十二執政官序列六位『悪童』ザンニ⑦
海斗は、新たな権能を得ると同時に、自分の状態に付いても理解した。
(やっぱりだ)
確信した。
『魔王の骨』を見に宿すと、魔力と『邪骨士』の力だけではなく、肉体そのもののスペックが上がる。
『魔王の左足』を宿した時も感じたが、海斗は身体に力が漲るを理解する。
(今の俺は、間違いなく強い)
恐らく、オリンピックで金メダルを何個も取れるくらい、身体能力が上がった。
恐ろしさも感じつつ、同時にこれ以上ない力だとも思っている。
この『魔王の骨』が、海斗の身体に宿ることこそ真の使い道だとでも言うように。
「さて、やろうか……救世主くん」
「ああ。テメエの核を抉り出してやるよ」
ひゅんひゅんとククリナイフを回して弄び、海斗はアイテムボックスから大量の骨を出し、周囲にばら撒く。
「『骨命・魔改造』!!」
狼の骨が巨大な骨狼に、鳥が巨大な骨鳥に、コウモリ、犬、猫とどれも巨大化、凶悪化する。
今や海斗は、最大で二十以上の『骨』を、大きさに関わらず改造し、使役することができた。
「喰い殺せ」
骨に命じると、ザンニに向かって骨が向かう。
だがザンニは、天井に手をかざす……すると、天井を突き破って一匹の蛇が伸び、ザンニの手に絡まって一気に上昇した。
「あはは。ここでやるのもいいけど……せっかくだし、この国で遊ぼうよ」
「……!!」
海斗は、ザンニが何を企んでいるか一瞬で看破。
骨狼を呼ぶと跨り、砕けた天井に向かって跳躍。
研究所の最上階では、ザンニが待っていた……だが、ただ待っていたわけではない。
ザンニの目の前には、あまりにも巨大な『蛇の頭』が、目を閉じて鎮座していた。
「『ヨルムンガンド』か……!!」
「知ってるんだ。ま、そういうこと」
ヨルムンガンド。
ザンニの切り札。『蛇王アンフィスバエナ』の力を注ぎ込んで作り出した、ザンニの最高傑作の蛇。
原作では、リクトに追い詰められたザンニの切り札として登場。ザンニと一体化し、霧の国シャドーマを崩壊寸前にまで追い込んだ。
あるとは思っていた海斗。海斗は、召喚した骨たちに一斉に命じる。
「行け!!」
「残念……ふふ」
ザンニは、『ヨルムンガンド』の口を開けて中へ。
骨獣たちが向かうが、ヨルムンガンドがカッと目を開き大きく口を開くと、そのまま全て丸呑みされた。同時に、気配が一瞬で消える……毒により、すぐに溶解したようだ。
『あはは。救世主くん……どうやって戦う?』
メキメキと、ヨルムンガンドが頭を上げる。
海斗は骨狼に命じ、その場から退避。
天井を破壊し、巨大な頭、そして身体が研究所を突き破って現れた。
その大きさは、海斗がこれまで出会った魔獣の中でも、トップクラスの大きさだった。
「チッ……」
翼のないジャンボジェットの胴体が、いくつも連結したような大きさだった。
数百メートルを超える巨大な白蛇。破壊された研究所の下に海斗は骨狼と着地。白蛇を見上げる。
『あはははは!! 小さいねえ、救世主くん。さあさあ、見せてくれよ。ここからどう逆転するんだい?』
「声のデカい野郎だ」
現在位置を確認。
研究所の裏手にある森に着地したのか、周囲には壊れた民家などがあった。
「……めんどくさいな。よし、行け!!」
骨狼に命じ、走り出す。
すると、ヨルムンガンドが地を這い、海斗に向かって来た。
『逃げないでくれよ。どんな手を使ってボクを倒す? ねえ、ねえ!!』
知識欲……こんな姿になっても、ザンニは海斗に期待していた。
◇◇◇◇◇◇
