〜決闘(前編)〜
次の日ー。
瞬が学校に行くと、他の生徒からジロジロ見られているように感じた。
(…なんだ?生徒会長の仕業か?)
そのとき後ろからポン!と肩を叩かれた。
「よっ!瞬。」
「ああ、拓也。おはよう。」
「?…どうかしたのか?」
「いや…、別に…。」
校内に入ると、二人とも目が点になった。
校舎中あちこちにポスターのようなものが貼ってある。
「転校生『山元』が、番長『内山』に挑む!?」
「………。」
「…………なんだこれ…瞬。」
「………俺が聞きてぇよ。」
(……アイツが言ってた『明日になりゃ分かる』って…コレかよ……)
「…これ………マジ?」
「……んまぁ…成り行きで…よぅ。」
「お前内山の怖さ知らねーだろ?
アイツここら辺の不良をシメてるヤンキー集団の幹部だぜ?」
ふーん。アイツが、幹部?
そのヤンキー集団は、一体どれだけ弱いのやら。
「ま、大丈夫だろ。で?拓也は見に来るのかよ。」
「サッカー部の英雄の姿を見に行かないわけないだろ?」
「英雄て……。」
「それともなんだ。負けるトコを見られたくねーのか?」
「は?……じゃーいいよ!見に来いよ!俺が・勝・つ・所を!!」
「おう!言ったな?サッカー部全員で見に行かせてもらうよ。」
ーあっという間に放課後。
ギャラリー多い!!!
なんかウワサの不良幹部もいっぱい来てるし、生徒会もしっかり来てる。
全校生徒の3/4以上来てるし、しまいにゃ校舎から望遠鏡使ってみてる先生までいるし。
あーあ。これは…終わったな。
俺の陰気で地味な夢の生活は幕を閉じた。もう当分幕は開かないだろうな。
かといって…男として、武道家として、
決闘に生半可な気持ちで望むというのはルール違反だよなぁ。
………う〜!
「いーじゃねーか!武道家のルールなんて守らなくても、負けとけ負けとけ!」
「そんなことしたら、内山君に失礼だよ!」
瞬の中で天使と悪魔が会話する。
「どーかな。好きな人の前で勝てたら、嬉しいと思うぜ?」
「最初はそうでも、あとから絶対に怒れてくるよ!!」
「うるせーなぁ。テメーは黙っとけ黙っとけ。」
「黙らない!瞬!本気で戦お!負けるのは悔しいでしょ?」
「それより、後々不良とかに目つけられるのの方がイヤだぜ?」
「それに拓也とも約束したじゃないか。絶対勝つって!」
「へっ!何青春じみたこと言ってんだよ。」
「うるさいっ!少し黙っといて!!」
バキッ!
「ぐはっ!」
天使……WIN!!
よーし。本気で戦おう。内山にも失礼だしな。
「よう!逃げずに来たか!山元!」
内山が指をポキポキならす。
「………。お前にゃぁ悪いが、本気でやらせてもらうぜ?」
「あったりめぇだ。本気ださなかったらボコボコにすんぞ?」
「お前には無理だろ。」
「…前の俺と思わない方がいいぜ?」
ひゅう…と風が空間を斬る音がする。
次の瞬間。内山はこっちに走ってきた。
「ハッ!」
内山がフックをしかける。
瞬はホームベースの滑り込みのように内山の足下に滑り込む。
「うわっ!」
ドテテェ!!
「おお!内山がこけたとこなんか初めて見たぞ!」
「やるもんだな。あの転校生。」
ギャラリーがザワザワさわぐ。
「……っく!」
「ワンパターンでここまで転ぶヤツ、初めて見たぜ。」
「……うおぉぉぉぉ!」
またしても向かってくる。
ワンパターンでかわそうとすると内山はわきばらにパンチを入れてきた。
「………っつぅ!」
「…本気で来ないと、怪我するぜ?」
「…分かったよ。探り合いはもう十分だな。」
拓:はいはい!内山か山元、どっちに賭けるぅ?
瞬:………何やってんだよ、拓。
拓:え?………『お約束』?