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最下層③/地底湖へ

 話は終わり、四人はクルルの案内で『地底湖』へ向かうことになった。

 いろいろと『作戦』を説明したが、まずは『魔王の骨』を回収するのが先決。

 家を出て、クルルの家のわき道を通って、細い道をただ進む。

 クルルは、地図を見ずに進んでいた。


「ドワーフの血が半分入ってますから」

「ふむ。それがどういう意味なのか、ボクには理解できないんだが」

「ドワーフ族の特性みたいなもんだ。ドワーフは、鉱山や炭坑内では、直感で道がわかるんだよ」

「ほう、興味深いな」

「十二種族にはそれぞれ、そういう特性が備わってる。でも、人間にはそれがない……だから人間は十二種族の中で最弱って言われてるんだ」

「ふむ……なるほどな」

 

 人間は最弱……と、言われている。

 だが、海斗は知っている。


(ジョブが宿るのは人間だけ。それが特性みたいなモンだけど……ジョブが宿るのは選ばれた人間だけ)


 ジョブが宿るのは、人間と魔族だけ。

 実は、魔族と人間にそんなに違いはない。


「あの、ここから先、ニオイがキツくなりますけど……」

「問題ない」


 イザナミは頷く。

 海斗、マルセドニーも頷いた。

 クルルはガスマスクを被り、ゴーグルをひっかける。


「では、下り坂に気を付けて」


 クルルは進んでいく。

 マルセドニーは、クルルの背中にある大きな『槌』を見ながら海斗に聞いた。


「なあ、あのハンマーは何なんだ?」

「見りゃわかるだろ。クルルの武器だよ」

「武器、にしては……どうも派手に見える」

「そりゃそうだ。クルルはドワーフだぞ? ただの武器なわけない。それに、クルルはジョブ能力者だ。こんな扱い受けてるけど、戦えばハインツより強いぞ」

「……そ、そうなのか?」


 マルセドニーは一歩下がる。

 イザナミも、それを感じているのか言う。


「クルル、という少女……かなりの使い手だ。私の護衛など必要ないかもしれん」

「でも、あいつの本業はそれじゃない。イザナミ、頼むぞ」

「ああ、わかっている」


 坂道を下ると、海斗とマルセドニーは顔をしかめた。


「……風魔法で守っているはずなのだが、わずかに匂いがするな」


 マルセドニーは鼻を押さえて言う。

 海斗は「アスファルトが溶けた匂いを濃くしたような感じ」と思ったが、アスファルトを理解できる人間がいないので黙っていた。

 イザナミは特に変わらず、クルルも前を進む。

 坂道を下った先は、最下層の中でも特に深い場所。オイルスライムも住めないほど通路が黒く、重油のような粘りのある通路だった。

 そして、イザナミが言う。


「……待て。この先に、何かがいる」

「わたしも、同じこと言おうと思っていました」


 イザナミが前に出ると、クルルも前に出てハンマーを抜く。

 すると、通路の奥からズン、ズン、ズンと、ゆっくり歩いて来る何かがいた。

 海斗が、ランプを手に置くを照らそうとする……が、イザナミが剣を真横に突き出すと、鞘に何かが命中し、砕け散った。


「なっ……」

「カイト、下がっていろ」


 床を照らすと、黒い石、石炭のような物が落ちていた。

 そして、こちらに向かって来る何かの正体が、はっきり見えた。


「な、なんという……」


 マルセドニーは驚愕する。

 海斗たちの前に現れたのは、漆黒の体躯を持つ、巨大な鬼のような魔獣だった。

 身体がドロドロと濡れているのは、重油のせいだろうか。

 身長は三メートル近い。手は特にドロドロしていた。まるで原油に手を突っ込んだばかりのようにも見える。

 

