17話 「古」竜です
ピカピカになりました。ですが、心はヘロヘロになりました。
…いつかは恋人とキャッキャうふふと妄想したことはあれど、不意打ちすぎです。でも、興味はあるのです、思わずちらちらと…ごにょごにょ。
さぁ!綺麗になりましたので神竜様とご対面です!
アルノルドも動きやすい服から少し格式ばった詰襟のモールの付いた長衣とズボンに身を包んでいます。ベルトは上着の上から身に着ける形ですね。剣は外しました。それに鮮やかな青のマントを着ると格好良すぎですね。メロメロです。
部屋の扉がノックされ、これまた似たような衣装の(こちらは短衣)リオン君が顔を出しました。
「すぐにあってくださるそうです。それからウィルシス総隊長がすぐに報告に上がるようにとのことです」
知らぬ名前が出た時、アルノルドの眉が寄った気がしますが…気のせいですかね?
「先にグレン様に会う。剣は任せる」
「あ、はい。お預かりします」
剣はリオン君が持つようです。貴人に会うから武器は除けるということですね。
私は借りてきた猫のようにおとなしく、アルノルドの腕の中を定位置に納まりました。
謁見の間を使う、というほどの大事ではないので、謁見するのはグレン様の私室だそうです。そこへ向かう間、やけにアルノルドがピリピリしていましたが、私にもリオン君にも原因はわからず、とにかく黙っておりました。
部屋の前にたどり着くと、扉の前に立つメイドさんが心得たように扉を開いてお辞儀します。入っていいよってことですね。
生メイドさんに感動している間にアルノルドは扉をくぐってしまいました。
「セルニア王国騎士団第三隊 青竜騎士団隊長アルノルド・レンフォードです」
「ああ、堅苦しいのはいいから入ってこい」
声は部屋の奥の方から聞こえます。
どこにいるのかと首を巡らせば、大きな執務机の後ろで何やらごそごそと動く赤い髪の人がいるようです。
「何をされているんですか」
「アマーリアがガラス球を落としたって言うんで探してるんだが。ないな、まぁそのうち出てくるだろう」
「アマリーア王女ですか」
「そうだ、アーマリアだ。この間遊んでやったんだが、その時落としたらしい」
名前ののばすところがみんな違いますがどれが本当ですかね?
赤い髪の人は諦めたようで体を起こしました。
本当に見事な赤髪ですね、髪の長さは短くしているようですが。あ、目は蒼です。綺麗な蒼い目が驚きに見開いちゃっています。乾燥しますよ?
「アル!お前なんてものを抱いてやがる!」
突然の大声に私は驚いてびくりと体が跳ねます。
背後では剣を抱え、開いたままのドアの前にいるリオン君が目をまん丸くしており、ちらりと上を向けばアルノルドも驚いているような…いないような?
「訓練先で保護した子竜です」
「そうだ、それは古竜だぞ!?」
出ました、噛み合わない「こ」竜談義。
『子供の竜じゃなくて古い竜という意味なのです』
補足すれば、今度こそ驚きの表情で私を見下ろすアルノルドと目が合いました。
「古竜!?」
「わかってなかったのか!? リオン! ドア閉めろ!」
怒鳴り声にリオンは反応してすぐに扉の前のメイドを部屋から離れさせ、扉を閉めた。
聞いてはまずい話ということでしょうか? ですが、私にはこれといった能力はありませんよ? 竜なのに風邪をひけるくらいです。秘密にする必要があるのでしょうか?
グレン様は椅子にどさりと体を落とすと、ドキドキしている私の方を見て、ふかぁ~く息を吐き出した。
「くそじじい共に知られたらこの国に雪崩れ込んできそうだな…何ちゅー厄介なものを」
何やら雲行きが怪しくなってきました…?




