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44話 最強です!

 この世界の貴族の食事は、基本フランス料理のような洒落た料理です。ですので、一品一品の量がとっても少ないのです。

 一般庶民はフランス料理で高いお金を出して思うわけです。量が少ないと。

 ですので、こういったビュッフェ式でタダで食べられる料理はきっちりがっつり食べさせていただきます。

 

 周りがドン引きしてますね。気にしません。おばちゃんは利益重視です。


 あぐあぐとご飯を頬張っていると、アルノルドが苦笑しながらナフキンをで口元を拭いてくれます。子供の手と口は大変食べにくい仕様になっておりますので、口周りは泥棒髭のような有様になっていますね。


「そんなによく入るね」


「も、まもひゅぶっ」


「うん、食べてから話してくれるかな?」


 食べてても、マンガみたいに言葉がわからなくなるなんてことありえないわ~と思ってたのですが、ぎっちり口の中に物が入ってると全くしゃべれませんでした。失礼。


「ゴックン。竜王様本日はお日柄も」


 公式の場ですのでここはきっちり竜王様とお呼びします。


「それはもういいよ。それより、もうちょっとお上品に食べようね。竜族の品格が問われるし」


 竜王セルヴァレートは少し困り顔で恥ずかしそうにしております。少々暴走しすぎたかもしれませんね。


「気を付けます。あ、竜王様もこれどうですか? 私のお勧めはこっちの」


 話が切れたと同時に私は食べたものの中からおすすめ料理を次々とセルヴァに進めます。セルヴァは苦笑するとじゃあ少しだけと勧められたものを食べ始めました。

 私に注意するはずです。その食べる姿が見た目は子供なのにどんな貴族よりも優雅です。


 私は感心しながら皿を一旦給仕に回るメイドさんに下げてもらい、飲み物を配るボーイさんからジュースをいただきました。と言っても、低く下げられたお盆から好きなものを選んで取っただけですが。


 コクリと飲めば、さわやかな甘さが広がります。


 ん? この味は…


 もう一度飲んでしっかりと味わうと、ぴきーんとひらめきました。

 これはギルドのアルバイト、キールのお爺ちゃんが城に納めていたであろうあの樽の中身です! 


 閉じ込められていたのが遠い昔のように思えますが、ついこの間ですね。あの樽は少し舐めましたが、美味しかったです。もちろんこのジュースもとっても美味しいのです。そして、なぜだかあの時のように少しふわふわしますね。




「リア、竜族は酔わないけど、その見た目でお酒は駄目だろう?」


 いつの間に近づいてきたのか、ウィルシスが私のジュースを奪おうとしたので逃げました。飲みきるまで死守です。


「これはジュースです」


「…竜王様、竜族って酔うの?」


 ウィルシスはよたたた~と歩く私を見て唖然とした表情でセルヴァに訊ねています。一方、セルヴァも私を見て目をまん丸くした後、お爺ちゃんズを呼ぶよう侍従に言づけています。


「竜族は酒が好きなものが多いが、その誰もが浴びるように飲んでも酔ったりはしないはずだ。竜の持つ浄化作用が強いせいだが」


 たたた~と空になったグラスをボーイさんに渡し、ちゃっかり二杯目をもらって(奪って)、一気飲みします。


「あっ! こら、リア!」


 ふわ~、よた~、スル~とウィルシスを避ける姿はまるで…そう、酔拳ですね! 現在私最強かもしれませんよ? 攻撃力は1ですけども。


「捕まえて御覧なさ~い」


「「「おぉっ、なんと、初めて見たのぅ、竜の酔っ払い」」」


 お爺ちゃんズがやってきてピタリとセリフを合わせました。お見事なので私は手を叩いてあげます。ぱちぱちぱち。ですが、その間ものらりくらりとウィルシスを避けております。

 

 業を煮やしたウィルシスは数人の騎士達に騒ぎにならない程度に私を捉える為に囲むことを提案し、私は包囲されました。


 逃げ場なし!


 なんて言うわけないじゃないですか。今の私最強ですよ。この世界に来て初めてのチート気分ですよ。

 いつもの私が聞いたら、「それはチートじゃなくて気分がでかくなってる酔っ払いです」というところですが、突っ込みはここにはいません! 


 アイ・アム・チート!


 キランと目を輝かせると、持っていたグラスを床に置き、周りを囲む騎士を見回して、ターゲットロックオンです。

 目標にされたのはいかにもお人よしそうな青年騎士。


「いじめちゃ嫌です」


 うるっと目を潤ませて小動物的愛らしさを前面に押し出せば、背後でウィルシスの殺気が膨れ上がりますが、それは無視。

 青年は「う」とか「あ」とか呟いて硬直しました。

 

 チャンスです。

 

 そのまま駆け寄り、その股の間をスライディングで抜けました。


「んっふっふ~。まだまだです」


 私はそのまま会場が大騒ぎになるのも無視して酔拳の動きとスライディングと、時々お姉さんのドレス中を通って悲鳴を上げさせつつ、騎士達を振り切って外へと飛び出すことに成功しました! 


 

 後から考えるととんでもないことをしたと気が付くのですが、この時の私は異世界で初めての勝利を味わっていたのでした。

酔っ払いリーリアお披露目で大暴走です。

お酒は二十歳から!

リーリア「42歳だからいいんですぅ~」

体が二十歳になってから!

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