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48話 猫!?

 本能が何かが来ると訴えていた。

 

 轟々(ごうごう)と吹き荒れる生暖かい風に騎士も兵士も顔をかばいながら何事かと風の先へと目を移し、そこに不自然に存在する点に目を瞬かせた。


 青々と茂る木々と、整えられた芝生、花が咲き誇る花壇を背景に、突如ぽつんと出現したのは黒い穴。

 不自然なその存在はまるで世界のそこだけ切り取ったかのようで不気味である。そして、風はその不気味な穴から吹いているのだ。


「「魔穴」」


 ウィルシスと周りの騎士の誰かが呟くと、はっとしたように兵士たちが動き出し、魔法で作ったらしい壁を風から身を守るように展開しました。


「まさか、あれはお前が?」


 ウィルシスが険しい表情で視線を向けたのはクロちゃんです。ですが、彼は答えません。


「クロちゃん、バケツってなんですか?」


「魔穴だ」


「え? だから、ばーけーつってなんですか~?」


 先ほどから皆さんバケツバケツ言ってますが、この世界のバケツってなんでしょうね? 

 唸る風に邪魔されて魔穴が聞き取れていない私に、クロちゃんの冷たい視線が刺さります。が、なぜクロちゃんが不機嫌に睨んでくるのかわかりません。


 私にも野生の本能がありますので、あれがすごく嫌~なものなのはわかるのですが、バケツと言われてもあのおなじみの姿しか思い浮かばないのです。

 あの穴を表現するならバケツでなくてブラックホールですよね? 


「その間抜けを離すな」


 悪口は風の唸りの中でも聞こえるのです! クロちゃん私を見て間抜け言いましたよ!? 


「わかった」


 ウィルシス、なぜ答えるのですか! わかったってなんですか! 断固抗議です、訴えます! 


 ムキャ~とウィルシスの腕の中で暴れる私にクロちゃんは呆れたような顔をしました。これは、さらにバカにされたような気がしますね。いや、気がするんじゃなくてバカにされましたよね? 


 ムカッとして文句を言おうかと口を開けた時、今度は風の唸りがピタッと止まります。

 

「何?」


 風は止まりましたが、穴は存在します。不気味な沈黙に背筋がぞくぞくした次の瞬間!


 ゴォォォ!


 激しい音と共に今度は穴がいろんなものを吸い込み始めました。まさにブラックホールです。

 

 

 私のまとめていた髪は大分暴れていたせいで崩れていたのですが、ついに飾りも何もかもとれて穴に吸い込まれてしまいました。

 

 後ろで結界を張っていた兵士や騎士達の脚がずずずっと前にずれていくほどの引きです。もしもこの場に猫がいたら、当然猫は宙を飛んで吸い込まれて…。


「ねこぉぉぉぉぉっ!?」


 ほんとに猫がいました。そして宙を飛んで「にゃ~!」と叫びながら穴に吸い込まれそうになっています。

 私は叫びと共に渾身の力でウィルシスの腕を逃れ、火事場の馬鹿力で全力ダッシュ。全力ジャンプを決め、猫を空中でキャッチ! そのまま風に乗って穴へと吸い込まれ…


 べちぃっ!


 吸い込まれずに詰まった!


「ほわぁぁぁぁっ、掃除機状態! 吸われるぅ!」


 猫をぎゅっと抱きしめ、穴を体で塞いでいるため、宙に張り付くというおかしな見た目。

 

 シュールだ、絶対今の姿はシュールだ…。


「へるぷみぃ~」


 ずぞぞぞぞぞ~と奇妙な音を立てて髪が掃除機穴、もといブラックホールに吸われてます。抜けたらどうしてくれる! 

 保奈時代も髪の少なさと細さに将来の分け目禿(はげ)を心配していたのだ、こんなのに吸われて毛根痛んだら大ピンチ!


「ふごぉぉぉっ」


 片手で猫を抱いたまま、片手で髪を頭の後ろ辺りでつかみ、頭皮にダメージがいかないよう必死です。

 そんな姿を見た兵士の張った壁が一瞬へにょりと歪みました。


「気を抜くな!」


 どこかにいるのでしょうアルノルドの声に壁が元に戻ります。


「気が抜けるな…」


 クロちゃんはそういうと、剣を抜き、穴の蓋をしている私の胸ぐらをつかむと、一気に引きはがして後ろへとふっ飛ばし、そのまま剣を穴の中心へと突き立てました。


 パキ…


 ガラスの割れたような音がして、気が付けば穴は消え、風もなくなり、後に残るのは転がった私ともがくにゃんこ。


「すまない。助けてくれてありがとう」


 駆け寄ってきて体勢のおかしな私を助けてくれたのは黒竜隊の隊長ヴァンさんですね。どうやら猫の飼い主のようで、猫を抱き上げて幸せそうにしてます。渋いお人ですが、猫好きなのですね。


「リーリア」


 剣を収めたクロちゃんがいつの間にか目の前に立っておりました。


「クロちゃんはあの穴を塞ぎに来たのですか?」


 たぶん、そうなんだと確信して聞きましたが、クロちゃんは相変わらず謎が好きな人のようです。


「お前はあれに近づくな」


 そういうなりふっと姿を消してしまい、私はムッとしながらも立ち上がります。

 クロちゃんが突然いなくなるのは今に始まったことじゃないですしね。

 それよりも、髪は無事ですかね? 


 握っていた手を放し、長い髪を確認した私は、その毛先を見て目を見開いた。


「毛先15センチィィィィ!」


 CMではありませんよ。痛んでいるのでもありませんよ。

 ただ…


 毛先が真っ黒に染まっておりました。 

シュール:表現や発想が非日常的・超現実的であるさま

だそうです 

でも、一般的に使う:奇抜なさま という感じにとらえてください。


と書いていて、よくわからんと悩む。その心はっ

日本語ややこしいねん! 

辞書ひくといろいろ間違っていて文字の直しが大変です。

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