止まった時計【ツイッターお題】
ツイッター診断メーカーの中の「3つの恋のお題ったー」(http://shindanmaker.com/125562)から出されたお題で。
出されたのは「君の手を握り締めて」「朝になった、夢じゃなかった」「お前は俺のたったひとりの愛する人だから」
君をなくした、あの冬からもう半年も経った。最初の二ヶ月こそ塞ぎこんでいたけれど、今ではちゃんと出勤して元気に働いている。
周りの人たちも最初は気にかけていたけれど、今ではどんどん仕事を振ってくる。それもわたしにとってはありがたかった。
でも、それは表面上で、君がいないアパートに帰ってくるたびにわたしの心は傷ついた。
毎夜毎夜、酒で無理やり寝かしつける毎日。恋愛などもうしたくはない。愛する人を失うくらいならばもうしたくない。
今日もあなたとの思い出を思い返しながらビールを飲む。我ながら女々しいと嘲笑う。これも酒のあてには十分だ。
しかし、なぜだろう。今日に限ってはいっこうに眠くならない。多めに買ってきた5本をなくしてもだ。
仕方がない。買い足しに行くか。財布を片手にアパートを出ると、真夏だと言うのにやけに肌寒い。
一瞬、強い風が吹いて目を閉じて開くと、わたしは目を疑った。
「よっ」
街頭の下にいたのは愛する人の姿。お気に入りの腕時計をつけた手をあげて、わたしに笑いかけてくる。
わたしはすぐに駆け出して、君の手を握りしめて泣いた。自分でもわけが分からないくらいに、泣いた。
「お前は相変わらず泣き虫だなあ」
呆れたように笑ってわたしの頭を撫でた君は、とりあえず帰ろう。とわたしの手を引っ張った。
アパートに戻ると君はコーヒーを淹れてくれた。いつものちょっと薄いコーヒー。
これは夢なの?
「さあ、夢と言えば夢。現実と言えば現実」
ふざけないでよ。
「ごめんごめん。正直、俺もわからないんだけど、抽選?に当たったらしい」
抽選ってなんの?
「愛する人にもう一度だけ会える抽選らしい。ただし条件は相手も逢いたいと願っていることだってさ」
なにそれ。わけがわからないよ……
「やっと笑った。でも俺は悲しいよ」
え、なんで?せっかく逢えたのに……
「お前は俺のたったひとり愛する人だから。俺のせいでお前を不幸になんてしたくない」
不幸じゃない!わたしは不幸じゃないよ!
「嘘言うなよ。毎日酒飲んで寝てんだろ?」
台所に置かれたゴミ袋の山を見ながら君は言った。わたしはただ俯くしかなかった。
「恋をしろよ。忘れろなんて言わない。でも後ろを向かないでくれ。幸せを求めてくれ」
出来ないよっ!そんなことっ!君を忘れるなんて……!
「出来るさ。お前は強いから。さあ、寝よう。明日になれば前を向ける」
わたしを布団に寝かせて、君は手をわたしが眠るまで握ってくれた。その手はとても温かくて、不思議とわたしは眠たくなった。
わたしは夢を見た。いつもの生活。職場の忙しさがやけに現実味を帯びていた。そうだ、やっぱりさっきのは夢だったんだ。あんな夢みたいなこと…
気づいたらわたしは布団の中にいた。朝になった、夢じゃなかった。
枕のそばに置かれた君のお気に入りの腕時計が、昨日のことが現実であると教えてくれる。
うん。わかったよ。君がそういうならわたしは幸せになる。君よりもっといい人を見つけて、恋をしろって言ったことを後悔させてやる。
いつもより不思議と清々しい朝。わたしは君の腕時計をつけてアパートを出る。
止まってた時計は動き出す。
難しいですね、こういうのは……
本来はここに書くものだと思いますけど、一緒に入れてしまいました。