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24話 仕事をゲットしよう

 王様のお名前は、リュシュルリュシュリシュ・セルニアというのだそうです。

 もちろん私には覚えられませんでした。というか、すでに誰も覚える気はないようです。

 

 何でも、先代の王様が最初につけたのはリュシリューだったのですが、王妃様が

 

「どうせなら呼ぶのが躊躇われるような面白い名がいいわ」


と一言。おかげで小さい時から「王子様」。王様になったら「国王様」「王様」「陛下」となったわけです。

 彼の友人達だけはリシュと愛称で呼んでくれるらしい。


 そんな名前にまつわるお話を聞いているのは王様の執務室。現在は仕事の手を止めて執務机の前にある来客用のテーブルセットに付いてお茶をごちそうになっています。

 付添はもちろんグレンママです(クロちゃんが父ですので、甲斐甲斐しいグレンが母です)。


「では、娘でなくて保護者ということでよいのだな?」


 グレンが頷きます。

 今日は私の立場を人間の貴族に明確にすることと、これからのことを相談するために来ました。


「人に変われぬ間は城で仕事…か。竜族相手に仕事をさせられるような相手がおるかのぅ?」


 御年62才。なぜだかまだまだ現役という国王様はひげをさすりながら天井を見上げます。


「騎士見習いになるとか、そういえば東の棟の改装工事に手が足りてなかったが」

「いや、普通の竜と同じに考えず、そのまま人間の子供と考えてくれ」

「? 子竜なら大の男くらいなら容易に投げ飛ばすのではないのか?」


 私とグレンはふるふると首を横に振ります。

 竜の子供は人間一人振り回すくらいはお茶の子さいさいなのが一般なのです。私の場合、振り回せるのはタオルぐらいですかね。役立つのはコンサート会場です(そんなものはありませんが)。


「筋力が足りんのなら鍛えてはどうだ?。欠陥があろうと竜だろう、すぐに強くなる」


 欠陥っっ…


 ずず~んと床に両手両膝をついて落ち込みます。


 ですが、ふと思い出しましたよ。そういえば私、ついつい最近、某DVDで「君ならやれるっ」「そうだ、いいぞっ」と、励まされながらダイエットのために体を鍛えていたではありませんか。

 そうですよ。鍛えることならできるはずですっ。できることからというのは基本の教えですっ。

 ガバリと起き上がり、少し広いスペースを確保します。


 確か…こう、膝をつま先より前に出さないように曲げて腰を落とし


 パンチ~ パンチ~

 

ピッ(ワン)キュッ(ツー)ピッ(スリー)キュ~ッ(フォー)」 


でもって、コンバットキックでしょ~

 

 短い脚を動かし、頑張って高めにキックを繰り出します。


キュアッ(せいやっ)キュアッ(ていやっ)


 国王様とグレンは、落ち込みから突然動き出した私を見て首を傾げております。


「あ~、あれは新種の踊りか?」


 グレンから見て、短い手足で繰り広げる軍隊式ダイエット法は新種の踊りに見えるようです。


「踊り子ならできるというアピールではないのか? あれはあれで妃達女子供に受けそうではあるが」


 短い手足で繰り出すパンチやキックに如何程の威力があるというのか、ということもあるが、それがキックやパンチと結びつかなくなっている二人は、新種の踊り?、が終わると盛大な拍手を送ることにした。


 お、これなら筋力もつくかもしれないぞという応援ですね?(素晴らしき曲解)


「じゃあ、騎士団の見習いになります」


 頑張って鍛えて見せます。とばかりに鼻息も荒くうむうむと肯きます。

 毎日の軍隊式ダイエットと、騎士団での雑用をこなせば、いつかは真の竜に近づける気がしますっ。

 

 目指せ筋肉ムキムキ真の竜。


「いやいやいやいや、まてまてまてまて。なぜそうなった?」

 

 グレンがとめるが最弱竜とは名ばかりの竜もどきからの脱出の為、というのは竜族の祖として言えるはずもありません。それに、すでに私の中では決定事項。

 応援もしてくれましたよね? 鍛える=騎士団入団ですよね?


 キラッキラッと目を輝かせて見つめ返せば、国王様とグレンが「うっ」と声を上げる。


「その、うむ、まぁ、できる範囲で騎士達のために働くということでどうかの?」


 明らかな足手まといは目に見えているが、ここは騎士に押し付けることで当面の危機を回避しよう。

 国王様の言外の言葉はグレンに伝わったようで、彼はコクリと肯いた。というか、肯かざるを得なかった。


 二人は、最弱竜とは名ばかりのおねだり最強竜に屈したのだった。


 

 お仕事ゲットしました~っ。


 


 

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