〜理由〜
「………。」
ジリッと靴底で地面を擦る音が響く。
ー大丈夫。大丈夫だ。所詮内山と大して変わらないレベルのハズ…。
なのに…この不安感は何だ?
「…どうした?俺と同じような不良は、その自慢の拳でねじ伏せてきたんだろ?」
古川が俺を煽る。
ーそうだ。
俺は、気に入らない奴を、この手でねじ伏せてきた。
『気に入らない奴』を……。
…こいつは…。
…こいつは、俺の『気に入らない奴』か…??
拳が動かない。
いや、身体すら動けない。
一歩も。呼吸さえをもしているのか、分からない。
時間がまるで止まっているような感覚。
急に目の前が動いた。
気がつくと、俺は古川に吹っ飛ばされていた。
「…っ痛……。」
「…。つまんねぇなぁ。予想してたのと全然違う。」
「……な…!?」
「本気を見せろよ。内山吹っ飛ばしたときと同じヤツをよォ。」
ー理由ができた。
俺は今、古川に殴られた。
これで、俺には古川を殴る『理由』ができた。
もう迷わない。
旋風のような蹴りを古川に極める。
今までで極めた中で、一番上手く、力強く入った蹴りだった。
「……気に入らねえ。」
「……それそれ。『気に入らねえ。』…か。いいねえ。ケホッ。」
「!?」
「いやぁ、今のはマズかった。流石の俺も、…痛てて…。今のは効いたぜぇ?」
…どういうことだ。入ったハズだ。
今の威力なら吹っ飛ばせるくらいの勢いなのに、古川は少し後退しただけ。
そしてなにより……今のは『殺せる蹴り』だった。
自分で一瞬、ヒヤリとしたほどだ。
それが…。
「ま、本気になってくれたのならいいや。俺も行くぜ?」
古川が体制を立て直す。
古川のパンチやキックは、内山よりヘタクソで、そこらの不良と変わりない。
ダイヤモンドの筋肉でも、持ってんのか?
…にしても身体はスッキリしてるし、ゴリマッチョ系じゃないことは確かだ。
俺はヘタクソなパンチキック等をすべてかわし、
角に追い込まれた所で腹に目がけて中段突きを炸裂させた。
……何が起こった。
身体中に痛みが走る。
俺が古川に攻撃を入れたハズなのに…なんで俺が食らってる?
・・・・・・・
カウンター返しでもしたのか?アイツ…。
「大体分かった。お前…空手家だろう??」
ケロッとした表情で、俺に向かって古川は呟いた。
瞬 :シリアスなシーンにつき、後書きコメディは少々控えさせていただきますね。
拓 :シリアスシーンが終わるまでは勘弁したって下さい!!
信 :…………これ、後書きコメディじゃないの?
瞬&拓:……あ。