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4話 最弱です

「竜族の父になった覚えはない」

 

 そうですよね~、なんでこんなトチ狂った質問になったのでしょう。

 じ~っと黄金色の綺麗な瞳に見つめられて、失敗のせいもありもじもじしてしまいます。


「古竜か」


 そう、子竜ですよ…。て、子竜?竜?!


『私竜ですか!?』

「珍しいがそうだな。となるとあれはお前の殻か」


 あれってなんでしょう?

 ぶら~んとぶら下げられたままその方向へと向きを変えられ、私が見たものは、彼よりも一回りは大きな鳥の頭を持つ…犬?

 ここはグリフォンとか言いたいですが、なぜか体はどう見ても大型犬に見えます長毛種です。ふっさふさ。グリフォンって体は獅子ですよね??

 と、まぁ、見るべきところはそこではなかったようで、無言の圧力を後ろ頭に感じ、そろそろと視線をその獣の周辺にむければ、足元には卵形の化石が落ちておりました。


『化石ですね』

 

どう見ても化石です。ちゃんと石のようになっております。割れてはいますが。


「フィーラが持ってきた時はゴミかと思ったが、そうか、古竜は化石からも生まれるか」


 美形は何やら一人で納得されたようです。


 

 ______



 彼に会って私、意外とパニックになっていたようです。彼が現在寝泊まりしている狩り小屋に案内されてようやく落ち着きました。

 狩り小屋は完全丸太小屋。内装はベッドと暖炉、ちょっと質のよさそうな蔦模様の赤い絨毯の上にイスとテーブルがあるだけの質素な部屋が一つ。大きさは12畳ぐらいでしょうか。

 私は絨毯の上にぽてりと座り、彼はドアの裏にあるフックに黒いマントをひっかけ、部屋の中央へと向かってきます。


 さて、例の頓珍漢な質問についてですが、私は生まれたばかりの子竜だから刷り込みで彼を父だと勘違いしたのだろうといわれました。

 野生の世界の鉄則ですね、初めて見たものは親!

 ということで、私は彼、名前は教えてもらえなかったので、おそらく黒(全身と髪の色で決定)エルフな彼をクロフさん(仮父)と呼ぶことにいたします。


「好きにしろ」


 OKでました。


『クロフさん、私竜なのですか?竜といえば最強ですよね?』

 

ファンタジーの生物でも竜好きの私は、魔法を操りブレスを吐き、全ての者を圧倒するあの優美な洋風の竜を思い浮かべてうっとり。


「本来は」


 本来以外ってなんでしょう。彼は剣を椅子のわきに立てかけ、パチリと指を鳴らして暖炉に火をともす。

 初めて見る魔法に私の目はキラキラと輝きます。


『私にもできますか?』


 なにが?て顔をされました。主語が抜けておりました。


『魔法ですっ』


 両手で拳を握ってわくわくと答えを待つと、彼は小さくため息をついて椅子に腰かけ、少し黙った後、期待大の私を見ました。


「お前の種族は魔法全般を跳ね返すが」


 おぉっ、攻撃魔法無効化ってやつですね?


「治癒も跳ね返すうえに、魔法は一切使えない」


 がが~ん 


 ショックのあまり私は膝をつきます。ついたら腹がつかえて前に転がりましたが…。

 いや、まだ希望は捨ててはいけません。竜というのは本来その攻撃力こそが最強なのです。


『体は丈夫で力が強いのですね?』

 

 とおっ、と起き上がって再び希望に目を輝かせれば、彼は手元にお茶を入れたコップを引き寄せ、それに口を付けた後、告げた。


「確かに並みの剣ではキズはつかんだろうが」

 

 鱗は剣をも跳ね返すってことですね!


「非力なうえに風邪もひく。伝説では兎にも負けたらしい。この世界で唯一生き残れなかった竜種だな」

 

 ずがが~ん

 

 床に埋まりました。

 兎に負ける竜って…


 どうやら私、食物連鎖生物ランキング底辺で生きる最弱竜のようです。

主人公 子竜と勘違い中

古竜が正解

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