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「おーおー、フィー。 今日もやってるなぁ」

「ギリアムか。 悪いかよ」

「悪くはねぇさ、力がなきゃ生き残れない世の中だ」



拳に力を込め目標の頭部を打ち砕く。



「まぁいい、もうカタが付いた」

「にしても凄惨過ぎだろ。 どうすんだよこれ?」

「気にすんな、この村はもう死んでた。 助けようと思ってた人間もな」



いや、死んでない村なんていくら残ってるんだか。




少し昔大きな戦いが起きた、そして分明は滅び国も滅び秩序のない世界だけが残った。 所謂終末戦争だ。 生き残った人々はその日を暮すのに精一杯、復興の兆しはまだ遥か先のことだ。



何故ならその終末戦争を引き起こしたのが当時確認されたことのない正にモンスターと言っても過言ではない生物だった。 総人類よりも遥かに多い数のモンスターはある日突然現れ人間を根こそぎ葬り去るように暴れ破壊の限りを尽くした。



しかし人類もただ殺されるのを待つだけではなかった、突如限られた人類限定だが謎の力が発現してそれはモンスターを殺せる力だった。 劣勢ながらも力を持った人類はモンスターを狩った。 いつしか押し返し互いの戦力は拮抗状態となるが彼らの知らないところで散発的にモンスターに人間が殺されて数を減らされていった。



人類には最早力を持った人間以外何も残されていないも同然だった。 国もない、秩序もない、まるで原始に戻ったかのような無秩序な世界が広がっていた。



そして人間の醜い本性は窮地に立たされていながら尚も発揮される。 決してわかりあうことの出来ない愚かさは戦争中でありながら同じ人類を力を持った人間とそうじゃない人間の差別が横行していき更に数を減らす。 しかし今の段階でそれはマズいとどちらも一旦争いから手を引き力を持った人間は人類救済、人は絶対に殺さないという名目をかざして関係は多少は良くなった。




モンスターの身体を最後に踏み付け俺はギリアムの後に続いた。



ギリアム…… ギルフォードは俺と同じ力を与えられた人間だ。



この世からモンスターが消えればきっと世界は元の通りにいつかは戻るはず。 それは俺達が死んだ後になるかもしれないが。



「フィー、そんな棒切れで戦うよりどっかでまともな剣でも拾ってきたらどうだ?」

「それでもいいけどな。 でもどこにそんなもん落ちてるよ? あったとしてもナマクラだけだ、そこらの棒切れと大して変わらない」

「まぁそれもそうか」



ギリアムは拾った槍をクルクルと回しながら言った。 奴の槍は立派な槍だ、モンスターを討伐していてたまたま見つけた上物そうな槍、ギリアムはそれを気に入り好んで戦闘に使っていた。




