〜見学〜
放課後。
まだもらったばかりの傷一つない教科書をカバンにつめていると、拓也がやってきた。
「なっ!こいよ!待ってるから!!」
……はいはい。多分入りはしないけど、見学くらいなら行ってやりますよ。
テキトーに相づちをしていると、拓也は自分の机に戻り、今度は信一がやってきた。
「…………一緒に帰らない?」
「あ、ゴメン。俺、拓也にサッカー部の見学に来いって言われちゃってさぁ。」
「…………じゃ、俺も行くよ。」
この一言で教室中がザワついた。
すぐに拓也が飛んできた。
「高須!!お前やっとサッカー部入ってくれるのか!!いや〜良かった!」
「…え?信一、そんなに勧誘されてたの?」
「………。」
そうみたいだな。
「高須さぁ、すんごい球技上手いんだぜ?なのに寝てばっかだからもったいねーんだよ。」
へー。そーなんだ。
…ってことは、信一は寝てなきゃ十分にモテる条件をクリアしてるんだな……。
「…まだ入るとは言ってないけど……。」
「じゃ!こいよ!!」
再び去る拓也。…お前は気ままだな…。
カバンを背負って、信一とサッカー部の練習場に向かう。
「なぁ、信一。ここの学校って、運動部なにがあんの?」
「………水泳、陸上、野球、サッカー、バスケ、テニス、あとは…柔道かな。」
ちぇっ、空手はねーのかー。ま、そもそも空手部がある学校が少ないからな。
「サッカー部、強いの?」
「………野球とバスケは何度も市総体で優勝してるレベルだけど、サッカーは……。」
「サッカーは?」
「……人数が少なすぎてそれどころじゃない。」
……おいおいおいおい(汗)
なるほど、なるほどね。
「………着いた。」
これまたビックリ。
普通のコートの半分くらいしか練習面積がねーじゃん。
するとサッカー部と思われるメンバーが全員こっちを向いて……
「よろしくお願いしますっっ!!」
ええええええ!?拓也のヤローまたテキトーなこと部員に言ったんじゃねーだろーなぁ。
「よっす!瞬、高須。」
「………な、なななななんだよコレ。」
「さ、コレに着替えて。」
拓也はそう言うと、俺らに何かを渡した。
「………これ、ユニフォームだ。」
「おいおい、拓也。まだ俺ら、入部するとも言ってないのに。」
「とりあえず、これから通しするんだ。はやく着替えて!」
……これはやるっきゃなさそうだ。
でもま、ヘタクソにやって幻滅してもらえればいいか。
「ピー!!試合形式の練習、はじめー!!」
信:……俺、バスケ部はいりたかったな。
瞬:元々背ぇ高いのに?
拓:馬鹿だなー瞬。背ぇ高いからやるんだろ?
瞬:悪かったな、チビで。