表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/95

52話 牛の反撃

ちょっと閑話的なのを… 

事件は毎日おきませんから!てことで

無事、とは言えないけれど、お披露目も終わり、暗殺事件も犯人は捜査中。パーティーの来客も(竜王様含む)帰ってしまい、現在はそれなりに平和な日々に戻ったようです。

 もちろん、私の牛柄化事件を除いては。


「ぶははははははは! モーウか! お前はモーウの子だったか!」


 青竜隊のもとで再び修行となった私ですが、さっそく副隊長ゼノに盛大に笑われ、リオン君の失笑を買い、隊の皆の必死に笑いをこらえる姿に爆発しました。


「レディーに失礼です! 皆そこになおるがよいです! お仕置きしてやります!」


 ビシビシと地面を指さして座るよう言えば、隊員達は同情するかのようにぽんぽんと頭を軽くたたいて私から離れていきました。

 許せません! 


 乙女と称してまだまだ子供と書く、しかしてその実態は!

 ちょびっと陰険に育った42歳のおばちゃまです。舐めるなよ、若僧め、です。


 鼻歌交じりに乗り込んだのは城の厨房。こう見えてもワタクシ料理は得意でしてよ? というほど得意ではないけれど、一人暮らし経験だってございます。料理は人並みにできますし、お菓子作りだって覚えてます。


 料理長さんに許可をもらって(監視付きで)クッキング開始です。

 作るものは簡単なクッキー。ただし、一部万能毒消しワカメちゃん入りでまいります(こっそり乾燥したのを持っていました)。

 題してロシアンクッキー。疲れた騎士団の面々に目に物見せてやるのです。


 ふははははははは~


 厨房に響く笑い声に料理長がびくっと脅え、料理人達がドン引きしたのは言うまでもない。



   ☆         ☆


「完成です~」


 ワカメ色を誤魔化すために、紅茶クッキーとチョコクッキーを作りました。材料はほとんど地球の物と同じだったので問題はないと思います。

 安全なものは興味津々な厨房の方たちにおすそ分けし、そのほかはわからないように混ぜてしまって袋わけします。

 

 一人一回はワカメクッキーに当たるよう配分しましたのでバッチリです。ついでにグレンとウィルシスの分も用意しました。こちらはノーマルです。


 私はクッキーの袋を籠に詰めてパタパタと飛びます。ちゃんと翼の特訓は続けてます。現在地上10センチです。


 訓練棟に戻り、ちょうど一時休憩に入った騎士達ににっこり爽やかに(竜だから表情はわかりにくいが)差し入れです。

 

「お、料理長の新作か?」


 ゼノがさっそく食いつきます。


「私が作りました~」


 どーだとばかりに胸を張り、袋を渡していきます。


「リーリア料理できるの?」


 リオン君が胡散臭そうに袋を見つめ、私は頷きます。


「最初にそう言いましたよ。アルノルドさんなら知ってます。あ、皆せーの、で食べてくださいね」


 全員に渡し終わり、ほくそ笑みながら「せーの」と声をかけると、皆一斉にクッキーを口に入れ…


「あ、うまい」


「「「「ぬごぅぅぅっぅぅ」」」」


 半数が当たりましたね。


「ざまーみろなのです。乙女を馬鹿にした罰なのです。でも、中には美味しいクッキーも入っているロシアンクッキーなので頑張って食べるがよいです~!」


 こういう遊び感覚的なものはいくつになっても面白いものですから、最初に当たった人も自棄になって食べていきます。もちろん次も当たったりしますがね。

 

 訓練棟の一角が男達の叫び声によって謎の一角と化している中、さわやかを振りまいてやってくるアルノルド隊長と、私の護衛を買って出ているウィルシス。保護者のグレンがやってまいりました。

 

 3人は定例報告会のようなものを終えたのでしょう、騒がしい一角に首を傾げつつ傍にやってきました。


「何の騒ぎだ?」


 見苦しいとばかりに睨むアルノルドに、ゼノが彼用の袋を手渡します。その顔色は少し青ざめており、口元を抑えていることから、どうやら連続大当たりだったようですね。


「グレンとウィルシスの分もあります。私が作ったのですよ」


 二人には安全なクッキーを上げます。


「へぇ、料理ができるんだ。リアはいいお嫁さんになるね」


 ウィルシスは一枚口に放り込んで咀嚼し、美味しいと肯きます。グレンも同様ですね。二人とも褒めてくれたので私は上機嫌に尻尾を揺らします。

 そして、アルノルドですが、彼はしばらくそれを眺めていた後、パクリといきました。


「うぐっ!」


 あ、当たりですね。おめでとうございます。


「美味しいのもありますよ。でも、アルノルドさんも今回はロシアンクッキー味わってもらいます。連帯責任で」


「何のだ?!」


 とばっちりと思っていらっしゃるようなので、ここははっきりしておきましょうね。


「もちろん私のモーウ柄を笑って乙女の心を傷つけた罰です! きっちり全部食べてもらいますからね! あ、グレンさんとウィルシスはノーマルですよ」


「その二人も食べるべきだろう?!」


 騎士達の視線が恨みがましげにグレンとウィルシスに向かいますが、私はに~っこり。


「二人は青竜隊じゃないですから~」


 うふふふふふふ~


 本当は、二人のお仕置きが怖いから~、なんて言いませんからね! 


 

リーリア「年をとると腹黒に磨きがかかるのです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