83話 教祖 ※
残酷描写があります。ご注意ください
国王視点です
セルニアの空を魔穴が覆う頃、町の外ではグレンと国王、黒竜隊隊長ヴァンと各隊の騎士、兵士が町を取り囲む軍勢に立ち向かっていた。
「どっから出てきたこの大群!」
様相はまるで国家間同士の戦争である。
町を守りつつ、敵と魔獣と魔穴の脅威と戦う国王側は、多くの竜達を率いているとはいえ、不利な状況である。
「ヴァン!」
国王が魔獣を相手にしながら怒鳴ると、ヴァンが少し離れたところで人間相手に戦いながら答える。
「魔穴です。あれから人も魔獣も飛び出してくるようです」
おいおい、魔穴が移動手段なんて聞いたこともねぇぞ
国王はガラの悪い男に変貌しつつ、喉を切り裂いた魔獣の腹を蹴りつけ、離れた。
ごうっ
国王が離れてすぐに、それまでいた場所に竜の赤い尻尾が振り下ろされ、多くの人や魔獣が吹き飛ばされる。
タイミングよく攻撃を繰り出したのはもちろんグレンである。
魔獣であれ、人間であれ、世界で最も上位に位置する竜族の、それも神竜の攻撃に耐えられるものなど皆無に等しい。彼がいなければ、魔穴から降りてきた魔獣も、そこそこ大きい魔穴を通って表れた人間も、押し返し続けるのは無理だったろう。
これが町の中で起きた戦いであったらと思うとぞっとする。
「神竜様よぉ、魔穴の中には古竜がいるんじゃなかったか?」
空を飛ぶ雄大な赤竜は、蒼い瞳を敵側に向け、グルグルと唸っている。
『断定はできんが、魔穴の中には空間が幾つもあるとみていいかもしれん。でなければあれをくぐった人間はただの狂人と成り果てているはずだろう』
「て、ことはなんだ。奴らは魔穴の狂わない空間を通っていくらでも湧いて出られるってことか」
『町に出てこないところは感謝すべきかもな』
「はっ、大方町には入れないってとこだろう。この空の魔穴の中心は町の中にあるんだからな!」
国王は苛立ちながら大振りの剣を振るう。
空の魔穴はつい先ほどまで降下していた。しかし、何かに留められるように、今は同じ位置でピタリと止まり、落ちてはこない。それからだ、敵側の動きが激しくなったのは。
「もともと町を中心に何かを仕掛けたが不発だったということでしょう」
ヴァンもそれは感じていたらしい。だが、そうだとすると、やはり町側に魔穴を出現させて攻撃した方が、勝利するためには好ましいと思えるのだが。奴らはそれをしない。
「魔穴にも発動条件があるってことだな。たとえば、こんだけでかい魔穴の大元の下では使えないってとこか?」
じっと観察すれば、魔穴を出現させて人が出てくる場所が、ある一定の線より外側だとわかる。それより内側では魔穴は開いていないし、開く者も入ってこない。
「グレン!、魔穴を開ける奴らを竜達で倒してくれ!」
『やってるが、魔穴が邪魔でうかつに手が出せん。飛龍では狂うのがおちだ』
厄介なものである。魔穴を生み出すものを倒せば戦況は良くなるのに、そこへ辿り着ける竜達は、魔穴に近づきすぎれば狂って襲いかかってくるようになるのだから。
一進一退の戦いに苛立ちが募る。
「くそっ」
家族も国民も護るべき大切なものだ。それがどんな状況に陥っているかわからないのに、町に戻ることができない自分に国王は苛立つ。
「落ち付け、魔穴を壊すのなら手伝ってやる」
響いた声は低く、国王は隣に立ったものに目をやってぎょっと目を剥いた。
「魔王!?」
そこにいたのは黒づくめの長身の男。今代魔王クラウスである。本来なら敵側の男が、今立っているのはセルニア国王の隣、そして、睨んでいるのは敵側だ。
「あのアホ竜が魔穴に食われた。だが、空のあれを止めたのもあのアホ竜だ。時間はある。奴らを捉えて魔穴からあのアホ竜を引きずり出せ」
アホアホ言っているのはおそらくリーリアのことだろう。どうやらあの古竜は何らかの方法で魔穴に対処したようだ。
「お前がここにいるのはあの古竜を助ける為か?」
「余計な話はするな」
どうやら当たりではあるらしい。素直でない男だ。
「てぇことだ、グレン!」
『わかった』
それからの動きは早かった。竜が近づく魔穴は魔王によって破壊され、多くの魔穴使いが倒されていく。中には魔王自身が倒したものもいる。
魔穴さえ生み出されなければ敵の増員も、魔獣の出現も防げる。これで形勢は逆転とほっとしかけた時
ドォォォォン!
町側から響く地響きに全員の動きが止まった。
「今度はなんだ!」
状況がよくなったかと思えば何かが起きる。魔穴があっても無くても気が狂いそうだと国王は吐き捨てた。
「どうやら、『粛清の時』が近いらしい」
ぶわりとすぐ近くに魔穴が現れ、騎士達が国王を守るように前にでる。
魔穴から現れたのは、国王より少し年上らしき白髪に長い白ひげを蓄えた恰幅のいい男だ。
足が悪いのか杖をついてはいるが、弱弱しさは全くなく、威厳があり、他を圧する雰囲気を持つ男。
その瞳の色は真紅――――
「おぉ、教祖様」
「教祖様」
敵のざわめきに国王側に緊張が走る。
剣を構える騎士達に、教祖と言われた男はわずかに目を細めるだけで何もしない。
動いたのは
豪と風を吹かせ、国王と教祖の前に降り立ったのはグレンだ。
「なぜ貴様がここにいる!」
その声は穏やかとはかけ離れた憎しみに満ちたものだ。人と一線を画す竜にしては珍しい。
「グレン、こいつは誰だ?」
国王は嫌な予感を覚えつつも尋ねる。
グレンは教祖から目を離さず、怒りのあまりに吹き荒れる魔力の風を纏いながら答えた。
「ダグラス・イル・ファーレン。ウィルシスの兄で魔道王国最後の王太子。そして大戦の首謀者だ!」
リーリア「も~え~るぅ~っ!」
レイファス「尻尾に火が…」
リーリア「ギュアアアア! てなんか、ほったらかされてる気がする!」
ゼノ「俺もそう思う」
リーリア「なんか大ボスの気配がどこかでする!」
ゼノ「この中には主人公いないんだろうなぁ」
リーリア「ま~じ~で~す~か~!」
アホ竜組の現在の様子…




