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55話 食べすぎ注意

 牛のお肉は何人分でしょう? 


 昔意味もなく検索してみたことがあったなぁと感慨深く思いながら、目の前の光景を見る。

 

 テーブルに積まれた肉!肉!肉!


 調理前なのが悲しいです。


 確か牛のお肉は80人分くらいになるということでしたが、魔獣のシウは体の大きさが牛の倍ぐらいあるので160人分くらいですかね。試食会と称して食べるには量が多いので、騎士団を巻き込んでバーベキュー大会でもしようかと思います。お昼時ですしね。


 ちゃっかり自分用に一番軟らかそうな部分を厚く切ってもらってとってあるので、それはもちろんステーキにするとして、バーベキューするにはどうしたらいいでしょうかね。


「厨房で焼き切れますかね? どうせなら外で網焼きとかしたいです」


「野外料理かぁ~。こんだけ肉があるならそれでもいいな」


 もったいないですが薄く切って焼肉すればたくさんの人が食べられます。今回は皆さんに魔獣も食べられるということを知ってもらわねばなりませんので、できるだけ多くの人に食べてもらいたいのです。


「城の外は無理だな。臭いに誘われた竜共と戦いになる」


 竜とご飯の取り合いに!?

 そんな危険な食事はできれば避けたいですね。竜って一匹でここにある全部のお肉を食べてしまいそうですし。


「主に調教中の竜がな、まだ堪え性がねぇんだよあいつら」


 聞けば、城には新しい騎士達用の竜が調教を受けているそうです。彼らはまだ騎士たち人間を認めたわけではない野生に近い竜達ですので、油断をするとご飯の取り合いをしたり、竜同士で喧嘩をしたりするのだそうです。


 と、いうことで、今日は厨房で焼くことになりました。焼肉ですね。

 お昼ご飯も作っている最中ですので、肉を薄く切るのは騎士数名、焼いていくのは厨房の下っ端達です。


 いざ、焼肉開始です。



     ☆      ☆


 なんだろう、この凄まじい姿…。


 はっ、現実逃避するところでした。

 焼肉開始から数分後、初めは魔獣ということもあって明らかにおっかなびっくりだった騎士達が、それを口にした瞬間、何かに目覚めたように猛然と食べ始め、お変わり要求したところから戦いが始まりました。


「一杯分しかねぇって言ってるだろうが! 何二回もならんでんだ!」


 焼肉をもらおうと何度もならぶ人続出。席に着いたらついたで食べ始めの人の肉を横から奪うという人続出。

 ここ、騎士の食堂ですよね? なんでこんなに飢えているうえに貴族でさえもマナーが悪いのでしょう? 


 やがて騎士達の口から話題が広がったのでしょう、なぜか王様が入ってきました。でも、誰も気が付いてません。王様周りに溶け込み過ぎです。


「なかなか好評のようじゃないか」


 王様が来るぐらいです、美女冒険者レイナも話し合いを終えてやってきたようで、彼女に続いてグレン、ウィルシス、それから騎士団の各隊長達が並びます。

 

「リアは食べないの?」


「ちゃんと自分の分は取ってあるので大丈夫です。今は食堂の交通整理中ですよ」


 そういった横から「うおぉぉぉぉっ」という声が上がり、先に食べ終わったゼノ以下青竜隊が、肉の奪い合いによる戦いを制しに行きました。先ほどからこの調子です。ちょっと盛り上がりすぎ? 

 

 この世界の肉と言えば、どうやらブタと鳥、後は兎や鹿などが主流で、牛は主に乳牛としてのみ育てられているのだそうです。そのせいか、脂ののった軟らかな牛肉は、あっさり肉しか知らない騎士達の舌を大いに喜ばせたようですね。


「はいはい~、食べ終わった方は出てください~」


 私の仕事は食べ終わった人達をさっさと追い出すことです。放っておくと居座って人から奪おうとするので結構重要なポジションですよ。


「ほらそこも…て、レイナさん!?」


 ちらりと視界に入ったレイナが騎士を籠絡しております! 


「レイナが望むならおれのも分けてやるぜ」


「ありがと、嬉しい」


 男気の強いレイナが恥じらう初心な女性を演じていらっしゃいますっ。そのギャップに騎士は陥落、私は萌えました。


 て、萌えてる場合じゃないです。


「レイナさん、駄目ですよっ。今日は皆に魔獣も食べられると知ってもらおうという企画なんですから」


 慌てて止めに入ると、キラリ…いや、ギラリとレイナの目が光りました。

 ぞくぅっと背筋に冷たいものが走ります。


「ひょっとして、人間には興奮作用でもあるんじゃないか?」


 周りを見回していたグレンがぼそりと呟いたと同時に私はレイナによって捕獲され、翼の付け根を掴まれました。


「あんたも食べたらうまいかもねぇ?」


 たべったべっ…たべられるぅぅぅぅ!

 

 全力でしましたっ、ひさびさの犬掻き!

 

 …がぶりと頭を(かじ)られました・・・。


 その後調査の結果、魔獣の肉は人間に興奮作用をもたらすと判明。レイナのような獣人や、ウィルシス達のような竜混ざりはその血の濃さ等によって差が出るようです。


 ちなみに私はごく厚ステーキによってお腹がポッコリ出るという効果がもたらされました。

 えぇ、食べすぎじゃありませんよ、魔獣肉の効果です!



 

リーリア「ステーキの分厚いの食べてみたかったのです」

庶民ですからね、超ごく厚ステーキに憧れるのです。

リーリア「もぐもぐもぐ…」

ゼノ「モーウがシウ食ってる…」

リーリア「共食いじゃないですよ!」





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