ん? 少し先、南西の方角にモンスターの群れが見えるな。




「どうする?」

「行くに決まってんだろ。 さっきはフィーが粗方片付けちまったから俺は暴れ足りねぇし」

「わかった、じゃあ俺はゆっくり観戦でもさせてもらうか」

「よっしゃ! モンスターもぶち殺せて一石二鳥だ」




南西に向かうと大群が見えた。 数百のモンスターが居る、俺がさっき殺しまわった数よりも圧倒的だ。



「ギリアム」

「ああ、血が騒いできた」

「マジかよ、死ぬぞお前?」

「はッ、ボケたかフィー? あれくらいじゃなきゃつまらん」

「そうか、骨は拾ってやる」



俺は高台に避難して見守る事にした、まぁ俺はギリアムがやられると思ってないがな。



「すげぇなあいつ。 いろんなモンスター混じってんのに片っ端から片付けてやがる」



モンスターは段々と数を減らしていく、ギリアムが全く寄せ付けない、しかしモンスターの数も多いから少し手こずっている。



「グオオオオッ!!」

「ん?」



大群から俺に向かって1匹突っ込んできた、見るからにこの大群のリーダーっぽい奴だ。 



「なんでこっちに来た?」

「グルルルッ」



あー、高みの見物してたからかもしれない。 確かこれの個体名は…… カロッゾだったっけ? 高位とはまではいかないが中堅クラスのモンスターだ。



「まぁいいか、ギリアムも忙しいし相手してやるよ」

「あッ、フィーずりぃぞ! ってどわああッ」

「よそ見してんなよ、いくらお前でもその数はキツいだろ」

「て、てめ、このやろ!」

「こいつは俺がやる」




雄叫びをあげカロッゾの巨体を俺目掛ける、俺は動かない。




「来いッ!!」

「グオオオオッ!」




巨拳が俺に振り下ろされるが……




「それがどうした!?」

「グギャッ?!」




頭突きで逆にカロッゾの手を破壊した。




「てめぇに俺が傷付けられると思うなよ? そして覚悟しろ、俺を狙ったことを後悔させてやる」




…… カロッゾは既に動かない、絶命したようだ。 俺は無傷だけどな、あっちではまだギリアムの戦闘が続いているが大分数を減らしている、あれなら奴1人で押し切れるだろう。




「ん?」




ギリアムのモンスタの群れから何か弾き飛ばされて俺の方に飛んできた。




「やれやれ、また1匹追加か? え? は?」




目を疑った、飛んで来たのは小さな女の子だったからだ。




「マズい、あの高さからだと死ぬッ!」




俺は急いで落下地点に行きその少女をキャッチした。 こんなところに子供が居るということはモンスターに攫われたか? この乱戦でギリアムが気付かないのも仕方ないがそれにしてもなんで飛ばされた?




「ん、んんッ……」




少女が俺の腕の中で目を覚ました、その時俺は気付いた。




こいつは人間ではないと。 金色の瞳を持つ彼女の目には人間とは違う魔力を放っていた。




「ちッ!」

「ふぎゃッ!!?」




俺は彼女を放り捨て構えた。 人間に擬態するモンスターだったとは。 危うく騙されるところだったが俺のところに飛んで来たのが運の尽きだったな。




「ほら、どうした? こいよ」

「…… え?」




おどおどしていて掛かってこない、こちらを油断させているつもりか? 力押しするよりも絡め手を学んだのか敵は? しかし埒があかない、多少の攻撃は俺には通じない、ならばこちらから攻めさせてもらう。




「正体はよくわからんが得体が知れない危険な相手だ、ここで始末させてもらうぞ」

「きゃあああああああッ!!」




まるで人間の様な悲鳴に俺の拳は彼女から大きく標的を外してしまう。




いかん、つい無防備な少女に見えてしまって攻撃をそらしてしまった。 次はそうはいかない!




「ひッ……」

「ぐッ…… いい加減そのか弱いフリをやめたらどうだ? 多少抵抗した方が勝機を導き出せるかもしれんぞ?」




と言ってみたが彼女に抵抗する意思が本当にないのかもしれない。 もし騙し討ちのつもりならもうアクションを起こしていても不思議じゃない、寧ろ遅過ぎるくらいだ。 俺が少女だからと攻撃をする瞬間が最大の好機だったはずなのだが。




しかし相手は人間の子供の姿をしているが実際にはモンスター、モンスターはこの世にいてはいけない。 俺はそのモンスターを狩るための存在だ、しかし……




「ま、まさか……」

「??」




突然変異?! 人間がモンスターによって変異しモンスター特有の魔力を身に付けたとしてら? そんな話は聞いたこともないがそういうこともありえるのでは? いやいや、そんな強引な推論を立ててどうする俺? だがモンスターがここまで敵意を見せないということがあるだろうか? 




「おーいフィー、終わったぞー。 いやぁ、流石に少し疲れちまったぜ。 ん? 誰だその子?」




ギリアムはその子を覗き込むとすぐに異変を察知して戦闘態勢をとった。




「フィー! そいつは人間じゃないッ!」

「そうだな」

「そうだなって…… わかってて何してんだよ? こんなのは今まで見たことがない、危険な気がする。 俺が始末する」




彼女は凄むギリアムを見て酷く怯え何故か俺の後ろに隠れる。




「お、お前…… なんで俺の後ろに隠れる?」

「こ、怖い……」

「喋っただと?! モンスターのくせに人の言葉まで……」




俺もビックリしたがここまで人間の見た目だと喋れても違和感はない。 だがそれでギリアムは更に警戒心を強めた。



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