2人は、外に出る
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「朝まで、今の時代に不要なもの。それ、正解」
「は?」
「朝まで、今の時代に……」
「聞こえなかった訳じゃないのよ」
「それでは、語っていきましょう」
「やるとは一言も言ってない」
「しかしだね。やらないとも言っていない。違うかな?」
「じゃあやらない」
「何故?」
「逆に聞きたいんだけど、なんであたしがそれに乗ると?」
「だって暇じゃん」
「人間、暇だったらなんでも付き合うと思ってもらっちゃ困るわ」
「でも暇じゃん?」
「何?君、話が通じないタイプのモンスターだったっけ?」
「失礼な。話は通じますよ」
「なら話を聞きなさいよ」
「残念ながらその機能は私には付いてないね」
「尚タチが悪い」
「てな訳で、今の時代に不要なもの」
「話を聞かないモンスターめ……」
「二千円札」
「色んな方面から怒られそうなとこから行くんじゃないわよ」
「躊躇」
「今の時代限定じゃなくない?」
「テレビ」
「不要っていうか……使わないだけのような……」
「政治家」
「だから、それ怒られるでしょ」
「大丈夫。怒られたら全部秘書がやったことにすれば万事解決」
「もはや喧嘩を売りに行ってるからね、それ」
「買ってくれるような政治家が欲しい所ですな」
「今の時代、それこそ無理な話じゃない?」
「確かに。では正解は政治家ということで……?」
「駄目。それ絶対に駄目なやつ。てか、必要。絶対に必要なやつだから」
「必要だからといって、現れる訳じゃないって所が、ミソだよね」
「居るかもしれないじゃない。この時代を生き残っている、屈強な政治家が」
「それは、政治家というより、戦闘民族だと思うの」
「怒りによって覚醒するタイプ?」
「髪が金髪になって、逆立ったりね」
「確かに政治家ではないわね」
「はぁ、懐かしい。単行本、まだあるかな?」
「探せばどっかにはあるんじゃない?」
「探しに行くの、面倒でござーる」
「それについては同意するわ」
「と、言うわけで」
「どういう訳なの?」
「不要なものは、暇な時間」
「それなら、仕事しなさい」
「おーきーどーきー」
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「ぎぶみーちょこれーと」
「嫌よ。これ、最後に取っておいたやつなんだから」
「ぎぶみーちょこれーとぉ」
「そんな切なげな声出してもあげない。それなら、この間のコンビニ、また見てみる?」
「そこまでは求めてない。どっちかと言うと、チョコより構ってもらう方が主題でね」
「じゃあチョコは要らないのね」
「人間は欲深き生き物なのです」
「過ぎたる欲は身を滅ぼすってことを教えてあげる」
「後生だからよぉ〜。半分でいいから分けておくれよぉ〜」
「図々しいにも程がある」
「虎の子の、コンビニの前で拾った綺麗な石あげるからさぁ」
「小学生か。嫌よ」
「にゃにおう!?めっちゃ綺麗なんだぞ!?極彩色に瞬く超綺麗な石なんだぞぉ!?」
「知らないわよ。あたしが持ってても意味ないし」
「そんなことないね!意味ならあるさね!」
「もしそうだとしても、要らない」
「せめて何の意味があるか聞いてから判断して?」
「間に合ってまーす」
「相棒が冷た過ぎて凍死しそう」
「化物に食われて死ぬよりかマシじゃない?」
「前提として死にたくないでござる」
「それはそう」
「てな訳で、唯一無二の相棒を凍死させない為にも、ね?」
「うーん、チョコ美味しい」
「あ!食べた!勝手に食べちゃったね!」
「勝手も何も、あたしのチョコなんだけど」
「あーコレは凍死ですわ。悲しみに抱かれて寒死です」
