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54話 魔穴って?

「東はどうだった?」


「内乱がはじまったよ」


「内乱!?」


 レイナの報告というのは依然ギルドできな臭いと言われた東の情勢についてでした。

 私達はシウを狩った後、レイナを連れて城へと戻ってきました。


 レイナがあっさりと城に入れた理由は、もちろん情報提供者であり、アルノルドとウィルシスが付いているからでもあるのですが、レイナは元々第一隊赤竜隊に属していたらしく、元騎士でもあるため、素性がはっきりしているようです。

 城に入るなり何人かの騎士がレイナさんの元に集まってきましたよ。


「レイナ! 騎士団に戻ってくる気になったのか!?」


「レイファス様に会って行けよ!」


 レイファスというのは赤竜隊の隊長さんですね、赤い髪の人だったと思います。


「悪いが仕事で来てんだ、退いてくれないか」


 堂々とした態度で騎士達を押しのけると、そのまますたすたと歩きだすレイナの後を、シウを乗せた荷車が付いていきます。その姿に驚いて騎士達が動きを止めたところを第三隊の皆が歩きます。


「お、おい、そのシウは?」


 疑問に思うのは当然でしょう。魔獣なんてものを狩って連れてくるなんてことはギルドぐらいしかしません。それも依頼により、生態の研究のための捕獲というのが普通です。城に魔獣が連れてこられるということはまずないのです。


「なんかな、うまいって言うんだよ、うちのちび姫が」


 ゼノが半信半疑で答えれば、それを聞いた騎士達から頭がおかしいといった意見が飛び出ましたが、無視です。これは食べてから文句を言ってもらわねばなりませんよ。


「じゃあ、これは厨房に運んでおきます」


「塩で焼くだけでもおいしいですって言ってください。肉厚のステーキは半生でもいけますよ」


「「半生…」」


 皆怖がり過ぎです。でも、食べたことのないものに挑戦するのは勇気が入りますよね。そう思うと昔の人は何を思って様々な食べ物に手を出したのかと思ったりするのです。チャレンジャーです。

 

この世界での魔獣食はこの国が初めてになるかもですね。



______________


 難しい話は、私は参加させてもらえません。今回のレイナの持ち込んだ内乱の内容もレイナに聞いた少しだけしか情報はないのですが、依然羊達が言っていた東から逃げてきたという情報、あれが元のようですね。


 東の隣国で魔穴がいくつも見つかり、魔獣が増えたことで武器の輸入が増えたそうです。武器を持つのはある程度裕福な層の人間で、彼らは初め身を守るためにそれらを購入したのですが、やがて魔穴が国の上層部の者達の手によって生み出されたものだと騒ぎ立て始めたそうです。

 

 おかしな誤解はなぜか誰も正すことなく広がり、反乱という形をとったというのですが…。


「なんだかんだ言って魔穴が原因なのですね?」


 私は現在青竜隊の皆と一緒に腹筋中です。見た目は頭しか動いておりませんが、しっかりとお腹の辺りの筋肉が引き締まるので、いつかはこのお腹のお肉も消えるだろうと思います。たぶん。


「魔穴が原因って言っても、魔穴自体は珍しくないものなんだがなぁ」


 てっきり魔穴は時代の節目節目に現れては人々を苦しめる災害のようなものだと思っておりましたが、ゼノの話では違うようです。


「一年に数回、数個は魔穴が現れることはあるんだ。それらはすぐに消えて時々魔物を吐き出すぐらいだな」


「最近の魔穴と何か違うのですか?」


 騎士達がう~んと唸って魔穴の相違点を上げていきます。

 最近の魔穴からは不吉な風が出てくる。これはこの城の庭でも噴出したあの生ぬるい風のことでしょうね。あれを浴びて妙に脅えるようになった人々がいるのだそうです。


「低級な魔物でなく、中級以上の魔獣が出てくるな。その場合大抵は動物が呑み込まれているって話だが」


 これも城で経験済みですね。あの掃除機穴は確かに猫を飲み込もうとしていました。


「あとは、魔穴が塞がらないらしい」


「「塞がらない?」」


 皆が疑問を口にします。

 魔穴というものはパッと現れてパッと消えるのがいつもの魔穴、しかし、最近の不吉な魔穴は消えることなく存在するのだそうです。


「風を吐くのは止まるそうだが、噂では、毎晩毎晩女のすすり泣くような音がするんだと…」


 …なぜか、怪談じみてきましたよ?


「あ、俺は中から手が出てくるって」


「俺は引き込まれたって聞いたぜ? 風に吸い込まれるんじゃなくて、よくわからない何かに引っ張られたって」


 怪談ですね、魔穴云々(うんぬん)の存在がどこか脇にやられた感があります。これに何か手がかりありますかね? 


「俺のじーさんは昔、魔穴が目の前に現れた時、変な歌を聞いたって言ってたなぁ。で、なぜか魔穴がすぐに消えたって」


 歌…。魔穴を消せる魔法みたいな歌があるのかもしれませんね。ファンタジーですし、これは情報として脳内メモです。


 その後もなぜかよくわからない怪談話が続き、これと言った収穫にはならず、話が脇に逸れた頃、リオン君が食堂に集まるようにと声をかけに来てくれました。


 シウの試食会開催ですね! 

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