〜土壇場〜
約束の試合の日。
市総体の会場、奈良市営体育館に全中学のバスケ部が集まった。
いくら生徒会長の命令とはいえ、突然入ってきた転校生に
レギュラーの一角を盗られたベンチは、敵意むき出しで俺を睨みつけてくる。
「ま、とにかく余裕で勝てばいいんだろ?」
「ああ、絶対勝てよ!」
俺がタオルを拓也に放る。
試合開始のホイッスルが鳴る。
3年生のキャプテンからボールをいきなり受け、敵の的にされる。
しかし、小柄なその体型でフェイントをかけ、次々に抜いて行く。
「す…すげえ。」
拓也はおもわず身を乗り出し、生徒会長の遥もただ口をポカンと開けている。
「山元くん!パスだ!!」
バスケ部一背の高いという先輩から合図を受け、瞬は敵を引きつけながらパスを送る。
先輩はそのままゴールを横切って………シュート!
………レイアップが決まった!
「おお!!!すげーじゃん!すげーじゃん!」
拓也がタオルを振り回す。
「………でも…まだ一点差よ。無理に決まってるわ。」
遥がフンッとそっぽを向く。
「やるじゃないか!山元くん!」
キャプテンとレイアップを決めた先輩に同時にほめられ、
ますますベンチの視線が気になるようになる。
ピー!
敵がパスを回す。
(………思ったより鈍いな…。これは余裕で行ける。)
「キャプテン。」
瞬がキャプテンに耳打ちする。
「なんだ。」
「あいつらのパス、簡単にカットできそうです。
俺、ワントップ前に出て牽制かけますから、サポートお願いします。」
「…絶対カットしろよ?ミスしたら中に入られるぞ?」
「はい!」
瞬がトップに出ると、相手が一瞬ひるんだ。
そのスキに瞬がパスカット!そのまま速攻!
「瞬!行っけぇぇぇぇ!!!」
レイアップ!!!
ゴールの上をボールが一周し、ストンッと落ちる。
ピピッ!
「っよっしゃ!!」
拓也がおもわずガッツポーズをする。
「この調子で余裕勝ちするぞ!」
キャプテンが士気を上げる。
「オオオオ!!!」
瞬:……のろい…のろ過ぎる。このパス回し。
拓:それはきっと…『呪い』がかかっているからだ!
瞬:……………。ヘックション!