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ファミリアの旅路

スワンとアセロラの追憶

作者: Aster/蝦夷菊

 昔から周りと違った見た目で、友達も居ないから雪山の頂上で過ごしていた。今思えば、あの極寒な地に少女が一人────なんて、雪女か何かと思われるだろう。

 私は氷雪の王と共に居たけれど、災厄を止める為に命を使った彼に、私は酷く心を揺さぶられた。


 私はどうすればよかったのだろう。アセリア、貴女は何を思っていたの?

 どうすれば、今からでも貴女を連れ戻すことができるの?


 私は何もできない、弱いアルブス・グラキエスのままで居たくない。祝福を与えたあの子は勇敢に貴女を、そして私達を助けてくれた。だからこそ、私は今度こそみんなの役に立ちたいの。

 吹雪の中、私は貴女たちの笑顔を浮かべていた。それに心を支えられて、最期まで諦めることなく、貴女に託せた。


 諦めないで。自己犠牲なんて、間違っている。貴女の懸命に家族を思う気持ちに、自らの容姿も何も含まずに、純粋な心で私達と共に歩を進めた勇敢さに、嘘なんてこれっぽっちもなかったのでしょう。


 どこまでも透き通ってくれる氷塊で、貴女の強張った心の殻にヒビを入れ、差し出した手を無理矢理にでも取らせるから。



 ※ ※ ※


 赤星の双眸は忌み嫌われて、一人雪山に捨てられた日のことは良く覚えている。大きな狼に何故か懐かれて、いつも狼の居たあの木から出てきた彼女を、俺は最初雪女だと思った。北の魔女は、村のものが畏怖しているようなものと同じとは到底思えなかった。

 仲良くなり、やがて魔女に危機が近付くと、俺は血を継承するよう求められた。それも頼むとは言えないような、優しい言葉の羅列を聞かされ、今までの関係を考えれば拒否することなど無理なものだった。


 俺はいつしか、聖獣である氷雪の王が二代目に移り、その狼が前に出なくなっても気にしないようになった。視線はいつでも止むことのない雪に向けられていて、白い毛並みを靡かせるあの子の姿は、その白さに埋もれて消える。

 分かっていた。


 アセリア、貴女はどうして、弟を抱きしめもせずに目の前から消える? 寂しさは良く知っているはずで、貴女達姉弟はお互いにお互いを理解できる唯一の存在であることを忘れないで欲しい。思い出してほしい。

 あぁ、星の光は空で垂れ落ちるとき、人の願いを叶えるもので。それならば、俺の願いを聞き届けてはくれないか。


 分かっていたのだ。いずれ、魔女は死するべきであり、東の魔女の言っていた世界が作り物という考えが真実であると。

 それでも諦めきれないのだ。貴女の優しさを、無かったことにはしたくないのだ。


 置いて行かれる気持ちを知っている。私は貴女を連れ戻す。貴女が、一番を変え存在を霧と共に消さぬ限りは、その意志は消えない。



 ※ ※ ※


 スワンはカクテル、アセロラは焚火モチーフのキャラクターです。

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