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40話 住み着いてます

 突然ですが、お仕置き続行のお知らせです…。


「なぜですか!? 昨日あんなに頑張りましたよ!?」

「人化解けちゃったし、昨日は長老にとられたから、今日こそお仕置きだね」


 が~んっ!


 痛む筋肉痛と戦いながら私はベッドの上を転がります。もちろんすぐにウィルシスに捕まりましたが。

 

 それにしても、竜って筋肉痛になるのですね。え? 私だけですか? そうですか…。

 再び人化で着替えさせられ、ぼやいたら、そう返されました。


「お仕置きの後は説教したいところだけどな」


 いつの間にいたのか、部屋の中にはグレンがいて、大変ありがたくないことを言ってくれちゃいましたよ? 私どこへ逃げたらいいですかね? 


「今日は声を封印しないのですか?」


 とにかく話を逸らそうと適当に口にしてみます。

 そう、今日は声が封印されていないのです。パッと見は珍しい白い髪に黄金色の瞳の美少女。しかしてその実態は、竜語しか話せない残念な子供。というのではないそうです。今日は真人間。真人間というのも言い方がおかしいですが。


「長老たちが昨日大興奮して腰を痛めたらしいから、今日は解禁。あの爺さん達に普通に話しかけるとさらに興奮しだしてそのうち歌でも歌わされるよ? それでもよかった?」


 尋ねられて私は首を思いっきり横へぶんぶんと振ります。

 そうだろう? とばかりに苦笑して、ウィルシスはグレンから何かを受け取っていました。


 グレンは私の視線に気が付いたようで、手招きするので寄ってみれば、ひょいっと抱き上げられてウィルシスの手元を見られるようにしてくれます。

 ウィルシスの手元にあるのは、何やらお金の入った袋と、丸められた羊皮紙。手紙のようですね。


「町でお遣い。デートじゃないのが残念だけど」

「二人じゃないのですか?」

「護衛が付く。他国からの客人がすでに入場を始めてるからね、念のためにつけられるんだ。こっちは総隊長だっていうのに迷惑な話だよ」


 ウィルシスは困ったような、呆れたような表情で笑い、グレンも苦笑した。

 そういわれれば騎士団で最も強い人だったと思いだし、信用されてないのかな?なんて思ってしまったけれど、それを口に出してお仕置きが延長するのだけは避けねばと口を閉ざしましたよ。

 

 そんなわけで、今日の護衛に黒竜隊の副長、金髪碧眼の少年ケインを連れて町へと出発です。





_______________________




 昼の町は夜とは大きく違い、活気に満ちておりました。

 

 私達は城から馬車を使って町へ降りたのですが、大通りまで来ると馬車の通る道の脇、日本で言うなら歩道に当たる部分には人が満ち溢れ、店の軒先に商品を並べる店からは、スーパーの魚屋さんのごとく大きな声があげられます。


 馬車を途中で降りて徒歩に変えた私達にも当然声は変えられ、私はあっちへふらふら、こっちへふらふらとウィルシスに強制抱っこされるまで店を冷かして回りました。


「店は後で、先にこれをギルドに届けないとね」


 そう、お使いというのは、ギルドへお仕事を依頼しに行くことなのです。

 内容までははっきりとは知りませんが、先日のベアウルフに関係した情報収集の依頼をするそうで、とにかく腕のいい人出がいるということなのです。もちろん騎士団も動いてはいるのですが、何分騎士は好き勝手にあちこちの国を出歩いたりはできないものです。ですので、身軽な冒険者に依頼をするのが一番いいのだそうです。


 そういって尋ねたギルドは、先日もお世話になったあの喫茶ギルドでした。


「キ~スッ」


 ウィルシスに降ろしてもらい、受付にアルバイトのキースを見つけて駆け寄りました。


「ええと、だれ?」


 あぁ、そうでした。今の私は人の姿。キースにしてみれば、見たこともない少女が自分んの名を呼びかけ寄ってくるという奇妙な光景になっていることでしょう。現に彼は考えるように首を傾げています。


「リーリアです。人の姿にしてもらいました」


 ジャジャ~ンと両手を広げてどうよどうよと迫ってみれば、ぽかんと口を開けたキースが、私を見た後、背後のウィルシスを見て、それからもう一度私を見ました。

 この動きは疑っておりますね?


「神竜の子供だったの!?」


 声高に叫べば、ギルド内の冒険者達の視線もなんだなんだと集まります。


「キース、神竜の子供ってグレン様の子かぁ~?」

「グレン様いつ奥さん貰ったんだよ」

「俺、グレン様が女に逃げられたって噂聞いたことあるぜ~?」


 ガハハハハ~と男達が笑い声をあげる中、キースは狼狽えながら男達を指さし、ついで「ごめん」と小さく謝ります。

 まぁ、グレンのいろんな噂は芸能人と同じで有名税みたいなものだと思いますので私は気にしません。たぶんグレンも気にしないでしょうしね。


「神竜じゃないですけどね。あの後ギルドはどうですか?」


「特に変わりはないよ。ベアウルフもいなくなったし、メーラの数も落ち着いた。今はちょっときな臭い東への警戒が高まったくらいかな。あ、メーラと言えば」


「ぶめぇ~『よんだ?』」


 うおうっ、突然ギルドカウンターから羊が出てまいりました! 

 くるりと巻いた角を持つもこもこ羊です。これで野生だそうなので驚きですね。確か地球でのもこもこ羊は改良されてああなったはずですが、ここでは野生でもこもこ羊なのだそうです。

 そうなると毛皮はどうするんだと気になりますが、毛皮は時々落ちているのだそうです。森やら道端やらに…。ちょっと怖いですがこれも異世界事情ということで。


「住み着いちゃったんだ。今はギルドのマスコットさ」

「めぇ」


 羊にドヤ顔されました。


 

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