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海底洞窟

 海斗は、ガストン地底王国で見つけた『サメの骨』を海中へ放り、右手を向ける。


「『骨命(リ・ボーン)魔改造(カスタマイズ)』!!」


 骨が一瞬で組み上がり、さらに鋭利な突起、そして巨大化する。

 『狂骨鮫トリトン』が、ジオスゲイノと対峙……だが。


「マルセドニー。風魔法での推進はキャンセル。お前はもう風の球体を維持することだけに力を注げ」

「は? ま、待てカイト……何をするつもりだ」

「まあ、今思いついた。最初から……こうすりゃよかったんだよな!!」


 海斗がトリトンに命じる……すると、トリトンは巨大な口を開け、なんと海斗たちの『砂玉』を丸呑み。


「「ぎゃあああああ!?」」

「あわわわわ!?」

「……これは」


 叫ぶハインツ、ナヴィア。慌てるクルル。何かを察したイザナミ。そして集中しているせいで今の現状に気付いていないマルセドニー。

 海斗たちはトリトンに飲まれ、空洞となった腹の部分に収まっていた。

 骨なので、肋骨部分はスカスカだ。だが、これでトリトンを操作するだけで、カイトたちは自在に海の中を航行できる。

 海斗は言う。


「さて、『ジオスゲイノ』をここで仕留め──」


 海斗が右手をジオスゲイノに向けたかと思えば、思い切り別方向に向ける。

 するとトリトンが高速で泳ぎ出す。鋭利な突起部分に触れた魚が両断され、追いかけてきたジオスゲイノが丸のみした。


「お、おいカイト!! やるんじゃねぇのか!?」

「やらない。海にいるのは最初だけだし、あいつを振り切ればもう会うこともない。それに海底洞窟はそう遠くない……数が少ないとはいえ、海の中にも蛇はいる。目立つのは避けたい」


 トリトンがスイスイ泳ぐたびに、接近してきた魚が切り刻まれる。

 そして、大口を開けて接近してくるジオスゲイノを海斗はチラッと見た。


「でもまあ、ウザイのは確かだ」


 アイテムボックスから魚の骨を出し、海に投げる。


「『骨命(リ・ボーン)』」


 太刀魚のように細い『骨魚』が、海斗の操作で弾丸のように発射される。

 だが、ジオスゲイノの身体に刺さることなく、まるで掃除機のように大口を開けて吸引するジオスゲイノの口の中へ。


「カイトさん、飲まれちゃいましたよ!?」

「いいんだよ」


 海斗はニヤリと笑い、もう一度『骨魚』を発射。

 そして、発射されジオスゲイノが吸引すると同時に、指をパチンと鳴らす。


「『爆弾骨(ボム・ボーン)』──【爆破(パンク)】」


 すると、ジオスゲイノの口の中で爆発。さらに腹の中でも小規模の爆発が発生。

 ジオスゲイノが停止。苦しそうに暴れ出した。


「魚を爆弾に変えて、腹の中で破裂させた。くくく、下手な食あたりより地獄の苦しみだろうぜ」

「「「…………」」」

「さすがカイト……すごい」


 ハインツ、ナヴィア、クルルは青い顔でドン引き、イザナミは素直に賞賛……そしてマルセドニーはまだ集中しているのか、気付いていない。

 気付かない方がいい。そういうこともあるとハインツたちは思うのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ジオスゲイノを退け、海斗の操作で海底の陸沿いを進むと、不自然な光が見えてきた。

 

