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73話 枯れ木に花を咲かせましょ~!

戦闘です。たぶん軽い表現です。

苦手な方はとばしとばしでお願いします。


保奈美の名前を保奈ほなに変更いたしました。よろしくおねがいします~。

 文字通り飛んで、跳ねて、股をすり抜けて、ついでにスライディングして横っ飛びだってしちゃいますよ。

 何をしているか? もちろん騎士達の手をすり抜けているのでございます。

 おかげで舞台が遠い…。なんでしょ、短い距離なのにこの回り道状態。


 いつもの何倍も集中しながら走ります。

 人型になってもよいのですが、それに関しては運次第でして、例え人になれたとしても、小さな竜と捕まえやすい人の姿ならば、やはり竜を選んで逃げるべきだと思うわけです。鈍足でも。


 ようやく会場の入り口に辿り着きました。ですが、さすがに驚きで足が止まります。


「よっし、捕まえ…」


 一瞬止まったものの再びダッシュ。何とか騎士の手を逃れました。

 

 闘技会場では騎士達が魔獣相手に戦っております。ですが、数が多いうえに逃げられない民を守っての戦闘です。そして、なぜか敵の中には魔獣ではなく人間の姿があります。

 

 私は倒れる人々を乗り越え、騎士達の足元をすり抜け、魔獣の牙を避けつつ舞台上の魔穴へと向かいます。あれさえ齧って食べてしまえば魔獣の脅威からは逃れられるはずですから。


「おいっ、古竜だ!」


 ついに敵側の人間に見つかりました!

 

 どこのどなたか知りませんが、私のことは見なかったことにしてほしいものです。

 数人が私に向かって駆けてきます。しかもその手に握られる武器は明らかに対竜用の武器です。青く光るのがその証拠。


「ナイフは人に向けてはいけません~!」

 

 さらに加速。古竜の限界速度を突破した気がします。


 ぽてぽてぽてぽてぽてぽてっ


 こう見えて保奈時代は運動能力高めです。ですから、絶対にもっと早くなるはずなのです。


 そう…年をとると起きる現象を、私は若返って再び味わうことになりました。

 頭の中では前へと進んでいるのですが、足がついていかず転ぶというあの現象です!


「ぬひょ~っ。ぐふぅっ」


 ごろんごろんと転がり、ぶつかって止まったのはなんと闘技場の舞台の段差の壁。

 急いで飛び起き、敵が来る前にと舞台に飛びつきます。

 残念ながら舞台の段差の高さは40~50センチのようです。飛んでも届きません。しかし、ここは必殺唸れ上腕二頭筋リターンズです! はっしと掴んだ舞台の端からよじよじと登ります。


 明らかに敵に襲われる速度でしたが、気が付けばリオン君達騎士団の皆が応戦してくれていました。

 

 こうなれば私の使命はあの魔穴のみ!


 視野が緊張のため急激に狭まり、私の目にはもう魔穴しか映っていません。

 全力疾走、猪突猛進、なんだっていいです。とにかくすべての筋力を使って魔穴に一直線。

 しかし、それを敵が逃すはずもなく、赤竜隊隊長レイファスがウィルシスと同等ぐらいだと言っていたこの騒動の原因、浮浪者男が魔穴と私の間に滑り込んできました。


 私はぴたりと足を止めます。

 ウィルシスと同じならば捕まる可能性が高いです。少し冷静になって呼吸を整え、男を睨みました。


「アルノルドさんはどうしましたか?」


「金色の騎士のことならあそこで寝てるよ?」


 ちらりと目だけを動かせば、そこには血だまりに横たわるアルノルドの姿がある。その彼をかばいながら戦っているのはゼノで、アルノルドは冒険者のレイナさんによって治癒を施されているようだ。

 

 騎士の応援はどれくらいで来るだろう。

 

 出入り口はパニックになった民で溢れ返り、入ることも出ることもできない。しかし、今現在ちらりと確認した感じでは、この闘技場で戦っているのは青竜隊と幾人かの冒険者だけに見えます。他の騎士、騎士団長、副隊長はおそらくすでに外で何かしらの手を打っているはずです。 

 

 大丈夫。アルノルドは助かる。


 信じろと自分を叱咤して、目の前を見据えた。

 

 はっきり言って先ほどから膝ががくがくではたから見れば古竜バイブレーション中。平和の中で生きてきた人間が、血みどろの命をやり取りする場面になんて何度放り込まれても慣れるものではないんです。

 しかし、保奈時代だってパートと言えどやるときゃ社員以上にやるんですよ。これでもアルバイト時代はマネージャーに上り詰めた女ですよ、培った能力舐めんな!


「そ…」


「なに?」


 震える口を忌々しく思いながらも、掠れる声を一度飲み込み、叫ぶように言ってやります。


「その頭はなんですか! 前髪はきっちり目にかからない長さに切ってきなさい! それに服装! 人に不快感を与えないものを選ぶのが常識です! やり直し!」


 ハイ。身だしなみチェックですね。


「は?」


 「何言ってんのこいつ?」な雰囲気が漂うのは百も承知です。ですが、私の能力は職場でないと発揮されませんからね、ここは敵が呆気にとられてくれればいいんです。


「くらえっ。枯れ木に花を咲かせましょー!」


 元々油断してくれていたとか、そもそも構えてなかったとか、そういう突込みは無しでお願いします。

 人間焦ると何が口から出るかわかりませんとも。ですが、ちゃんと私ができる最善策、『花咲か爺さん』渾身バージョンをお届けしました!


 そして…うん、忘れてたですよ。

 ここに現在魔力がたっぷり集まってること…。


 だからね、まさか渾身の花咲か爺さんが、こんなことになるとは思わなかったんですよ…?



 闘技場の舞台に、巨大な桜が生えました・・・・






 

リーリアの身に起きたのは、運動会でお父さん達が転ぶあの現象です。


リーリア「イメージと体が別物になる瞬間が誰にでも訪れるのです!」


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