ファッションショー
「なんでいつも同じ格好なの?」
イブの質問に回路がフリーズした
言っている意味が分からない
外装は特殊ファイバーだから服が必要ない
作業をする時だけ保護のために青い作業着を着る
「動きやすく効率的で耐摩耗性などもすぐれてい――」
「つまりダサいってことだね!」
「違います」
イブは指をぴっと立てエイドの口を塞いだ
「というわけで今日は『改造ファッションショー』の日です!」
イブが生地を選び、服や適当なシートの切れ端を組み合わせていく
周りには清掃ロボがミシン役になり高速裁縫、妙に手馴れている
「まずは妖艶ドレス!」
「保護面積減少、実用性が無い」
「見た目重視だからね」
「作業用ワンピ!」
「動作制限、足がからまる」
「可愛いは我慢だって言ってた」
「誰が」
「正統派の白衣スタイル」
「……これは、悪くない」
次にいこうとしてたイブがぽかんとする
「え、ほんと」
「研究員が好んで着ていた――彼女は冷静で聡明、私も近づけるだろうか」
イブが穏やかに微笑む
「エイドはエイドのままで良いんだよ」
そして――
「もうひとつだけ、どうしても着てほしい服が」
「うさぎの着ぐるみ!」
「拒否する」
「お願い!ちょっとだけ!耳だけでも!」
「……3分までなら」
カシャ、カシャ、カシャ
イブの瞳がまばたきを繰り返し、保存領域にエイドうさぎが大量に増えていく
「清掃ロボにも見せて回ろう」
「それは許可してない」
「大丈夫、かわいく加工もするから」
「……まったく意味がわからない」
文句を言いながらも、この感じは悪くない
イブが笑っている
今日はいつもよりずっと、まぶしく見えた
――
そっと白衣に袖を通してから言う
「次はあなたの番 おそろいの服を着るべきでは?」
イブの目がまんまるになる
「えっ、私も……?」
「お揃いを着ると親和性が増すらしいとデータにある」
イブの顔が赤くなっていった
夕暮れの部屋、ふたりは白衣でじゃれ合う
前人類的に言うと「コスプレパーティー」と言うらしい