リクトの今/海斗の考え
リクト。海斗と共に召喚された『救世主』の一人で、ジョブは『勇者』である。
その能力は、『仲間のジョブを強化』すること、そして『仲間の強化したジョブを自身で扱えること』である。つまり、リクトはジョブ能力者がいればいるほど、強くなる。
原作では、リクトの仲間は総勢十七名。全員が若い女である。
「いやー、妖精族もこれで平和だよな!!」
リクトは、ニコニコしながら妖精族の王城で食事をしていた。
「うふふ。リクト、本当にありがとうございました。執政官の恐怖が消え、これからは明るい未来が待っているはずです」
リクトの傍で微笑むのは、妖精族の姫、リリティアラ。
外見は妖精族。小学生ほどの慎重に、背中に翅が生えている。だが、リリティアラは人間とのハーフであり、『毒魔法師』のジョブを持つ。
当然だが、リリティアラはリクトのハーレムメンバーである。
「……はあ。それにしてもリクト、本当に驚いたぞ」
ジト目でリクトを見るのは、ハーレムメンバーにして『剣士』の少女エステル。食事を終え、食後の紅茶を飲んでいる。
「まさか、リリティアラを救うために執政官に喧嘩を売るなんてな……正直、寿命が縮んだぞ」
「あっはっは。まあ、みんなで勝てたんだし、いいじゃんか」
「……やれやれ」
エステルは苦笑する。
エステルはトラビア王国の騎士。救世主リクトの護衛であり、王国との連絡係だ。
定期連絡こそしているが、今ではリクトの『冒険』に付いて行く仲間の意識が強い。
すると、エルフの少女トトネが、骨付き肉をモグモグ食べながら言う。
「ね、次はどこに行くの?」
トトネ。トラビア王国にいたエルフ族の奴隷。
リクトによって解放され、今はトトネをエルフの国に送る途中……なのだが。
「わたし、国に帰らなくてもいい。だから、リクトのやりたいように、世界を回ろう。リクトは救世主なんだし、魔族に苦しめられてる人たちを助けないと」
「トトネ……ああ、ありがとうな!! じゃあ、仲間を増やしつつ、世界を巡る旅の続きといくか!!」
リクトはガッツポーズ。
すると、半魔族にして翼人のネヴァンが言う。
「ここからだと、獣人の国が近いぞ。執政官序列八位『森獣』ジャンドゥーヤが管理する国だ」
「獣人かあ。へへへ、見てみたいな」
ネヴァン。プルチネッラの元配下だが、リクトに救われハーレムメンバーとなった。
海斗に殺される寸前だったが、こうして命を救われて旅に同行している。ちなみに、ネヴァンは海斗を激しく憎悪していた。
そして、リリティアラが言う。
「あの、リクト……あなたの旅に、私も連れて行ってください。きっと役に立ってみせます!!」
「当然!! リリティアラ、これからよろしくな!!」
こうして、リクトの旅にリリティアラが加入。
エルフの国にトトネを送るという話は消え、世界救済のために執政官を討伐する旅が始まっていた。
◇◇◇◇◇◇
デラルテ王国。
海斗は、イザナミ、クルルを連れ、クリスティナと話をしていた。
「で、リクトが……『盲目』を倒したってマジなのか?」
「ええ。妖精族の使者がいたじゃないですか。リクトにすっごく感謝していましたよ。お姫様もすっごく感謝していたみたいですね」
「……チッ」
リクトのハーレム。海斗は正直気に食わない。
嫉妬とかではない。単純に気に食わないのだ。
するとクリスティナ、クルルとイザナミを見た。
「ところで、そちらの方は?」
「クルル。ドワーフ族。イザナミ。混血人」
「か、簡潔……あれ? 海斗が帰って来たってことは、『楽師』スカピーノは」
「倒した。近々、ドワーフの使者が来る」
「おおおお!! すごい、執政官がこれで四人目!! あと八人ですね!! わあ、歴代の救世主でも、ここまでやった人はいませんよ!!」
喜ぶクリスティナ。これが普通の反応なのだ。
海斗はため息を吐く。すると、イザナミが言う。
「カイト、そして……クリスティナ王女。今後の方針が決まっていないなら、私の頼みを聞いてほしい」
「頼みですか?」
首をかしげるクリスティナ。ちなみに、クリスティナは混血人に対し偏見がない。
「次に倒す執政官……序列六位『悪童』ザンニにしてもらいたい」
「あ、『悪童』ザンニ……つまり、混血人の領地、霧の国シャドーマですか?」
「そうだ。私がそこまで案内する」
「えーと……順番的には」
序列十二位スカラマシュ、十一位スカピーノ、序列十位タルタリヤ、序列五位プルチネッラを討伐した。順番に言えば、序列九位である……が。
「……序列八位『森獣』のいる獣人の領地より、『悪童』ザンニの領地のが近い。それに、そこには『魔王の骨』がある」
「え、そうなんですか?」
「ああ。妖精族の領地と、獣人の領地にはない。よし……いいだろう、次の標的は『悪童』ザンニだ」
「……感謝する」
イザナミはぺこりと頭を下げた。
海斗は言う。
「だが、まだ準備がある。ザンニは狡猾で凶悪だ。そいつと戦うなら、こっちもそれ以上に狡猾で凶悪、残忍にならないといけない」
「ざ、残忍は別にいいんじゃ……」
クリスティナが頬を引きつらせる。
海斗は思う。全十七巻の内容は網羅しているが、ところどころで虫食いがある。『悪童』ザンニの領地で覚えているのは、『魔王の骨』があること、そして『悪童』ザンニと戦いギリギリ勝利したことだけ。その内容を思いださないと危険だった。
「クリスティナ。イザナミに部屋を用意してやってくれ。それと、ハインツたちに臨時ボーナスを」
「わかりました。はあ……ようやく仕事が減ってきたんですけど、また忙しくなりそうです」
妖精族、そしてドワーフ族と使者の対応。傾いた国内は建て直し、クリスティナを代理ではなく正式な女王に、という話もあるようだ。
「とりあえず、今日はここまで……さすがに、俺も疲れた。寝る」
「あの~……最後にいいですか?」
と、クルルが挙手。
全員がクルルを見て「うぐ」とのけぞる。
「その『悪童』を倒すのはいいんですけど、話を聞いていると、順番で行くなら、序列十位の次は九位の執政官じゃないんですか?」
「あれ、そういえばそうでした」
「……ふむ、確かに」
クリスティナ、イザナミも気付いた。
三人が海斗を見る。が……海斗は顔をそむけ、舌打ちした。
まるで、気づかなければよかったのに、と言わんばかりだ。
「……序列九位は、まだいい」
そう言い、海斗は部屋を出た。
そして、自室に戻り椅子に座り、『原作ノート』を見る。
そこには、『序列九位について』と書かれている。
「…………十二執政官序列九位『求愛』インナモラティ」
その項目に、小さく書かれていた。
『必ず救う』。