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43話 パーティー開始

 町であの後たくさん遊んで~…とはなりませんでした。

 

 私もケインもご飯によるダメージで城に帰らざるを得なくなり、結局その日は動けませんでした。

 

 あ、ケインだけはなぜかその日に特訓をしたらしくて、翌日廊下ですれ違った時、ものすごいげっそりしてましたけどね? 

 騎士って体調の悪い時ほど激しい特訓をするものだってウィルシスが言ってましたがほんとですかね?? 


 ☆     ☆


 なんだかんだで今日はお披露目当日です。

 

 竜の姿でお披露目すると思っていましたので、のんびり構えておりましたら、昼頃にメイドが大挙して押し寄せてきて、丸洗いされ、香油を塗ったくられ、ネイルを磨かれ、ぐったりしているところにグレンがやってきて人型にされました。

 

 今回はグレンによる魔法なんですね、と目だけで申しました。疲れ過ぎて口は動かなかったのですから。


「ウィルシスは一応騎士団の長だからな、王についていなければならないんだ」


 一応が付くあたり怪しいのですが、ちゃんと仕事をしていたのですね。

 そんな失礼なことを考えている間にも髪はセットされ、衣装も着せられ、出来上がった姿を鏡で確認します。


 うん。馬子にも衣装! なんていうわけありません! お人形さんです! 美少女です! 自分じゃなきゃ盛大な拍手を送ります! 

 

 中身42歳の自分なので、冷静になると「サギだ~」と呟いてしまうのですがね。


 お披露目にあの小さな竜体では馬鹿にされるということで人型なのですが、筋肉痛はまだ治っていないし、慣れない人型で靴擦れ起こしているしでできれば竜体でのんびりしていたかった。あの姿が恋しいです。


 バン! 


「オマケッ、迎えに来ましたわよ!」


 ノックもなしにこれまた美少女が入室してきます。

 今日の主役アマーリアです。彼女は薄いピンクのドレスに着替え、髪の両サイドを少しだけ結んであとは後ろへ流しているというスタイルです。

 私は薄い紫のドレスです。お子ちゃま用ピンクは、アマーリアのピンクとかぶらないように避けられたお蔭で今回はちょっと落ち着きがあります。ですが、ひっつめた髪が苦しいです。飾りも重いです。


「誕生日おめでとうございますアマーリア。おまけですが頑張ります~」

 

 もうヘロヘロです。


「なんですの、まだくたばるには早いですわよっ。ほら、笑いなさいなっ」


 くたばるって、お姫様が使う言葉じゃない気がしますが…。


 様子を見ていたグレンが笑うと、そこで初めてグレンに気が付いたアマーリアの顔が真っ赤に染まり、彼女は慌てて目を逸らして私の手を掴みました。


「さ、エスコートの騎士もおりましてよ! 急いでっ」


 てっきりグレンに連れて行かれるのかと思っていた私は、部屋の外に連れ出され、そこで待っていたアルノルドの姿に魂が飛びました。


 騎士の正装、白の上衣とズボン、隊の色分けは中のシャツと制服の縁取りで分けられ、胸には沢山の徽章。それから金モールが付いて、まさに軍服といった感じです。それにマントを付けて手袋はめてお手をどうぞなんてされた日には…萌え死にます。

 

 すみません、いい年こいてますが、萌えは全年齢共通です。





 鼻を押さえながら何とか立ち直り、今はアルノルドの腕に抱えられながら会場入りです。

 

 城にこんなところあったんですねぇ、という大ホール。床は継ぎ目のわからない大理石ででき、(すべ)らないようにと大きな赤いじゅうたんが敷かれています。

 天井を見上げれば中央に巨大なシャンデリア。それから小さめのシャンデリアが外側に散らばり、淡い魔法の光が天井一面に描かれた天使の絵を照らし出しています。


 ホールの壁際には、いくつかビロードのソファがカーテンで隠されるようにして置かれ、休憩できるようになっているようです。

 巨大な窓からバルコニーへ出られるのはファンタジーのお城の基本ですね。たぶん。


「アルノルドさん。ご飯はいつ並ぶのですか?」


 私の目は、簡単な軽食が乗ったテーブルに行きます。まだパーティーは始まったばかりなので本格料理が並ぶのはこの後ですよね? 


「日が暮れてからになるな。先にあいさつがあるが大丈夫か?」


 日が暮れてからっ…。まだまだ先です。ドレスアップでお腹が空いていますっ。

 よほど私の表情が悲壮に満ちていたのでしょう、アルノルドが心配そうに顔を覗き込みました。


 眼福ですっ。こんな理想の王子様を目の前に腹減ったなんて、すでに言いましたけどもう言えませんっ。


「お任せください~」


 へにゃっとほほ笑んでおきました。


 猫を被るのと愛想笑いは日本人の得意とするものです! 




 なんてね、大見得切った自分を殴り倒してやりたいです。


 愛想笑いと猫かぶりは確かに得意です。ですが! それは一般市民用なのです。こんな王様お貴族様で満ち溢れた場所で、うふふ、おほほと上品に笑えるはずありません。あいさつの受け答えも、私の怪しい敬語では通じないと思いますよ! 


「本日はお日柄もよろしく、お会いできて光栄ですわ」


 もう、この怪しいご挨拶を全員に貫いてやりましたとも! 見ていた竜王セルヴァレートが、私のセリフが全て同じなのに気が付いて一番に吹き出しましたがねっ。


 その後、アマーリアへのお祝いの言葉が合ったり、私の紹介がされたり(お辞儀だけした)、王様の口上があったりとなかなか進まなかったけれど、ようやく会場内に楽団の音楽が流れ始め、あちこちであいさつが交わされ、人々が踊り始める頃、空は暮れてようやく待ちに待ったお食事が並べ始めたのでした。


 さぁ、食べるぞ~!

リーリアは平凡一般市民ですから、人脈を作る、味方を作る、なんて考えは思い浮かびません。

頭にあるのは美味しいご飯と美形観察です。

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