた彼はべしゃりと床に倒れました。

 大丈夫でしょうか…ここは薔薇魔獣暴れる危険極まる戦地ですが…戦えなさそうですよ?


『リ~リアちゃ~ん』


 お、今度はリアーナさんも合流。姿は相変わらず見えないのですが、ぶ~んと耳元で音がしたかと思うと、パシッとレイファスに捕まえられました。


『キャ~! 誰! 何するの!』


 お見事ですレイファス。ハエ捕獲師匠に認定しましょう。


「リアーナさん、アルノルドさんは」


 レイファスが手を広げると、そこには小さな竜がパタパタと飛んでいる姿があります。パタパタ飛んでいるように見えるのですが、なぜか音は虫の羽音です。不思議。


『あの子なら大丈夫よ。あら?、あらあらあら~。かっこいい子がいっぱいね』

 

 リアーナがあっちへきょろきょろこっちへきょろきょろしていると、見られていた騎士達があんぐりと開けていた口を閉ざしました。

 わかります。皆さん驚いていたのですよね。でも、私は認めませんよ蠱竜なんて口が裂けても言いませんっ。


「リアーナさん、アイノスさんはいませんか?」


 古竜の中でも頭脳派の緑牛柄のアイノスさんに相談してあの薔薇怪獣を何とかする方法を聞こうと思います。


『アイノス君はねぇ、う~ん、ま、いいか呼んできてあげる~』


 そういえばアルノルドを運ぶとき以外古竜を見ていないことが不安です。何かしようとしているのでしょうか?

 

 私達が薔薇怪獣に対して戦術を考えていると、ぶい~んと虫古竜が現れます。その数6。

 おや?と首を傾げて掌を広げると、そこに乗ったのはピンク牛柄、緑うし柄、まっ黒4匹。嫌な予感がひしひしとします。


 黒い古竜はひょーいと掌から降りると、元の小さな古竜の姿に変身しました。


「我等はっ」


「古竜改の皆さんと、アイノスさん、リアーナさんです」


 例の文句は言わせませんでした。

 がっくりしても無駄です。今は薔薇怪獣ですよっ



 アイノスの分析によると、薔薇怪獣は燃え尽きるよりも前に炎の魔法を吸収したとのこと。元々魔力で具現化した『心』ですから、魔力を与えられれば吸収して強くなるのだそうです。

 ですが、それを放っておいたらそのうちあれが歩き出して町が火の海になるのは時間の問題。


「とりあえず水で消すべきだな」


 方針が決まると、マリアが氷の魔法を放ちます。

 上空で溶けた氷はそのまま薔薇怪獣に降り注ぎ、少しずつ鎮火しているようです。

 自分で火をつけといてなんですが、ほっとしました。


「では、我らに任せよ~っ」


 古竜改の皆さんが飛び出し、ものすごい音と共に薔薇怪獣を尻尾で滅多打ちです。ただし、1メートルほどしか飛べてないので足元攻撃ですね。

 炎と水で傷んだ茎がパキリと折れ…


「キュワァアァァァァ~! なんでこっちに倒すんですか~!」


 巨大な薔薇怪獣は、そのまま私達の方へと倒れてきました…。


 これって、お約束ですか?

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