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68話 中にいたのは

 穴、穴から声がしましたよっ。しかもつかまれてます!


「グ、グレン~ッ」


 必死で穴の中の手を取り戻そうとしているのですが、相手の人の力が強すぎて外れません。かといって両手を突っ込んでさらに事態が悪化するのは避けたいです。

 

「引っ張るぞ」


 グレンが私の体を掴んで引っ張ります。ですが、どうやら穴の中でも何らかの力が働いて双方引っ張るので腕が痛いです。


「いたたたたたたたっ」


『痛いわっっ』


 穴の中の人物も痛がっているので、ひょっとしたら穴の中には他にも誰かいて、同じように引っ張っているのかもしれません。


「まいったな、俺では手が入らんし」


 グレンが引っ張るのをやめ、穴の大きさと手の大きさを見て悩み始めました。

 幸い相手も引っ張るのをやめてくれたのですが、中の人は今も手を握ったまま放してくれそうにありません。


『外の誰かと話すのは久しぶりよ。たまに繋がってもすぐに逃げちゃうの』


 普通の人間か、それとも違うのか、姿が見えないととにかく不気味で怖いです。相手が淡々としている分怖さ倍増と言いますか、幽霊と会話している気分です。

 私お化けは駄目なのです。先ほどから滝のような冷や汗がだらだらと流れるのです。竜は汗が出ませんが…


『今は何年なのかしら。戦いは終わった?』


「グ、グレンこの人マイペースです」


 私が訴えると、グレンが首を傾げる。

 おかしな反応に私も首を横に倒し、二人で見つめあった後、ふと思いついて尋ねてみました。


「声が聞こえてないですか?」


 グレンは否定を示して首を横に振る。


「言葉は聞こえん。変な呻き声みたいなのは聞こえてたが」


 グレンにはもっとホラーに聞こえていたようです。

呻き声が聞こえていてここまで近づけるとはさすがですね。神竜だからですか? それともただの怖いもの知らずなチャレンジャーですか? 何でもいいので早く助けてください。非常に怖いです。


「今は何年かと、戦いが終わったかと聞いてます」


「話ができるのかっ」


 こくこくと恐怖のために涙目で頷く私に、グレンは会話をするよう促しました。て、手は放してはいけないんですかっっ? 


『あら、誰か他にもいるの? あなたは古竜よね? 私達も古竜よ』


 爆弾投下です。穴の中にいるのが幽霊でも化け物でもなく、全滅したはずの古竜だというのなら新事実です! 

 

 『衝撃! 古竜は魔穴で生きていた!』


 オカルト情報誌の見出しになりそうです。


「グレンっ、古竜です! 中にいるのは古竜ですよ!」


 興奮気味に言えば、握られている手の感触が人のようなものから少し硬い鱗を持った竜の小さな手の感触に変わりました。

 騙されているのならばこの穴の中の誰かは化け物に姿を変えていて、舌なめずりをしているところなのですが、不思議と伝わってくるのは暖かい何かです。懐かしいような、優しい雰囲気も伝わってきます。


「証明ができるのか?」


 グレンもやはり疑っているようですが、私はなんとなく間違いないような気がします。同族だからでしょうか。


「古竜の証は立てられますか?」


『そうねぇ。無理だわ』


 あまり悩まず答えが返りました。少しは悩みましょうよ…。


『それよりも、少しは魔穴って減ったのかしら? 最近食べても食べても増えるからおかしいなって皆で言ってたのよ』


 どういうことでしょう。魔穴って食べモノなんでしょうか。話し方からして女性と思われる古竜はそれこそ歌のように食べ過ぎよ~なんてぼやいております。

 まさかと思いますが、古竜が魔穴を消せるという技は、魔穴を食べることとかいうんじゃないでしょうね?

 

「…大戦時より減ったらしいですが最近増えているのだそうです」


『やっぱり! 道理で核が増えてるはずだわっ』


「核?」


『あ、うん、ちょっと待って』


 どうやら彼女の背後でも誰かが声をかけたようです。話が途切れました。

 その間に私はグレンに魔穴を古竜が食べているのだと話しておきます。核というものがあるのだとも伝え、その先は今穴の中で会話中で聞けませんとも言っておきます。


『そこに一緒にいるのって誰かしら?』


 どうやら中の人がグレンのことを気にしたようです。確かにここにいるのが古竜でも傍にいるのが彼等の敵とかそういった人物であった場合困りますからね。


「えぇと、赤い竜のグレンさんです」


『赤い竜のグレン…? え? リヴちゃん? リヴちゃんの旦那様?』


 ものすごく置いていかれている気分です。中の人達マイペースに話し合い中らしく、そこから漏れる、というか、彼女が聞き返す言葉だけ繋いでいってもも何のことやらさっぱりです。

 つながれた手がちょっとだけ痺れてきました。


「グレンさ~ん、リヴちゃんの旦那様ってなんですか?」


「誰が言った!?」


 疲れてきた私が、話がまとまっていないものの、断片的情報をそのまま伝えると、グレンが顔色を変えて身を乗り出してきました。

 常に落ち着いている雰囲気の彼が、ここまで青ざめて焦るように食いつくのは初めてです。


「中の人がそういうんです、そうじゃないかって話し合い中で」


 リヴちゃんの旦那様、旦那様ってことはグレンさんが旦那様?


「グレンさん、リヴちゃんって?」


 恐る恐る聞いてみれば、グレンはひどく沈んだ表情で口元を抑え、どさりとベッドに腰掛けると、吐き出すようにつぶやいた。


「リヴィディアは俺の妻だ」


 ふむふむ、やはりグレンの奥さん…


 ・・・・・・・・


 ・・・・・



 グレン奥さんいたの!?

リーリア「騙されたなんて思ってませんよっ。思ってませんから~っ」


思ったんですね…


リーリアショック受け中。

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