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64話 団体戦終了!

 もぐらたたきって意外と疲れますよね。


 団体戦決勝戦。敵チームはギルドでも結構有名な3人組。当然実力者です。

 しかし、私にはそんな肩書はどうでもよいのです。ここであったが百日目(短いっ)。先日の恨みは忘れかけてましたが、思い出しましたよ~っ。


 相手チームの一人、少し小柄な男は以前ベアウルフに襲われかけた時に私を棍棒のように扱った男に間違いありません!


「ふっふっふっふ」


 奴は、奴こそは私がしとめるのですっ。

 

 その決意を胸に、始まった団体戦。速攻で舞台と人と観客を花だらけにし、噂を聞いて増えた観客を喜ばせた後、私は花の中に埋もれ、その中を縦横無尽に走り回って(鈍いですが)、狙った獲物の(すね)を重点的に尻尾アタック開始です。


「うわっ」


 攻撃後は離れて頭を出し、攻撃されると隠れるヒットアンドウェイです。

 見た目はもぐらたたきですね。ですが、もぐらたたきとはえてして夢中になるもの、そして疲れるものです。


「とぉっ」


 ばしりびしりと尻尾アタックが決まると、相手の怒りゲージも上がるのでしょう、もぐらたたきに熱が入ります。その間周りには目がいっていません。うまくひきつけましたね。

 しかし、これでは拉致が明かないのも事実です。

 私は逃げながら花を結び、例の罠を仕掛けました。


「鬼さんこちら、手の鳴る方へ~」


 ぱちぱちぱちと手を鳴らして小ばかにしたように誘導すると、男は見事に引っかかってくれました。

 どたんっ!と音を立てて転びます。

 それを数回。

 さすがに腹が立ったのでしょう、男は剣を振り回し始め、身の危険を感じたので花の中に隠れます。


「くそっ、どこだっ」

「おい、冷静になれ!」


 仲間が男に声をかけますが、男の耳には入っていないようです。

 私はここで全力疾走すると、男の脚にスライディングアタックをお見舞いしてやりました。

 

 男は見事に私に躓いて転び、剣を振り回していたのでとっさに手が出せず鼻を打ったようです。いたそうですね。

 

 男が呻いてうずくまってる間に危機に陥っているリオン君の元へと走り、敵にスライディングアタック。

 バランスを崩した男が後ろに倒れ、リオン君に剣を突き付けられ降参です。


「ちっ、馬鹿どもがっ」


 最後の一人が舌打ちするなりものすごい速さで剣を振り、キールの剣を弾き飛ばして肉薄、その腹にけりを入れて弾き飛ばすと、その速さを保ったままリオン君に迫り、まごつくリオン君を掌底で沈めました。その後、隠れる私をむんずとつかむと、そのまま舞台から放り投げ、場外で失格。あっという間の出来事でした。



     ☆      ☆


「残念だったね」


 控室に帰ると、まだ頭がぐらぐらするというリオン君と、腹に蹴りを入れられたキールをグレンが癒し、悔しがる私をウィルシスが宥めてくれました。


「あの人が飛びぬけて強いのは知ってたからあれだけもったのが奇跡だよ」


 キールが笑いながら言う。

 最後の一人はギルドでもランクの高い冒険者なのだそうです。本来なら個人戦に出るべきなのになぜか団体戦に出たという御仁だそうです。


「負けて悔いなしというべきなのですね…」

「まぁ、その前の二回戦とも半分まぐれだったしね」

「楽しかったよ」


 リオン君とキールの言葉に私は満足ましたが、まだちょっと悔しいのでキュウキュウ言いながらウィルシスに甘えていると、控室に例の三人組が現れました。


「よぉキール」


ひょいっと軽く手を挙げたのは最後まで生き残っていた冒険者です。後の二人は彼の後ろにいますが、一人は苦笑い、もう一人は鼻を打った時に怪我もしたのでしょう、鼻の頭にガーゼが貼られ、むすっとした表情でそっぽを向いています。


「カイひどいですよ。さっきまで頭くらくらしたんですよ」

「治してもらったのならいいじゃねぇか」


 ちらりとカイと呼ばれた冒険者がグレンを見て軽く会釈します。


「そっちの坊主も大丈夫そうだな」

「あれくらいなら慣れてますので」

「ははっ、騎士団の訓練は厳しそうだな」


 リオン君の言葉にカイは笑い、適当に開いているところにドカリと座りました。どうやらただ様子を見に来たというわけでもなさそうですね。先ほどから後ろに控える鼻血男じゃない方の男がちらちらとグレンとウィルシスに目を向けています。


「この間フルース伯爵を捕まえてたろ?」

 

 キールは何の話とばかりに首を傾げ、リオン君、グレン、ウィルシスがピクリと反応を示しました。

 誰のことかと私も考えます。が、聞いたことのない名前ですね。ただ、捕まえた伯爵となるとおそらく闘技大会前のあの反竜勢力のことかと思いますが。


「奴らがはまってる宗教があるんだが、これの動きがおかしいのをこいつらが見たって言うんで一応あんたらに報告だ」


 カイの鋭い瞳がグレンとウィルシスを見据え、二人はそれを軽く流す。


「こちらが掴んでいる情報ならば必要はない」


 どうやら情報を売りに来たようですね。なかなか抜け目のない冒険者達です。

 知っている情報、くだらない情報はお金に化けない。しかし、彼等の知るその情報が国に関わるようなものだとしたらうまくすれば万金にも化けるでしょう。


「あの集団は魔族と絡んで魔穴を生み出す技を持ってる」


 なんと、魔穴は作り出せるもののようです。

 一気に場の緊張が高まるかと思いきや、グレンもウィルシスもリオン君までもが知っていたことのように平然としております。


「これは知ってる、か。じゃあこっちだな。そこの竜、そいつが狙われた理由は反竜のせいじゃなく、魔穴を塞ぐことができる存在だと奴らが知っているとしたら?」


「なんだと?」


 お、これは新事実ですね。一気に緊張が高まりました。

 う~ん、緊張しているところ悪いのですが…


 私とキール、すごく場違いじゃありませんか?

 


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