37話 何の集まりでしょう?
人型になりましたーっ
でも、これはウィルシスの魔法補助によるものなので、制限があります。
前回人型にしてもらった時は一瞬でしたし、、ウィルシスの願望が魔力調整を変えたた為、本来の年齢より少し上の年齢設定で人型になったそうです。
今回は、一日このままなので、本来の年齢のまま、つまり、4・5歳くらいの子供の姿なのだそうです。早く大人になりたいですね。
そして、わざとつけられた制限があります。それは、「お仕置きなんだからこれぐらいはね」ということで、人語を封印されました。念話は可能ですので、一番初めの状態の人型バージョンということですかね。言葉を放つと竜の言葉になります。
『人型で何するのですか?』
そもそも、人型になったからと言ってお仕置きに結びつく気はしないのです。なにを持ってお仕置きとするかが問題で、この姿でないとできないことを強要されるはずですから、かなりびくびくしております。
「すぐにわかるよ。できれば連れていきたくないんだけどね」
どこに行くというのでしょう? 珍しくため息をついて憂い顔を見せるウィルシスに首を傾げながら、朝の支度を始めることになりました。
ウィルシスはベッドサイドの小さなテーブルの上にあるベルを鳴らし、その音が消えきる前に部屋のドアがノックされ、部屋の中にはぞろぞろとメイドさんが姿を現します。
「リアの支度を頼むよ。隣で待ってるから可愛くしておいで」
メイドさん達に支度を頼み、私に声をかけます。その際、チュッと頬にキスされ、ぷぅっと膨れ面を返す前に、彼は手を振りながら隣の部屋へと消えていきました。
あまり時間がないのかもしれません。メイド達も彼が部屋から出るなり
「お支度いたします」
と告げてすぐに4・5人が私を取り囲みました。
一人は盥に水を注ぎ、顔を洗うように告げ、一人はタオルを用意して洗ったばかりの顔を拭きにかかります。自分でできますと抗議しても、仕事ですからと訴えられてあえなく撃沈。これがお姫様扱いというやつでしょうか。ですが、ここには「自分でできます」「いいえ、私達が」なんて会話はありません。
仕事ですからの一言を無表情無感情で言われたら怖くて多くは口に出せませんともっ。
あの後もあれよあれよと急ぐように身支度は進み。恐ろしいほどふりふりのドレスが出てきたときは泣きが入りましたが、容赦なく着せ付けられ、気分はお人形さん。
最後に髪を耳横で二つに括られ、ツインテールとなって完成です。
姿見の前でくるりとまわってひきつった笑みを浮かべたのはご愛嬌。
確かに容姿は可愛いです。ですがっ、中身が42歳だとこう思うわけです。
大丈夫か私っ!?
なんだかすっかり疲れ切り、メイドさんに促されて隣の部屋に入れば、猫足のソファに寝そべっていた美形が飛び起きて駆け寄ってきました。
「人形みたいだね~」
ウィルシスはご満悦のようです。
フリルをふんだんに使ったドレスは淡いピンク色。女の子にはピンクのドレス、というのは異世界でも共通なのでしょうか。
そういえば最近の七五三はこういったドレスを着て写真を撮るのでしたね。私の七五三時代は自前の着物だった記憶がありますよ。ビバ普通。
「じゃあ行こうか。待たせるとうるさいしね。グレンががんばってはいるだろうけど」
やはりグレンには私と一緒に寝ていられない予定があったようです。だからと言ってウィルシスに預けるのもどうかと思いますが、ウィルシスは暴走さえしなければきっと?、たぶん?、おそらく?はいい人じゃないかなと思われます。
『どこに行くのですか?』
「グレンの部屋。朝一で押しかけてきてたからね。こっちは眠いっていうのに」
私が眠った後、城へ戻ってから眠りについたのならばまだ数時間しかたっていないはずです。グレンもウィルシスも、それに第三隊の青竜騎士団も本来なら眠っていたい時間でしょう。
よくよく見ればウィルシスの目の下にうっすらクマがあります。竜の血が入っていても睡眠は大事のようですね。
欠伸するウィルシスにつられて私まで欠伸すると、彼はふっと苦笑し、私の頭を撫でた後、グレンの部屋の扉をノックしました。
「入っていいぞ」
グレンの少し疲れたような低い声に応えて部屋に入れば、部屋の中にいた10人近い人が一斉にこちらを見ました。
突然のことに緊張が走ります。
部屋の中には、杖を突いた髭の長いよく似た雰囲気の老人が3名。彼等はコントのおじいちゃんのようにプルプルと震えております。大丈夫でしょうか?
それから子供が二人。一人は10才前後の黒髪黒目の美少年です。黒髪黒目が懐かしい感じがしますね。
もう一人は10歳前の女の子。金髪碧眼の緩やかに波打つ髪を持つ勝気そうな美少女です。
あとは国王様と、騎士ですね。色が白地に黒だったり緑だったり赤だったりするので、隊の違う騎士です。
もちろんアルノルドさんとゼノもその場にいました。
物々しい雰囲気ですが、一体何の集まりでしょう?
「リーリア、ここにいるのは、人にとっても竜にとっても災害クラスの神竜。竜族の長、竜王フェインベルクだ」
グレンが切り出し、指示したのは、三人の老人ではなく、にこやかにほほ笑む黒髪黒目の美少年でした。
だから、思わず聞いてしまったのは仕方ないと思います。
『中身は一番お年寄りですか?』
と。




