〜完勝〜
ピー!「試合終了!」
あっという間に時間が過ぎた。
結果は10点差なんてモンじゃない。
36-0。完勝である。
40分間とはいえ、約1.5分に1ポイント以上入れている計算だ。
そのほとんどは、瞬のサポート、パスパット、ドリブルカットによるものだった。
「いや〜すごいね!山元くん!どう?この際もう入部しちゃわない?」
キャプテンに肩をつかまれる瞬。
ベンチだけでなくレギュラーの一部までもが瞬を睨む。
「いや…遠慮しときます。俺、空手以外のスポーツにそんなに興味ないんで。」
「そっかぁ。残念だな。ま、ありがとよ!」
背の高い先輩に頭をなでなでされる。……なんかムカツクんですけど。
「!そうだ、彼氏のいない生徒会長は……っと!」
「瞬!ありがとよ!…てかすげーなお前!!」
拓也が遥より先に瞬に突っかかる。
「…おう。ま、マグレだけどな。」
「またまたぁ!謙遜しやがって!コイツぅ!」
拓也が瞬の頭をコンコン叩く。
「………。」
「…!」
「…私を完璧に怒らせたわね?覚えときなさいよ?」
遥が静かに冷たく言い放ち、去って行った。
「あーあ。何されるか分かんねーぞ?瞬。」
「…とりあえず覚悟はしとくか。」
瞬が流真道場に着くと、内山が待っていた。
まだ他はだれも来ていなかった。
「………山元ぉ…!てめぇは3度までも俺を怒らせちまった…。覚悟しろよ?」
「………?二度目までは自覚あるけど、三度目は知らねーぞ?俺。」
「…………、お前、生徒会長と気安く喋りやがって!!!」
内山が瞬めがけて上段回し蹴りを入れてくる。瞬は軽々しゃがんでかわす。
「……へ。デカヤマお前、まさか……。」
「……………!」
下段払い。飛んでかわす。
「へー!!お前あんなツンツンが好きなんだぁ!!」
「……だっ……黙れィ!」
上段刻み突き。流し受け。
「何?ツンデレが好きなタイプ?」
「……コロス!」
連打。連打かわし。
「やっぱ…甘え!」
瞬、もぐっての足払い。
ドッテェェン!!
「ふぅ…これで三度目の尻餅だな。」
「………畜生が。」
「好きなら告ればいいじゃん。」
内山が立ち上がって瞬を指差す。
「………山元!お前に決闘を申し込む!!」
「………………はぁ?」
「明日の放課後…学校の裏の広場でだ!」
「……おいおい。空手と決闘をゴッチャにしてねーか?お前。」
「だれが空手と言った?ケンカで勝負しろ!」
「………。俺、ケンカは苦手なんだよね。」
瞬が頭をポリポリかく。
「べつに空手を使っても構わねーぞ?破門になりてぇならな。」
「………。」
(注)日常で空手をつかってはいけないのが基本である。
「じゃ、いいよ。俺の負けで。不戦敗。」
「…ま、来ようが逃げようがどうでもいいがな。俺は。」
「…いいのかよ?」
「明日になりゃ、お前は絶対来る気になるさ。」
「?」
「じゃーな。」
内山は荷物を持って道場を出ようとした。
「…おい!デカヤマ!」
「なんだよ。」
ガラッッッッ!
道場の門が勢い良く開く。
目の前に優牙が立っている。
「………これから練習始まんぞ?」
瞬が小声で言う。
「…?どうした内山。忘れ物でもしたか?」
優牙がキョトンとした顔で言う。
「………いえ。何もないです……。」
内:ツンデレってなんだよ。
瞬:知らねーのか?ツ……!!
拓:どーした?
瞬(あぶねー、これ答えたら俺がオタクみたいに思われんじゃん)
内:………。