「何さむしって」
「なんかマムシみたいで嫌だね」
「話題がころころ変わるなぁ」
「ころころ転がるのは得意だよ」
「あんまり無駄に転がると疲れちゃうわよ?」
「凍死しない為に身体を暖めてるんだもーん」
「じゃあ、これあげるわ」
「およ、ホッカイロじゃん。え、これ使えるの?」
「さぁ?試してないから分からないわ」
「見事に使用期限が過ぎてますねぇ」
「あら、そうだったの?残念ね」
「いけるかもしれない。試してみよう」
「チャレンジ精神旺盛ね」
「……ぬう?」
「どう?暖まりそう?」
「駄目だね。コレはもう使えないよ」
「あら、それじゃあやっぱり凍死しちゃうの?」
「誠に遺憾ながら、そうなるね」
「仕方ないわね……。ほら、半分でいいんでしょ?」
「およ?さっき食べたんじゃ?」
「さあ?綺麗な石が、チョコにでもなったんじゃない?」
「マジかよ。すげえな、綺麗な石。家宝にする」
「家宝にする価値があるか分からないけどね」
「うむ、家宝、美味しいです」
「食べちゃったの?家宝を?」
「私の生きる活力になったのです」
「そ?じゃあ、コレからも生きてけるかしら?」
「うん。元気に生きていけます」
「なら、コレからも宜しく」
「ほいさ。こちらこそ」
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「ねーぇ、ごめんて。許してちょんまげ」
「別に怒ってた訳じゃないけど、今ので許す気がなくなったわね」
「え、何故」
「理由が本気で分からないなら、これから喧嘩だけど」
「嘘です。すみません。ふざけました」
「そうね。コレからは時と場合を考えてふざけるのよ?」
「はいな。ごめんなさいです。今後は気を付けるよー」
「そうね。気を付けてくれると助かるわ」
「やー、ね。まさか寝過ごすとは思いもよらず。まだそんな機能が私に残っているとは。よもやよもや」
「まあ、平気よ。一日位なら」
「実際何とかなってるからすげえや」
「自分でもちょっと驚いてるわ」
「私も、行けるかな?」
「止めた方が良いんじゃない?……結構音が近くまで来てたし」
「だねー。結構壊されてるみたい」
「やっぱりそうよね……。はあ、心臓に悪かったわ」
「ごめんよー。ここは私が責任を取ってしっかり修復しとくからー」
「頼むわね。……修復箇所まで、一緒に行く?」
「んにゃ、近いからだいじょぶー」
「そ。なら、お願いするわ」
「ごろごろー」
「転がって行くんだ……」
「転がるのは得意ですけん」
「得意気に言われてもね……」
「特異な特技を得意気に誇るのです」
「何それ?言葉遊び?」
「遊びは常に必要だよー」
「それこそ、時と場合によるんじゃない?」
「遊ぶ為にそんなもんを考慮する大人にだけはなりたくないね」
「それを考慮するのが大人って気もするけど」
「そうか。ならネバーランドの住人になろう」
「あるといいわねぇ……」
「感じるぜ……だんだん面倒になってツッコミを放棄する相棒の気配を……」
「それを断言する所を見るに、やっぱり大人じゃないわね。君は」
「そう言うおんしは大人かや?」
「さあね。自分の面倒も自分でみれないし、まだ子供なんじゃない?」
「じゃあ、私もまだ子供だ」
「なら、あたし達は、ずっと子供のままかもね」
「そうかな?」
「そうじゃない?」
「……まあ、生きていれば、その内年齢的には大人になるもんでない?」
「そうね。生きていれば」
「だからさ」
「なぁに?」
「二人で一緒に大人になろうぜ?」
「……え〜」
「何でちょっと嫌そうなの!?」
——————
「緊急会議です!モノども、集えい!」
「共?」
「モノよ!集えい!」
「あたしはモノじゃないので、集いません」
