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テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~  作者: さとう
第三章 霧の国シャドーマ編

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六種混合異種人『空間』のアマテラス

 ハインツ、マルセドニー、ナヴィアの三人は、森の中を歩いていた。


「「「はぁぁ~……」」」


 三人は同時にため息を吐く。

 妙な黒い穴に飲み込まれたと思いきや、三人仲良く森の中で目覚めたのだ。

 そして、行くアテもなく、ただひたすら森を歩いている。

 獣道ともいえない藪を、ハインツを先頭にただ歩いていると、マルセドニーが言う。


「なあ、このまま歩き続けていいのか? 地図もない、食料もない、使えそうな物は全部カイトのアイテムボックスの中だ……」

「……うええ、サイアクすぎ。え、ちょい待った。まさかこのまま森で野垂れ死にとか!?」

「イヤなこと言うなっつーの!! クソが、マジでヤベエ……おいマルセドニー、頭脳明晰なお前なら、この状況なんとかできんじゃねぇのかよ」

「そう言われてもな……とにかく、森を出て、何か目印とか、人工物でも見つけて位置を把握しないと」


 三人は森を歩き続ける……すると、小さな泉が見えた。

 そして、その泉の傍で、黒い大きな『牛』が水を飲んでいる。

 マルセドニーが気付いた。


「あれは、『ブラックモーモ』だ。牛の魔獣で、肉は超高級……ステーキにすると絶品だ」

「いいね。腹ぁ減ったぜ……焼いて食うか?」

「お肉……いいわね。ハインツ、あれ倒せる?」

「余裕だぜ。けけけ」


 と、ハインツが背負っていた突撃槍を手にした時、マルセドニーがハッとした。


「待て。食べるのはあとだ」

「「は?」」

「ハインツ……お前、あの魔獣を『騎乗』できるか? あの大きさなら三人で乗れるだろ。あいつに乗って、森を抜けた後に食べるというのはどうだ?」


 ハインツ、ナヴィアは顔を見合わせ、マルセドニーを見た。


「お前、天才かよ!!」

「見直したし!!」

「フフン。天才ゆえの発想さ。凡人であるキミたちには思いつかないだろう? というわけで……ボクがあいつの足止めをするから、ハインツは隙を見て騎乗してくれ」


 マルセドニーはゆっくりと泉に近づき、人差し指を『ブラックモーモ』の足元へ向ける。

 普段は、魔力に属性を乗せて発射する『魔弾』を主な攻撃手段として使うが、今回は違う。

 マルセドニーは、人差し指を向けながら呟いた。


「『大地の守り(アースガード)』」


 すると、ブラックモーモの四方に、土の壁が現れた。


『ブモォォォォォォ!?』

「へへ、今だぜ!!」


 驚くブラックモーモ。そして、跳躍したハインツがブラックモーモの背に飛び乗った。


「スキル『騎乗』!! オラオラ、大人しくしやがれ!!」


 スキルを発動させると、ロデオのごとく暴れていたブラックモーモが大人しくなり、その場でしゃがみ込む。そして、マルセドニーとナヴィアが近づいてきた。


「乗ることができれば、動物だけじゃなく魔獣ですら従えるか……『聖騎士』のジョブ、なかなかいいな」

「ケケケ。もっと素直に褒めやがれ」

「うわ……なんか少し臭い。ちょっといい?」


 ナヴィアがブラックモーモに手を向ける。


「『浄化(クリーン)』」


 すると、ブラックモーモの汚れが消え、体毛がフワフワになった。

 

