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第33話 二人の襲撃

 二回目のコラボが終わって数日経過した。


 次回は二週間後なので、しばらく間が空く。連続して同じ人とコラボしていても飽きられてしまうので、何回かソロ活動を挟むのだ。


 メーベルさんと一緒に配信することで色々と学んだので、次のコラボまでに何度か試してみたい。


 最近は学校で授業を受けている間に、今やっているホラーゲームをどうやって盛り上げるかずっと考えている。男がカワイイ悲鳴を上げても受けは悪いので、ガンガン倒していくスタイルの方がいいのか。それとも保護欲を繁くするぐらい怖がるべきなのだろうか。


 正解のない問いだから難しい。


 けど、だいたいの方向性はわかっている。


 リスナーが求めている通りにしつつ、意外性を出せばいいのだ。


 指でペンを回しながらどうするか考えていると、メーブルさんと配信していた時、ワカメさんが親目線でコメントしていたことを思い出す。なんで彼女はそんなことをしたんだろう。


 引っかかりを覚えたので、推し方について男女の違いを少し深く考えてみる。


 女性VTuberを応援する男の人たちは、本人を擬似的な恋人扱いをすることがある。二人だけの世界が重要で彼女と俺の関係が全てだ。女性VTuberが特定の相手を作らず、自分に目を向けてくれる限り周囲に男がいっぱいいても許容はできる。


 要は女性VTuberに愛されていると確信がある限り、男性リスナーはついてくるのだ。


 一方で親目線、もう少し言い換えると母親のようなコメントをする女性は男性VTuberをどう見ているのだろうか。


 二人だけの関係では止まらない気がする。


 うまく言葉にはできないんだけど、可愛い我が子を自慢したいと思うのではないだろうか。二人だけの世界に閉じるんじゃなく、周囲に自慢したくなるような。そんな感じ。


 重要なのは周囲に男性VTuberと母親目線でコメントするリスナーの関係を認めさせること。自分以外は推したらいけない。他リスナーは排除対象になるのだ。


 この気持ちは男のリスナーも一定あるけど、なんというか空気感が違う。


 女性リスナーの方が殺伐としているというか、他リスナーを強く敵視しているようにも感じる。同担拒否という考えは、男女の違いを表しているようにも思えた。


 きっと周囲を含めた空気感を大事にしているから出てくるのだろう。


 二人だけの関係に閉じている男性リスナーとは、そこが徹底的に違う。


 そういった意味では、男性VTuberを子供じゃなくペットに近い扱いしていると言い換えても良さそうな気がする。少し違う気もするけど、大枠は間違ってないんじゃないかな。


 いけない。思考が脱線してしまった。


 今考えなければいけないのは、ホラー配信のリアクションをどうするかだ。


 怯えてヨシヨシとコメントしてもらうのも方向性としては悪くないとは思うけど、聖夜のリスナーの性質的にちょっと違う気がする。声と普段のまったり雑談が好きな人たちなので、友達目線で楽しめた方が良さそうだ。


 ワカメさんだって普段は母親目線だけじゃなく、友達目線でも楽しんでいてくれたと思うので方針としては問題ないはず。


 リアクションを多めにして、怖がるよりかは驚き、敵にやられて死ぬ、みたいな展開の方が盛り上がるかも。「何やってるんだよー」みたいなツッコミをされたら成功かな? ホラーゲームはシリアスな展開が多いから、プレイとのギャップも狙えそうだ。


 あとはストーリーの読み上げは必須にして自信はないけど声を楽しんでもらい、感情移入してもらう。


 うん。あり。


 淡々とプレイしていた時に比べれば格段に進歩している。


「わっ!」


 後ろから大きな声をかけられたので、体がびくんと反応して回していたペンを落としてしまった。


「ごめん、そんなに驚くと思わなかったよ」


 振り返ると陽葵さんが立っていた。


 目を閉じ、手を合わせながら謝っている。


 周囲を見ると、みんな自由に席を立っているのでいつの間にか授業は終わっていたようだ。


「大丈夫、気にしてないよ」

「本当?」


 片目だけを開いて俺を見ている。


 美人がやると怒る気が失せてしまう。自分のかわいさを知っていてわざとやってるんだろうな。


「うん。それで何の用?」


 特に教室に残っている男子からの視線が痛い。


 少し前にからんできた田村と山本もいる。陽葵さんにすごまれて即座に退散した人たちなので、この状況下で近づいてくることはないだろう。


「用がないと来ちゃダメなの?」


 騒がしかった教室が静かになった。


 みんな耳を澄まして会話を盗み聞きしようとしている。


「ダメじゃないけど……」

「よしっ! それじゃ話そうよ」


 空いている後ろの席にどかりと座って、机に肘を置いて頭をのせながら俺を見た。


 動くつもりはなさそうだ。


 教室はザワついている。


 当然だろう。ボッチだと思われた男に、学年でもトップクラスの美人で有名な陽葵さんが来ているのだから。


 彼ら、彼女たちのなかで俺のカーストランクは大きく変動していることだろう。すごく面倒だ。


 今はVTuber活動に専念したいので絡まれたくない。


「舞依さんと話したらどうかな?」

「ん? そのつもりだよ。ほら、来たじゃん」

「え!?」


 なんと教室に舞依さんが入ってきて、俺の隣の席にまできた。


 俺の平穏な学校生活は遠のくばかりである……。

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