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死んだはずの最強騎士団長、6歳の天使に若返ったので休暇を満喫します ~目立ちたくないのに『死神級』の魔力で国を揺らしつつ、溺愛に息ができません~  作者: 九条 綾乃


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第4話 はじめてのおつかい(暗殺者ギルドの壊滅)

「いい、アル君? 外は怖いわ。悪い人がいっぱいいるの。だから、この『お姉ちゃん特製・魔力追跡機能付き銀の鈴』を肌身離さず持っていてね」


 カトリーヌが、俺の首に新しい首輪……もとい、装飾品を付けながら、今にも泣きそうな顔で言った。 正直、愛も魔力も重すぎる。

 ルーカスの共鳴のチョーカーと合わせて、二重に監視されることになる。大人気じゃねえか。


「だいじょうぶだよ、おねえちゃん! ボク、おいしいパン買ってくるね!」


 俺は天使のスマイルを振りまき、騎士団寮の「監獄(カトリーヌの部屋)」からの脱出に成功した。 目的は、ルーカスから活動資金という名の「小遣い」を毟り取り、束の間のニート生活を謳歌することだ。


 だが、下町の路地に入った瞬間、背後に三つの殺気を感じた。


(……やれやれ。俺のささやかな休暇を邪魔する奴は、どこのどいつだ?)


 背後で、黒いローブの男たちがニヤリと笑う。第一王子エドワードが放った、暗殺ギルド『黒い蛇』の構成員だ。


「へへ、運がいい。騎士団の『聖域』から、ターゲットのガキが一人で出てくるとはな」


「殺すのは簡単だが、エドワード殿下の命令は『生け捕り』だ。アルベルトの資産の場所を吐かせるための、最高の『人質』になるからな」


(なるほど。エドワードの狙いは、俺が死んで宙に浮いた「元団長の個人資産」か。どこまでも金に汚い野郎だ)


 男たちが麻袋を被せてくる。俺はわざとらしく「わあー、まっくらだよー!」と叫び、あえて抵抗せずに連れ去られた。 拠点を突き止めて、まとめて「事故」に遭わせる方が効率がいいからだ。



 連れてこられたのは、下町の外れにある「廃・製薬工場」を改造した秘密基地だった。そこは、エドワードが資金源にしている禁忌の麻薬『紅の涙』の製造拠点でもあった。室内には、抽出用の高濃度アルコールが詰まった大樽や、揮発性の高い薬品の瓶、そして作業員たちの「夜食」のための移動式調理コンロが乱雑に置かれていた。


「ひひひ、こいつが例のガキか。随分と可愛らしいじゃねぇか」


 リーダー格の男が、抽出用の劇薬が染み込んだ布を弄りながら、ナイフを俺の頬に近づける。


「まずは指の一本でも折って、資産の隠し場所を喋らせようぜ」


 俺は「あわわわ」と情けない声を出しながら、わざとらしく暴れて持っていた買い物袋をぶちまけた。


「わっ! パンが、バナナがぁー!」


 ここからが、元最強騎士団長による「力業の連鎖」の始まりだ。俺は指先に込めた魔力を弾丸のように放ち、床に落ちたバナナの皮をリーダーの足元へ「物理的」に弾き飛ばした。


「ぬおっ!?」


 皮を踏んだリーダーの足が、凄まじい勢いでスッ飛んだ。 その巨体は、放物線を描いて、夜食用に火がついていた「移動式コンロ」に向かって垂直にダイブする。


 ガチャンッ!!


 コンロが倒れ、赤々と燃える炭火が、床に散らばっていた「麻薬抽出用の揮発性薬品」に引火。一瞬で炎が燃え上がる。


「ぎゃああああ! 火が、火がぁぁ!」


 パニックになった三人目の男が俺を捕まえようとしたが、俺は「こわいよー!」と叫びながら、近くの壁に立てかけられていた古いハシゴの「脚」を、目にも止まらぬ速さの蹴りで粉砕した。


 ガタンッ!


 支えを失ったハシゴが男の首を絶妙な角度で叩き、そのまま男を跳ね飛ばす。勢い余った男は、天井から吊るされていた「麻薬運搬用の鉄輪」に首を引っ掛け、自らの体重で宙吊りになった。


「な、なんだこの偶然は!? こら、誰か火を消せ!」


 リーダーが叫ぶ。だが、彼が逃げようともがいた拍子に、俺が「足払い」で傾けておいた棚が崩落。その上には、乾燥途中の「粉末薬」の樽が並んでいた。


 空気中に舞い上がる膨大な量の可燃性粉末。そこに、燃え盛るコンロの火が重なる。俺は無垢な瞳でリーダーを見上げ、手に持った銀の鈴をチリンと鳴らした。


「おじさん、あそこ、煙が出て、赤くなってるよ?」


「え? ――あ、あぎゃああああ! 粉塵が!爆発するうぅ!!」


 ドゴォォォォォォンッ!!!


 高濃度アルコールと粉塵が連鎖的に誘爆。大爆発と共に、麻薬工場は跡形もなく吹き飛んだ。


 凄まじい衝撃波と火柱が工場を飲み込んだ。普通なら、中にいた六歳の子供など、影も残さず蒸発していてもおかしくない。


 だが、爆心地の瓦礫の中心で、俺は無傷で立っていた。爆発の直前、「死神」級の超密度魔力を全身に展開し、指向性のある魔力障壁を瞬時に構築したのだ。 全方位からの圧力を物理的に「受け流す」至高の防御技術。幼児化の前には、長い鍛錬と高度な魔力集中が必要だったこの技だが、今の俺には、たやすい仕事のようだ。


 だが、平然としていては正体がバレる。俺はわざと袖を焦がし、顔に煤を塗ると、工場の入り口付近の茂みへ移動して力なく倒れ込んだ。


「う……うわぁぁぁん! こわいよぉ、まっくらだよぉ……!」


 その直後。「アルくんんんんん!!!」


 魔力追跡で爆速で駆けつけたカトリーヌが、炎をも恐れぬ勢いで突っ込んできた。 彼女は俺を抱き上げると、生存を確認して絶叫した。


「ああ、神様……! 生きていてくれたのね! よかった、本当によかった……!」


 彼女の瞳には、安堵を通り越して、誘拐犯たちへの「この世の終わり」のような殺意が宿っている。 俺はその豊かな胸に顔を埋められながら、こっそりと親指を立てた。


(ふぅ。これで「可哀想な被害者」の完成だ。早くお菓子を食べながら、休暇を満喫したいなぁ)


 ――翌日の報告。


『王都の麻薬製造拠点、不慮の連鎖爆発により壊滅』。


 俺のニート生活を脅かす敵は、今日も「不運」によって消え去っていくのであった。

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