「文脈的には者が正しいのであってだね!?」
「ああ……悪かったわよ。謝るから、べたべた触らないで」
「冷たい!ねえ!凍傷になりそうだよ!?」
「はいはい。ホッカイロあげるから」
「それ期限切れであったかくならないやつ!」
「その熱いテンションがあれば乗り切れるわよ」
「このテンションで物理的な温度は上がりません!」
「じゃあ物理的に体温が上がるように、転がしてあげましょうか?」
「何それちょっと楽しそう」
「よーし、じゃあ行くわよー」
「何で足を振りかぶるのかな?」
「蹴り転がそうかと」
「それ、転がるのかなぁ?」
「さてね?試してみましょ?」
「それは会議の後にしてもろて」
「試すのは吝かじゃないの?」
「違うよ。有耶無耶にしようとしてるだけだよ」
「成る程ね。では、議題はなにかしら?」
「へい。重大な議題です」
「その謳い文句で、本当に重大だった記憶がないわ」
「今回は本当に重大だぞぉ?」
「オオカミ少年って知ってる?」
「ワタシ、ショウネン、チガウ。つまり関係ない。QED完了」
「重要なのはそこじゃなくてね……」
「そうさ!重要なのはその会議の内容なのさ!」
「力技ねぇ……」
「そう、私達は、外の世界に出発するのだ!」
「…………」
「うえ?どしたよ、相棒。急に黙りこくって」
「本当に重大な内容だったことに驚きを隠せなくて……」
「そっちかね!?」
「あたしとしては、どんなくだらないことを言うのかと、足を振り上げて待っていたのだけれど……」
「それは有耶無耶にしたじゃん?」
「君の中では、そうなのね?」
「それは共通認識。あーゆーおーけー?」
「No, I don't」
「ノリが良いのか悪いのか!?」
「悪くはないんじゃない?」
「何が!?ノリが!?」
「それは分からないけど……外に出るんでしょ?」
「ノリが良いね!その通りです」
「最近は食料の確保も厳しくなって来たしね」
「それも理由の一つ」
「それ以外の理由は?」
「なんか、ノリで」
「1人で外に行って来て。どうぞ?」
「相棒!?私達相棒だろ!?」
「……それで、現実問題、あたし達2人だと、移動速度がネックになると思うんだけど」
「私は歩けないからね!見捨てないで!相棒!」
「あたしは目が見えないんだから、お互い様ね」
「こんな怪物が闊歩する今の時代じゃ、1人になった瞬間終わりだね!私達!」
「よくもまあ……こんな滅びた世界で、2人で生き残れたものね」
「そこはほら、日頃の行い?」
「疑問系じゃないのよ?」
「いやぁ……生き残る為とは言え?怪物をぱーんしてるから、ちょっと……」
「そこは正当防衛でいいんじゃない?」
「……で、あるか」
「そ。……で、外に出て何をするの?」
「他の生存者でも探す?」
「ああ……戦闘民族な政治家?」
「現実に存在したら是非ともお会いしたい所ではある」
「後は……そうね。あたし達の身体を治す技術とか探す?」
「何それ熱い」
「相手は日本を一ヶ月で滅ぼす連中なんだから、そんな技術があってもおかしくはないんじゃない?」
「いいね。夢が広がリング」
「そうね。夢が広がるわ。……だ、だから、よ?」
「うえい?何?恥ずかしそうにして」
「うるさいわね……ちょっと、お口にチャック」
「うす?」
「だ……だから、一緒に大人になるってのも、不可能じゃ、ないのかもね?相棒?」
「…………相棒ぉ」
「もう……泣きそうな声出すんじゃないの」
「泣いてるよ!相棒の愛に触れて、感動で涙ちょちょぎれてる!」
「嘘くさい」
「嘘やん?こんな感動の展開の後に、そんなバッサリ切り捨てることある?」
「うるさいわね……さ、そうと決まれば、早速準備をして出発しましょ」
「おうよ。足は頼むぜ、相棒」
「ええ。目は任せたわ、相棒」




