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テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~  作者: さとう
第三章 霧の国シャドーマ編

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十二執政官序列六位『悪童』ザンニ①

 霧の国シャドーマ、第零区画『ヨミヒラサカ』。

 シャドーマの中心であり、執政官ザンニの居住地であり、全ての研究成果が集まる場所。

 ここに、一人の少年がいた。


「ん~」


 少年、だった。

 真っ白でボサボサな髪、黒縁の眼鏡、ダボダボの白衣を着て、手にはどす黒い液体が満たされた試験管が握られている。試験管を揺らすと、黒い煙が試験管口から漂う。

 十二執政序列六位『悪童』ザンニ。

 外見は十六歳程度の少年にしか見えない。だが……最も特徴的なのは、顔に斜めの傷があり、縫合跡が残っていることだ。

 ザンニは、ニヤニヤしながら試験管を揺らして言う。


「ダ~メだこりゃ。また失敗」


 試験管をポイっと投げると、足元にいた『蛇』が大口を開け飲み込んだ。

 そして、十六歳ほどの白衣を着た少女が現れ、ザンニに言う。


「所長。また失敗ですか?」

「ああ。やっぱ九種以上の血を混ぜると真っ黒になっちゃうねえ。夢の十二種混血、最強の異種人を作る計画は先になりそうだ。ねえ、サクヤちゃん」

「ちゃん付け、やめてくださいって言ってますよね」


 サクヤと呼ばれた少女は、ジト目でザンニを見る。

 ザンニは「あっはっは」と笑い、足元にいた蛇を腕に絡ませ、愛おしそうに撫でた。


「ところで、コノハナは?」

「あの子でしたら、失敗作の廃棄場に。失敗作とはいえ、戦闘力でいえば三種混合の異種人と同レベルですから」

「ふーん。頑張るねえ」


 ザンニは興味がないのか、ポケットからネズミの死骸を取り出し、蛇に食べさせている。

 サクヤは言う。


「所長。いいのですか? 『狂医』様とのお約束まで、そう時間はありませんけど」

「別にいいよ。というか……ドットーレのヤツ、最近すっごく楽しそうなんだよね。スカラマシュ、プルチネッラ、スカピーノ、タルタリヤが死んで、その原因である人間たちにご執心なんだ。まあ、ボクもだけど」

「……人間、ですか」

「そ。人間」

「……十二の種族で最も脆弱な人間が、執政官を三人も」

「デラルテ王国もやるねえ。秘術『召喚』で、定期的に異世界人を召喚して、執政官を倒してもらおうとしてること、バレてないと思ってるんだもん」


 ザンニは面白そうに言う。

 サクヤは首を傾げた。


「召喚……? それは、一体」

「まあ、『強いジョブを持った人間』をどこからか呼び出す力。過去の人間が遺した、『形あるジョブ』ってところかな」

「……ええと」

「まあ、他の執政官は知らない。ボクと……アルレッキーノくらいしか知らないんじゃないかな。ま、面白いから放っておいてるけど、今回の『救世主』は、すっごく楽しそうだ」


 ザンニは、シュルシュル舌を出す蛇を掴み、大きな口を開け……蛇を丸呑みした。


「一人は、絆を力にする『勇者』だ。こいつはまあいい。つまらない偽善者だ」


 ザンニは舌をペロリと出し、お腹をさする。

 

「問題はもう一人……スカラマシュを罠に嵌めて殺し、スカピーノを真正面から殺し、遥か格上のプルチネッラを倒した『救世主』だ」

「……その人間は、厄介なのですか?」

「厄介だね。というか、得体が知れない……なんというか、怖いんだよねえ」


 ザンニは腕組みをし、困ったように笑う。

 すると、研究室のドアが開き、サクヤそっくりの少女が飛び込んできた。


「ザンニ様っ!! 処理終わった。次の実験体まだー?」

「……コノハナ。何度も言いましたけど、あなたは主に対しての敬意が」

「おねえちゃんうっさいし。ねえザンニ様、いないの?」


 コノハナ。

 黒髪のツインテールを揺らし、腰には二本の『刀』が差してある。そして、動きやすさを重視した戦闘用の和服に軽鎧を装備した少女だった。

 顔には返り血が付いたまま、笑顔を浮かべてザンニに近寄って来る。


「あはは。コノハナはいつも元気だね」

「ぶー、戦いたいんだもん。おねえちゃんは相手してくれないし、混合の雑魚しか戦う相手いないんだもん」

「そうだねえ。サクヤ、相手してやったら?」

「……私は、主の護衛兼助手兼秘書です。あなたの傍を離れるわけにはいきません」

「だってさ、悪いねコノハナ」

「むうう」


 コノハナは頬を膨らませ、姉のサクヤに抱き着いて甘える。


「こら、血が付いたまま抱き着かないの」

「ねえおねえちゃん、お風呂行こっ!!」

「……はあ、仕方ないわね」


 サクヤは「申し訳ありません」と頭を下げ、コノハナを連れて部屋を出て行った。

 残されたザンニは言う。


「ドットーレ、ずっと見てたみたいだけど、何か用?」

「……いやなに、麗しき姉妹愛を見ていただけさ」


 現れたのは、白いスーツを着た男性だった。

 顔半分を隠す仮面を被り素顔が見えない。ずっと部屋にいたようだが、コノハナもサクヤも存在すら気付いていない。

 十二執政官序列三位『狂医』ドットーレは言う。


「四種混合のサクヤ、五種混合のコノハナ。異種人の配合は上手く行っているようだね」

「まあね。でも、六種だとヒトの形を保てないし、九種混合だと真っ黒な物体になっちゃうんだ。十二種の混血はまだまだ難しいね」


 ザンニは軽くおどける。

 ドットーレは続けた。


「キミには期待しているよ、『悪童』ザンニ。十二種混合の異種人……我らの神、『魔神』の器に相応しい……」

「ま、期待してたら? どうせキミのことだし、ボクが失敗した時のプランなんかいくつも用意してるんだろ?」

「ハハハ……かもしれない、ねえ」

「はいはい。ところで、用事はそれだけ?」

「いや。警告をね」

「警告?」


 ドットーレは、壁に寄りかかったまま腕組みし、変わらぬ口調で言った。


「霧の国シャドーマに侵入者だ。かつての三種混合の少女……イザナミと言ったか。先ほどの姉妹の姉が、デラルテ王国から『救世主』を連れ、この国に踏み込んだようだ」

「ふーん」


 ザンニは、興味がなさそうに言う。


「気にならないようだね」

「別に。ああ、どっちの『救世主』? 偽善者の方?」

「いや。『骨』の方だ」

「へえ……」


 そして、ザンニは興味を持ったように振り返る。

 眼の色が変わっていた。邪悪さを孕んだ目が、ドットーレを射抜く。


「狙いは『魔王の骨』かな。あはは、どうやらシャドーマにある骨のことを、嗅ぎ付けられたようだ」

「だが……問題はないのだろう?」

「まーね」


 ザンニが指を鳴らすと、足元が開き、円形の筒がせり上がって来た。

 筒は透明で、透明な培養液に満たされており……そこには、一つの『骨』が浮かんでいた。


「探している『魔王の背骨バックボーン・オブ・コカビエル』は、もうボクの手にあるからね」


 霧の国シャドーマにある『魔王の骨』は、すでにザンニの手にあった。

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テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
レーベル:GA文庫
原著:さとう
イラスト:山椒魚
発売日:2025年 5月 15日
定価 863円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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