イザナミたちは、無数の蛇をひたすら始末……そして、研究所を突き破り、巨大な『蛇』が現れるのを目撃した。
「なな、なんじゃありゃあ!?」
「……なんという大きさだ」
「キッモ!! きもい、キモイしいいいいい!!」
ハインツたちは驚愕していた。当然の反応だろう。
イザナミ、ツクヨミも驚きこそしたが、むしろやる気になっている。
「おー、デケえな。あれが感じてた『強い気配』か?」
「ああ……恐らく、あれが執政官だろう」
「おいおい、カイトのヤツ、大丈夫か?」
ツクヨミが言うと、イザナミは頷く。
「カイトは問題ない。彼は強いからな……」
「ほー、お前、惚れてんのか?」
「惚れ……? わからない。だが、カイトは強い。私が認めた男だ」
「いいね。じゃあオレはどうよ?」
「お前は……」
イザナミは、ツクヨミをジッと見る。だが、すぐに不快そうな顔をした。
「お前は、強いだけだ」
「かかか。そりゃ光栄……まあ、オレにとってお前は妹みたいなモンだしな。性欲の対象にはならねぇよ」
「……妹だと? 不快だな」
「まあ、仲よくしようぜ」
イザナミは大蛇の首を斬り飛ばし、ツクヨミは頭を蹴り飛ばす。
兄と妹……そういう関係が、意外にもしっくりしていた。
◇◇◇◇◇◇
一方、コリシュマルドの元には、サクヤを抱えたヨルハ、全裸のカグツチがやって来た。
「おねえちゃん!!」
「安心しろ。鎖蛇はすでに除去した。傷の手当ても終わっている……じきに目覚める」
「……よかった」
コノハナは、サクヤをギュッと抱きしめる。
すると、コリシュマルドが、近くのロッカーから白衣を取り出し、カグツチに渡す。
「もう……まさか、ハダカで走ってきたの?」
「はい。でも、寒くないので」
「……そういう問題じゃないのよね。ヨルハ、あなた……」
「む? 別に寒くないぞ?」
「……はあ。どうやら、いろいろ教えることがありそうね」
コリシュマルドは苦笑し、カグツチに白衣を着せた。
すると、サクヤが目を覚ます。
「うぅ……」
「おねえちゃん、おねえちゃん!!」
「……コノハナ!! あなた、怪我は? 生きているの?」
「うん。わたしは大丈夫……この人たちが、助けてくれたの」
サクヤは、ヨルハとカグツチ、コリシュマルドを順に見る。
そして、しばし考え込み、俯いた。
「……ザンニ様は、私たちを切り捨てたのですね」
「頭の回転が速い子は好き。つまり、そういうこと……でも、アナタも、妹も、カイトの指示で無事。もうザンニはアナタたちのことなんて頭にない。私たちと一緒にいれば、安全」
「……本当に、感謝します。この恩、どう返せば」
「それなら、できることはあるわ」
コリシュマルドは、サクヤにそっと顔を寄せる。
妖艶な美女。どこか目の離せない容姿に、サクヤは一歩下がるが、コリシュマルドはさらに顔を寄せる……互いの胸が触れ合い、潰れる。
「サクヤ。あなたとコノハナは……」
コリシュマルドは、『海斗の策』を二人に説明。
サクヤは驚いていたが、少し考え込むと頷いた。
「確かに……それは、私にしかできませんね」
「おねえちゃん、わたしもいるよ!!」
「そうね……わかりました。私とコノハナは、カイト様に忠誠を誓います」
「誓います!!」
「ありがとう。でも……まずは、カイトね」
次の瞬間、地鳴りがした。
窓から外を見ると、巨大な白蛇が地面を這い、どこかへ行ってしまった。
コリシュマルドは小さく呟く。
「カイト。こちらの仕事は完了……あとは、アナタ次第」
戦いは、最終局面に入っていた。





