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2話 トカゲですか

これは勘だけど、私は死んだ…と思う。

 そう思った原因として、まず痛みがない。目を開けているのに世界が闇に閉ざされたまま。

 そして、息が苦しい…。

 

 息が苦しい!?


 いや、待て待て、息が苦しいってことはあれだ、私は生きてるってことだよね。でも、コンクリートダイブした人が息苦しいっておかしいでしょ。ハッ、ひょっとして今現在息が止まろうとしている瞬間ということだろうか。

 ここは火事場の馬鹿力だ。がんばれー、まけるなー、目を開けるのだー。呼吸を思い出せー。


 いささかやる気のない応援で自分を鼓舞しながら[彼女]は手を伸ばした。すると、指先にコツリと固いものがぶつかり、闇の中でその形状を確かめるようにペタペタと触れてみる。

 どうやら硬い何かに覆われているらしい。


 まさか…「か」から始まる箱にすでに入れられている!?


 息苦しい中声を出すのは酸素を奪う行為だから危険だ。よって、ここは実力行使いたします!。

 こぶしを握ってドカンドカンと周り中を叩いてみる。家族か親族、最悪火葬場とか葬式場の人間でも、そばにいれば気づいてくれるはず。そう思って必死にあちこち叩いていると、なぜか体がぐらりと回転したような感覚に襲われ、パキリと奇妙な音がした。


 闇の中に一筋の光が差し込む。


 棺桶に穴が!


 喜びもつかの間[彼女]を閉じ込めた何かはまるでエレベーターのようにふわりと持ち上がり、小指の爪の先くらいの穴からは轟々と風の音が響く。

 幸い息はできるようになった。が、それも微々たるものなのでちょっと油断すると酸素不足で気が遠くなりそうだ。

 

 最後の足掻きー!ふんぬぅぅぅぅぅ!


 両手足を使って大暴れ、なぜかお尻の方も変な感覚があってもぞもぞとしたけれども今はそれどころじゃない。

 全身で暴れた結果。パキリとお尻の方で音がして、[彼女]はお尻から落ちた。

 

『なんで落ちてるのぉぉぉぉ~』

 

 しかも目の前に広がるのは大パノラマ。青々と茂った森、広い草原。遠くに見えるのは雄大な山々。

 草原に見える点は動物かな~?なんて余裕ぶっこいてる場合ですか!

『ここはどこー!』

 私は誰~?と続けるべきだったか、しかし無情にも地面は・・というより森の木々は目の前に迫り、悲鳴を上げる間もなくバキバキと音を立て、枝をいくつか壊しながら地面へと到達した。

 

 ベチン!


 体の全面すべてで地面に激突したために顔を抑えて悶絶する。痛いのは体全体だけどね、なぜか顔を抑えてしまう。

 


 数分後

 

『なぜか生きてるよ…』

 痛みから立ち直った私は顔を抑えていた手をはずし…はずし…


 ん?


 首を傾げた。

 目の前で脳が命令したのと同じく、にぎにぎと手を開いたり閉じたりしているのは自分の手であるはずだ。その感覚もある。なのに、この手は白だ。つるりと滑らかな鱗に覆われた白い手と、腕と、足、と、全身。

 全身!?

 慌てて体を捻り捻り。

 

 隊長!尻尾があります!

 尻尾ってなんですか!


 一人ボケ突込みではパニックの度合いが大きくなるだけのようです。

 どうやら、私はトカゲになったようです・・・。

 

 これは夢ですよね!?

 

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