「おい、カイト……あそこ光ってないか?」

「ああ。あそこが目的の『海底洞窟』だ。かなり深いところにあるから、ザンニの『蛇』も調査できない未開のダンジョン……本来、発見されるのは先のことなんだけどな」


 岩と岩の隙間に、トリトンが入れるほどの空洞があった。

 まさに洞窟と言わんばかりの空洞で、空洞に入り奥に進むと、不自然なほど自然に整備っされたような『道』となっている。

 しかも、通路には光るサンゴが生えており明るく、奥に進んでも昼間のように明るい。

 そして、行き止まりになった。


「ちょ、行く道ないんだけど!!」

「慌てんな。上を見ろ」

「上? あ」


 ナヴィアは上を見た。すると、垂直に伸びる道があった。

 トリトンが真上に進むと……そのまま、洞窟の入口に出た。

 海斗はトリトンを解除。マルセドニーの背中をバシッと叩く。


「あいた!?」

「到着。もう解除していいぞ」

「く、口で言ってくれないか。乱暴な……」


 風を解除すると、周囲を覆っていた砂がバサッと落ちた。

 そして、全員が周囲を確認する。


「……あそこが、入口か」


 イザナミが指差したところは、まさに洞窟の入口。

 クルルが周囲を見渡す。


「ガストン地底王国でも、こんな湿ったような空気の区画はありませんね……」


 鍾乳洞のような場所だった。

 海斗たちが出てきた海に繋がる穴、光るサンゴが至る所に生えているだけの広い空間だ。

 ハインツは、近くにあった大岩に寄りかかって言う。


「なあカイト。今思ったんだけどよ……ここ、海底洞窟なんだよな。ダンジョンってことではしゃいでたけどよ、出口はあんのか?」

「当然、ある。それもダンジョンの出口は、俺たちの目的地である『タカマガハラ』近くにある森の中だ」

「……タカマガハラの森? カイト、私はタカマガハラを知っているが、近くの森には野草や動物しかいない、ダンジョンの入口があるような場所ではない」

「そりゃそうだ。ここは未発見のダンジョンだぞ? 入口は、長い年月をかけて育った大樹の根元だ」

「大樹……そうか、あの大樹か」


 イザナミは知っているようだが、他のメンバーは知らない。

 海斗は言う。


「とりあえず……今は昼前か。メシ食って休んだら、ダンジョンに入るぞ」

「よっしゃ。カイト、肉串くれ肉串。オレが山ほど買ったのあるだろ」

「あたしサンドイッチ~」

「おにく……わ、わたしもお肉がいいです」

「……私もだ」

「ボクは何でもいい」

「わかったわかった。とりあえず、腹ごしらえするぞ」


 一行は休憩に入り、ダンジョンに入るために力を蓄えるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 食事を終え、装備を整え、一行はダンジョンの前に立つ。


「確認する。前衛はクルルとハインツ、マルセドニーと俺は援護、ナヴィアは負傷の治療。イザナミは中~後衛の防御だ」

「おう。へへへ、腕が鳴るぜ」

「よーし、押しつぶします!!」

「……カイト。やはり私も前衛に」

「ダメだ。お前の攻撃は強すぎる。ここが海底ってこと忘れんな……ガストン地底王国で何をしたか忘れたのか?」

「……ぅ」


 イザナミはしょんぼりする。ナヴィアはイザナミの肩をポンと叩いた。


「まーまー、あたしのことしっかり守ってよね」

「……わかった」


 海斗は、めんどくさそうに言う。


「……ダンジョンである以上、ボスがいるはずだ。クルル、ハインツで対処できない場合はお前を前衛にする。それまでは、ダンジョンの『脆さ』とかしっかり見て、どのくらいの攻撃で対処すればいいか、しっかり見ておけ」

「!! ああ、任せろ」


 イザナミは嬉しそうに微笑む。

 マルセドニーは言う。


「はあ……ボクは一度、あいつの危うさを経験しているから、正直あまり傍にいたくないんだが」

「気持ちは理解できる。でも、あいつの攻撃力は、あるかないかで言えばあった方がいい」

「……うむ」

「とりあえず、俺たちは援護。俺は場合によっては前衛に加わる。お前が一番負担デカいだろうが、しっかり頼むぞ……報酬も色付けてやる」


 ボソボソ言うと、マルセドニーはニヤリと笑って頷いた。

 海斗は、マルセドニーの肩をポンと叩いて前に出る。


「いくぞ。構造がわからない以上、何日かかかることも考えておけ」


 こうして、海斗たちは『霧の国シャドーマ』にある海底洞窟のダンジョンへ入るのだった。

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