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27話 ギルドに行きました

「すごいね~。メイ、竜様に会ったのはじめてよ~」

「リーリアも子供に会ったのはじめてよ~」


 うふふ~、あはは~とツインテールの栗毛に青目(一番この世界に多い色だそうだ)の愛らしい少女、メイとの触れ合いを生温か~く見つめているのは、同じ色合いの髪と瞳をした青年だ。


 名前はキール。年は17歳。

 彼は竜族である私を警戒して自分の部屋に運び込み、そこで見張っていたのだが、子供の好奇心が警戒心を乗り越えて部屋のドアを突破し、目が覚めたばかりの私に飛びついておばちゃん顔負けの弾丸トーク。そして今に至るのである。


「リーリアはお城から来たの 。ジーちゃと一緒にメイのとこに来たの?」


「馬車同士がぶつかってですね、落ちた荷物を拾ってたら一緒に突っ込まれたんです。相手の人に」


 アクシデントですよ。わかってください。

 わたくし無害ですよと目でアピールしていたら、ウインク連打の間抜けさに呆れたのか、キールはようやく表情の強張りを解いてくれました。


「そういうことなら城の誰かに連絡しないといけないだろ。ギルドに連れてくよ」


「ギルド! 冒険者ギルドってやつですね!? キールさんは冒険者ですか!?」


 興奮してキラキラ目を輝かせ、こぶしを握ります。

 ファンタジーの定番。ギルド会員。(あこが)れます。


「おにーちゃんはアルバイトなの」

「そういうことは言わなくていいのっ。…ただの受付だよ」


「受付! あれですね、日々猛者達を相手に「ちょっとこの依頼も受けてくれよ、あんたならできるだろ?」とか言っちゃうあれですね!?」


 大興奮です。手足をバタバタふりふりしてこの興奮を伝えると、隣でメイもドタドタバタバタ。床がきしきし言い出したので危険です。


「どんな想像だよ。とにかく連れてくよ」


 受付と聞いてもキラキラと目を輝かせて見る私に、キールは照れ臭そうに笑いながら私を抱き上げます。


「メイもっ、メイもっ」


 メイちゃんも抱っこのアピールです。 

 メイちゃん可愛いです。


「だめ、もう夕方だし、暗くなるから家でお留守番」


 メイちゃんの顔が歪みます。これは泣く寸前です。大泣きする寸前ですよ!


「母さん! メイ頼んだ!」


 部屋のドアを開けて叫ぶなりキールは部屋を飛び出し、家の階段を駆け下り、そのまま玄関から飛出しました。

 後ろからはメイちゃんの追いかけてくる音と、階段途中で大泣きする声が聞こえてきますが、この世界、日が暮れると頼りは魔法の明かりかランプです。治安がどれほどよいかはわかりませんが危ないことに変わりはありませんので仕方ないでしょう。


 私達は夕刻のご飯の臭い漂う住宅街を抜け、商店街へと出ます。

 

 商店街はまだ人がいますね。店のいくつかは閉める準備をしていますが、酒場なんかはこれから開店のようです。道に出された看板のメニューが気になります。


(ホローナの蒸し焼き)


 描かれているのは魚なので魚料理ですかね。あとは・・・あまり難しい文字は読めません。まだ勉強中です。


「ギルドは商店街の近くなのですか?」

「そう。荒くれ者って言ってもいざという時に助かるから、問題が起きたりゴロツキが暴れたりしたときはギルドのメンバーが駆けつけてくれるようになってる」


 持ちつ持たれつですね。自警団もいるようですが、彼等も町の治安には一役買っているようです。


「魔道士ギルドは裏町にあるけどね。魔道士は静かなところで悪さをするやつをじわじわ絞めるのが好きな陰険な奴らばっかりさ」


 なんだか魔道士に偏見を持ちそうです。


「ほら、見えたよ」


 おぉ! あれが冒険者ギルド!・・・ギルド?


 商店街の一角に構える冒険者ギルドには確かに「ギルド」という文字が掲げられているのだが、なんというか、外観はファンシーショップです。

 なぜショーウィンドウがあるのでしょう? そしてなぜぬいぐるみが所狭しとそこに並べられているのでしょう??


 チリリンとベルを鳴らして店内(ギルドはお店?)に入れば中は喫茶店のようでした。

 

 丸テーブルにイスが四客。カウンター席もありますね。いろんな場所に体格のいい男達が座り、コーヒー、紅茶、クッキーにパフェと各々好きなように注文して食べています。


 男のための喫茶店?


「依頼カウンターは向こう。あそこの通信を使えば王城に連絡が取れるようになってるから」


 後はお迎えを待てばいいってことですね。


 喫茶カウンターとはまた違うカウンターへと近づけば、近くの壁にこれでもかとメモが張り出されています。これが依頼ですね。


「じゃあちょっと連絡入れてくるよ」


 カウンターの上にちょこんと置かれ、待っている間視線を感じます。まぁ、冒険者さんにとってもこのサイズの竜は珍しいのでしょうね。


 手を振ると、降り返してくれるノリのいい人達もいますね。あ、キールの連絡が終わったようで…。


 バン! りりんっ!


「誰か手を貸してくれ! ベアウルフだ!」


 扉を蹴破るように開き、仲間と思われる人を肩に担いだ男の叫びに、店内が騒然とします。


 …何か起きたようです。


 

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