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66話 何か起きてるようですが…

 冒険者のカイからの情報と、鼻血男ベイグと、もう一人の大会参加者ルイが見たという情報をすべて聞き終えた後のグレンとウィルシスの動きは早かったです。

 情報内容は、反竜を主義とする宗教を掲げる今回の暗殺の首謀者フルース伯爵に、どうやら軍関係者が接触を持っていたということ。それから、彼等の持つ教典には公にされているものとは別の裏の教典があるということ。

 カイが入手した情報というのはこの教典のことなのですが、彼は燃えた教典を持っておりました。


 教典に書かれていた内容は、魔道王国という大昔に栄えた国の末裔こそが世界の主であるという思想から始まり、竜族の批判、彼等に対抗するために生み出された魔穴という手段、それから古竜について。


 古竜についてはこの最弱竜の謎の一つでも解明されるかと思い期待したのですが、残念ながらこれからというところでページが燃えておりました。

 うん、これはもうお約束ですよね。


「魔穴が魔族だけが開けられるものじゃないとしたら、この『傍若無人の民』が集まったら世の中魔穴だらけですね」


「どんな我儘民族だよそれは。傍若無人じゃなくて、『粛清の民』て読むんだ」


 危険があるため、お祭り2日目は青竜隊の皆と一緒に行動することになり、例の燃えた教典を読んでいたら、副長ゼノに読み間違いを訂正されました。この世界の文字は難しいのです。


「魔道王国の人は特徴ないのですか?」


 それこそ古竜のように小さいとか、弱いとか、体力ないとか、魔法全般ダメとか…自分で言ってて落ち込んできました。

 ずぅぅぅ~んと一人沈んでいると、そういえば返事がないなと気が付いてちらりとゼノ達へ顔を向けます。


 青竜隊の皆の表情が戸惑いに満ちております。


「どうかしたのですか?」


 陽気な彼等が大人しいと不気味です。


「ん? あ、あぁ」


 ゼノの返事がおかしいです。そんなおかしなことを聞いた覚えはありませんよ?


「魔道王国の人間の特徴は銀の髪を持ってること、それから赤い瞳だな」


 不意に背後から声がして、振り返ると同時に体が浮いておりました。

 私を抱き上げ、答えをくれたのは赤い長髪に碧眼、背が高く、厳格の中に色気があるというアルノルドさんとは違う感じでどストライクな御仁、赤竜隊隊長レイファスです。


 思わずひしっと抱きついちゃいました。

 スイマセン、いい男センサーが振り切れたようです。

 じゅるり…あ、涎が出た。


と、浮かれておりましたがこの方何とおっしゃいました?


「銀の髪…は、ウィルシスと緑竜隊のマリアさんですね。赤い目は…あれ? ウィルシスはひょっとして魔道王国の出身ですか?」


 ウィルシスは見事な銀糸の髪に真紅の瞳を持っております。マリアは銀の髪に碧眼でしたね。


「旦那がここに来るなんて、なんかありましたか?」

 

 ゼノに話題を変えられました。触れられたくないということでしょう。とりあえず口を閉じます。


 青竜隊の皆が緊張しているようです。なぜなら、レイファスは騎士団第一隊。通常は王族に仕えているため、他の隊との接触は少ないのです。私が彼と接触したのもお披露目前の一日くらいですから、何かあったと考えるのが普通でしょう。


「いや、非番なので祭りに連れて行ってやろうと思っただけだ」


 え? それって私を?


 ゼノ達青竜隊の面々もぽかんと口を開けます。やはりそういうキャラじゃないのですねこの方は。


「や、その、古竜は狙われてるからって警戒を」


「ずっと閉じ込めるわけにはいかんだろう。暇ならお前達も行くぞ」


「はい??」


 驚く皆を後に、レイファスは私を抱いたまま部屋を出ていきました。

 なかなかのマイペースさんのようです。



____________


 なんだかんだで青竜隊の護衛役にサイとリオン君が付き、その他非番の人が数人付いてきました。ゼノはお留守番、もしくはアルノルドへ報告か確認に行ったのでしょう。来ていません。


 お祭り二日目の闘技場は大盛り上がりです。

 誰かが負けると、その人に賭けていたのでしょう人々が肩を落としている姿も見受けられます。


 今回の賭けは予選を通過した時点で一人に賭けるという方式です。予選通過者は8名。(いず)れも名の知れた冒険者達です。


「レイファスさんは誰が勝つと思いますか?」


 賭けに興味があるかどうかはともかく、予想をしていただくことにしました。

 すでに3試合過ぎていますので、5人から選択ですね。

 実はその中にはあのギルドの美女レイナさんがいるのです。俄然応援に力が入りますよ。


「リーリアはレイナか?」

「もちろんですっ。レイナさんにはお世話になってますし」


 目をキラキラ輝かせてレイファスを見上げれば、彼は艶のある笑みを浮かべ、選手達を見やる。

 なぜだかお膝の上に乗っている私としましては、この歩くお色気マシーンに先ほどから心臓バクバク、悩殺寸前です。

 確か御歳は27歳とのことでしたが、成熟してます。その年でその落ち着きと色香はありえませんっ。ひょっとして年を誤魔化してたりしませんかね?


「あの男だな」


 レイファスが予想したのは魔道士風の衣装に身を包んだ、見た目根暗そうな痩せた男です。一番不人気な選手ですね。

 ちなみに一番人気は体の大きな巨大斧を使う戦士です。

 やはり見た目は大事ということでしょう。


「魔力が強いですか?」


「魔力も強いが、あの動きはたぶん総隊長と同じだ」


 ウィルシスと動きが同じと言われてよくよく観察しますが、何が同じかわかりません。


「足運び、体重の掛け方、あとは目線ですか?」


 護衛役のサイが同じと思われるものを上げると、レイファスが頷きます。


「総隊長とどっちが強いだろうな」


 そんなに強いのですか!?


 あきらかにひ弱そうな細っとした男です。黒に近い紺色の髪は手入れされておらずもさもさで、顔が隠れています。魔道士風の服もよく見ればなんだかくたびれていて、浮浪者に近いのではないでしょうか。

 強い冒険者ほどお金がたまるので身ぎれいにしていると思ったのですが…。


 本当に強いのかと思わず目を皿にして見つめてしまいます。

 その疑問は直ぐに払拭されました。

 

 なんと、レイナさんが試合開始数分で倒されたのです!


 ぽかんと口を開けたまま舞台を見ていた私は、振り返った男と一瞬目が合ったようです。

 

 ぞくっと得体のしれない何かを感じてレイファスにしがみ付きました。



 あれも変態だったりとか…しませんよね?

リーリアの関与せぬところで動きつつある何か…

それは今にも牙を剥かんとしている!


リーリア「お団子食べたいです」

ウィルシス「それはうまそうだ」

リオン「…仕事しなくてほんとにいいんですか?」


リーリアは何も知らないので暢気です

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