〜高望み〜
「ほ…本当に良いのね??」
生徒会長は顔を真っ赤にしてうつむいている。
付き合うと決めた次の日の朝、偶然にも再び家の前で鉢合わせしたので
俺は照れくさいながらも自分の答えを告げた。
「わ…私……山元くんモテるから……いっぱい告白とかされてたし…。
絶対フラれると思ってたの……。」
生徒会長は口の当たりに手をやって、動揺を隠そうと必死だ。
………確かに…かわいいかもしんない……。
別にツンデレ…が的なワケじゃないけど…っていうかそう言う事全く関係なしに
内山がコイツを好きなのも分かる気がする。
だって良く見たら顔は並以上だし、胸…もそこそこあるし……。
俺、大丈夫かな……。
チビ眼鏡がこんな高望みして、人生もう終わるんじゃねえか?
今がもしかしたらフィーバータイムなのかもな……。
どうせ寿命が短くなってるなら、一通りイベントが終わってから逝きてえな。
デ○ノート(映画版)みたく「眠るように」ね。
「あ…ありがとう。こんな私を選んでくれて……。」
少しずつ、俺らは学校に向かって歩き出した。
「その……代わりにってワケじゃねーよ??お前の権限で頼みたい事があるんだけどさ…。」
言いにくい…。実に言いにくい。
どう考えても、この経緯で話す事じゃないのは分かってる。
でも俺の空手に対する欲が収まらない。
「新しい、部活の承認をして欲しいんだけど……。」
途端に生徒会長の顔が暗くなる。
「ごめんなさい……。私ができるのは学校側への「部活の申請」だけなの…。」
「あ…それだけでも全然いいから!!試して欲しいんだ!!」
慌ててフォローを入れる。
生徒会長には出来る限り笑っていて欲しい。
「でも、新しい部活って…?あ…まさか…。」
「そう、空手部。」
「そうね…噂じゃ空手も凄いらしいものね。」
「ま…まぁ所詮噂は噂だけど……ね。」
「申請はするけど、人数は?最低でも10人はいないと申請できないわよ?」
ガーン!そ…そうだったのか……。
「その顔は……人材については考えていなかったようね。」
「あ……あ。ま…全く考慮してなかったぜ…。」
「一時は3、4人で申請できるってときもあったんだけど、
そうだとくだらない部活ばっか増えるって言って、10人。
ま、極端っちゃあ極端よね。」
「お…俺、頑張って人探してみるよ。
それで…人が集まったら…申請…してくれるか?」
おそるおそる顔をあげて生徒会長を見てみる。
「もちろん。100%先生に通して上げるわよ?」
生徒会長がニッコリと微笑む。あ…ヤバ。なんかめちゃくちゃかわいいんですけど。
朝っぱらから生徒会がある上、人気者の俺と並んで登校すると目立つ、と言って
生徒会長は一足先に学校へ向かった。
俺は結局、一人で学校へ向かうことになった。
そしてその途中、ある不良グループに捕まった。
「……なんですか。俺、早く学校に行かなきゃいけないんですけど。」
「…あれぇ?古川さん。もしかして間違えちゃったんじゃないですか?」
不良の一人が中央の別格の奴に話しかける。
あの中央の奴…。あいつはただモンじゃない。
いままで戦った「不良」という定義にはとても収まらない器だ。
「いや…合っているよ。人を見かけで判断しちゃいけないって。」
軽々しい。でも、コイツは間違いなく、『何か』をやってる。
「ここに来たのは他でもない……。話があるんだ…。」
「…そうですか、手短かにお願いします。」
「てんめぇ、天下の古川さんに向かってなんて口の聞き方を!!」
「ああ、ちょっと、黙ってて。」
中央の奴が俺に近づいてくる。
「……何ですか?」
「率直に言うと……俺らのグループに入らない??ってことさ。」
遥:じゃ!先に行くわね!!
瞬:お…おう!気をつけ…
ポテ!(遥、つまづいてこける)
遥:い……痛ったぁ…。
瞬:(こ…これはツボだ……!!)