「おお、すっげえ」

「服とか汚れとかキレーにするスキルよ。マジこれ覚えた時嬉しかったわ~」

「ほお……大したものだ」


 三人はブラックモーモに乗り、ハインツが命じる。


「おい、この森を抜けれるか? 人間の作った街道まで行け」

『モォォォォ』


 ブラックモーモは歩き出す。

 マルセドニーは言う。


「ボクたち。かなり成長しているな……」

「ああ。カイトの野郎にそそのかされて、嫌々始めた訓練だけど……なんか、今はもうコレしかねえって感じだぜ」

「……だね。ねえあんたら、執政官って全部倒せると思う?」


 ナヴィアが言うと、二人は少し考えつつ言う。


「まあ、できるんじゃねぇの? カイトの野郎もできるって言ってたし」

「ボクも、できると思う。まだ魔族の恐ろしさを知らないから言えるだけかもしれないが……少なくとも、カイトに付いて行けば、なんとかなる……気がする」


 ブラックモーモが、のしのしと森を進む。

 三人はしばし黙り込む。そして、ハインツが言った。


「とにかく。今はもう、カイトの野郎に付いて行くことだけだ。オレらは戦うだけでいいだろ。考えるのは全部、あいつの役目だ」

「……そうだな」

「ま、そうだね。アンタら馬鹿だし、余計なこと言わなきゃいいっしょ」

「おめーも馬鹿だろうが。なあ?」

「一緒にしないでくれないか。ボクは天才だぞ」


 三人は、ワイワイと喋りながら森を進むのだった。

 そんな三人を、近くの木の上で見る影があった。


「フフ……ハズレを引いちゃったかしら」


 着物を着た、長い髪を簪でまとめた妙齢の女だった。

 手には鉄扇を持ち、周囲には黒い玉がいくつも浮いている。

 六種混合の異種人『空間』のアマテラスは、ハインツたちを見て鉄扇を広げた。


「フフ、時間はたくさんあるし……少し、あの三人で遊んじゃおうかしらね」


 ◇◇◇◇◇◇


 一方そのころ。


「…………」

「ククク、なんだなんだ、さっきから険しい顔して。なあ、ドワーフちゃん」

「……わたし、ハーフなので、ドワーフじゃないです」

「そうかい。なあ、仲良くしようぜ? これは『危機』ってやつだろう?」


 イザナミ、ツクヨミ、クルルの三人は、もぬけの殻となっている研究施設の一つ、『ナカツクニ』だ。海斗たちがツクヨミと戦った『タカマガハラ』の先にある施設の一つ。

 目が覚めると、三人はここにいた。


「ったく、アマテラスのクソ野郎め。なんだってこんなところに」

「あの、ツクヨミさん……ここ、知ってるんですか?」

「おう。『ナカツクニ』……タカマガハラでいい結果を出した実験対象は、ここで次の実験を受ける。オレもここに来た事あるぜ」


 研究所の外観は『タカマガハラ』と全く同じだ。

 無人であり、人気が全くないところも同じ。

 ツクヨミは言う。


「ここは、アマテラスが守っていたはずだ。でも、オレらを転移させるために来てたし……あーわからん」


 ツクヨミは頭を掻く。イザナミはどうでもいいように言う。


「……今は、カイトたちと合流すべきだ。このまま先に進めば、きっと合流できる。カイトたちもきっと、先に進んでいる」

「そうですね。不本意ですけど……ツクヨミさん、この先、案内してくれますか?」

「いーぜ。まあ、この先……伏せろ!!」

「っ!!」

「え?」


 と、イザナミはクルルの頭を押さえ、そのまま地面に押し倒した。

 ツクヨミも伏せると、三人が立っていた場所を、何かが回転しながら飛んで行った。

 そして、それはブーメランのように軌道を変え、ツクヨミたちの背後にいた男がキャッチ。

 ツクヨミは立ち上がり言う。


「不意打ちとは、卑怯じゃねぇか……スサノオよぉ」

「ふん。裏切り者には相応しい死に方だろう」


 長髪の、巨大な『円』を手にした男だった。

 長い黒髪をポニーテールにした、筋骨隆々の男だ。

 着物を着ているが半脱ぎで、上半身をあらわにしている。

 手に持つのは独特な武器だった。クルルが目を細め、鍛冶師として気になるのか言う。


「あの剣……なに?」

「『円月刀』だ」


 意外にも、スサノオから返事が来た。

 綺麗なフープ状の県だ。中央に持ち手があり、スサノオがクルクル回転させ構えを取る。

 イザナミも刀を抜き、ツクヨミは拳を構える。そして、遅れてクルルがハンマーを構えた。

 スサノオは笑う。


「ククク、ツクヨミ……貴様の処刑だけではなく、そこの二人のような強者とも死合えるとはな」

「前々から言いたかった。スサノオ……オレも、てめえと殺し合いたかったぜ!!」

「……くだらない。カイトが待っている、すぐに終わらせよう」


 三人の身体に竜麟が浮かび、ツノが生え、瞳、髪の色が変わる。

 クルルは構えたが……三人の威圧感に、身体が押しつぶされそうになった。


「わ、わたし……一番、弱いかも」


 こうして、異なる場所で、それぞれの戦いが始まるのだった。

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テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
レーベル:GA文庫
原著:さとう
イラスト:山椒魚
発売日:2025年 5月 15日
定価 863円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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