78・5話 ただ今悪化中
消えた話を書き直したものです。
(元の話は皆様のおかげで78話として復活しております)
元の話だけで良い方は読み飛ばしてください。
同じ78話と見比べたい方だけお読みください。
さすがは負の心の塊です。一筋縄ではいかなかった。
硬いキューブも花に変えてしまえば食べやすくなると思って放った花咲か爺さんがよもやこんな結果を生むとは…。
「キュアアア~!」
「ギュアアアア~!」
しかし、古竜達も負けていません。右へ左へ、飛んだり跳ねたり、横っ飛びも様になっておりますよ。
あちこちにごろごろと転がる古竜達が可愛いです。
あ、他人事みたいに見とれてる場合ではありませんね。
薔薇は竜一頭分ほどの大きさがあります。もちろん古竜ではなく普通の竜です。
うねうねと根を動かし、棘だらけの蔓を体に纏わせ、それを鞭のようにはなってくるのです。
あれ、魔獣とか言いませんよね?
「まてい! 貴様のその傍若無人、捨て置けぬ!」
あ、古竜改の皆さんが復活しました。
薔薇魔獣…いや、あれは、そう、特撮で見るような薔薇怪獣というべきでしょう。古竜改の皆さんにびしぃっと指を向けられて鞭の動きがゆっくりになりました。
驚いている、いや、あれは様子見ですね。
「我等は」
「最強」
「最低」
「古竜改である!」
今度は最強の最低になりました。が、否定している暇はないようです。
薔薇怪獣がからかう様に楽しそうに鞭を振るってきます。
「そんなものが効くかー!」
まっ黒古竜が跳ねる飛ぶ避ける。そして、飛んでくる鞭に対して尻尾アタックです!
ビシィィ!
激しい音を立てて鞭が跳ねかえされ、薔薇怪獣が一瞬動きを止めました。
周りでは、先ほどまで逃げ惑っていた古竜達がぜぇぜぇはぁはぁと息を荒げながらもまっ黒古竜達に拍手を送ります。
薔薇怪獣はそれを見ると、ピタッと動きを止め、その花の色を赤、黄色、ピンクそしてどす黒い赤へと変化させました。
ざわりとざわめく古竜達。
そして、薔薇の猛攻撃が始まったのです!
「「「「「ギュルアアアア!」」」」」
薔薇、お怒り中。
古竜(古竜改含む)、全力逃亡中。
戦場悪化!
私はと言えば、先程から動いてません。
ですが、これにはわけがありまして、これでも外への道しるべとなる桜の樹の天辺の直線上から動かないようにしているのです。
「あれは私達だけではどうにもならないわ~」
ピンクの牛柄古竜リアーナがやれやれという様子で薔薇怪獣を見ます。
古竜改は改というだけあって他の古竜よりは強いようですが、攻撃手段は打撃です。跳ね返すことはできても倒すことができません。
齧ろうにもあれだけ暴れて鞭を振るわれてはこちらがやられますね。
「外に繋がる場所があれば」
「あ、ありますよ」
緑の牛柄古竜アイノスの呟きに応えると、彼は驚いたように私を見ました。
「この先に外と繋がってるところがあるんです」
私はくるりと背後のまっすぐ先を指さしました。
「それならばあれを落とせるな」
あれ、というのは薔薇怪獣ですね。
・・・・・
「いや、駄目ですよ! 外にはウィルシス達がいます!」
「ウィルシス?」
「それってリヴちゃんのお兄さん? リーリアちゃんの彼氏?」
「違いますっっ。あ、リヴちゃんのお兄さんはあってますがっ」
全身真っ赤に染めながら答えると、リアーナのにたりとした顔がすぐ傍に。
「好きな人ね?」
「すっっ、好きじゃなくてっ、好きだと言ってくれてる人でっ。変態で、ストーカーです!」
手をバタバタふりながら否定すれば、ますますリアーナの笑みが広がります。
背後ではドカンドカンと薔薇怪獣対古竜達の戦いが続いているのですがよいのでしょうか…。
「今逢いたい人よね?」
今逢いたいかと聞かれると…ここに来る前のあの焦った声が思い出されるので、ウィルシスに無事を伝えたいですが。いや、今逢いたいのはアルノルドさん! アルノルドさんです!
自分に言い聞かせつつちらりと見れば、リアーナの視線が痛い。
「どう思ってるのぉ?」
どう・・・
「私」
「うんうん」
「ウィルシスのこと…」
「うん!」
キラキラ目を輝かすリアーナに、真剣に悩む私が出した答えは…
「心配してます?」
「ちが~う!」
「心配するとドキドキしますよ。ずっと気になりますし、顔見なくちゃって思いますよね?」
リアーナが床に両手をついてしくしくと泣き真似してます。
「違うわぁ~」
そんなコントの横で、しばらく黙っていたアイノスが首を傾げつつ告げました。
「リヴの兄のウィルシスなら、セルニアの初めの王だな」
「は?」
突然のことに私は目を丸くしてアイノスを見ます。
「ウィルシス・エイル・セレニア、セレニア王国を興した古竜と魔道王国の民の混血だ」
なんですと~!!