「オーガです。最下層の『毒』に適応した種で、毒無効、さらに表皮がヌメヌメで……」

「で?」

「その、剣とか、効かないんです」


 クルルは、イザナミに申し訳なさそうに言う。

 だがイザナミは首を振った。


「気にしなくていい。私に斬れない物はない」

「は、はい」

「私が前に出る。クルルと言ったか……援護を任せていいか?」

「わ、わかりました。あの~……無理しないでください。辛かったらすぐ交代しますので」

「ふ……優しいな」


 イザナミが前に出る。クルルはハンマーに細かい粒子のようなものを入れていた。

 マルセドニーはどうすればいいのか、海斗に聞く。


「お、おい。ボクはどうすればいい?」 

「何もすんな。お前は、風魔法を維持することだけ考えてろ。通路は狭いし、イザナミとクルルがいれば問題ない。そもそも、クルルの仕事は採掘以外にも、魔獣討伐や護衛もあるんだからな」


 海斗は、手を出さないことを決め、視界がクリアになるよう、ランプを掲げるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


『グオオオオオオオオ!!』


 オイルオーガ(海斗が適当に命名)は、前に出たイザナミ、クルルを見て咆哮を上げる。

 通路が振動し、『圧』のような衝撃が二人を襲うが、二人は気にしていない。


「だ、大丈夫なのか?」

「当然だろ」

「カイト、お前……出会って間もない二人を、よくそこまで信用できるな」

「まあ、俺は『知ってる』からな」

  

 クルルは原作中盤の後半、イザナミは原作終盤で仲間になるキャラだ。

 登場時のクルルは魔獣相手に苦戦することなく戦い、イザナミは終盤で仲間になるキャラなので序盤から中盤に出て来る魔獣は相手ではない。

 手を出すことは考えていない。むしろ、戦いを見れることでワクワクしていた。


「参る」


 イザナミは急接近、一瞬でオイルオーガの真横に移動。

 鞘に納めたままの剣による殴打が、オイルオーガの側頭部にヒットする。


「『銀打』」


 バガン!! と、岩を容易く砕くイザナミの殴打が、オイルオーガの側頭部にヒット……だが、オイルオーガはポリポリと側頭部を掻き、意に介していない。

 すると、反対側にクルルが現れ、ハンマーを手に身体ごと回転した。

 そして、ハンマーの噴射口から爆発音がして一気に加速。高速回転したままオイルオーガの側面を狙った一撃が放たれる。

 オイルオーガは目を見開き、丸太ほど太い腕を持ち上げ防御態勢を取る。


「『発破(ハッパ)クラッシュ』!!」


 ドゴォン!! と、ハンマーによる一撃がオイルオーガの腕に激突。鈍い音がして、オイルオーガが吹き飛ばされ壁に激突。

 クルルは回転を徐々に止め、ハンマーを担ぐ。


「な、なんだ、今のは」

「あれはクルルが作った専用武器、『ムジョルニア』だ。砕いた発破石を専用カートリッジに入れて、ハンマー内で起爆させて爆発的な一撃を生み出す。そしてそれにクルルのジョブ、『大槌士』と合わせたスキルの組み合わせは強い。まあ、今は採掘や採集の仕事がメインだけどな」

「詳しいな……」

「俺は何でも詳しいんだよ。忘れたのか?」


 すると、右腕が粉砕されたオイルオーガが、青筋を浮かべクルルを睨んでいた。

 クルルはハンマーを構え直す……が、イザナミが前に出る。


「あ、あの……やっぱり、私が」

「いや、いい……ニ秒だけ、『解放』しよう」

「へ?」

「解放……あ、まさか!! おいイザナミ、やめろ!!」


 すると、イザナミの髪の色が白くなり、頭に角が伸びる。

 刀の柄、そして鞘を手にし、真紅の瞳でオーガを見据えた。

 オイルオーガは、どういう原理なのか全身の毛穴からドロドロした液体を噴出し、身体をコーティングする。


「まずい。敵は防御態勢に入りました。あのドロドロが斬撃を吸収し、打撃も通しにくく」

「壊さないよう……手加減しよう」

「あ、あの」

「イザナミ!! やめろ!!」


 海斗が手を伸ばし『骨傀儡(パペット・ボーン)』で動きを止めようとしたが、全く意に介していない……効果は出ているのだが、海斗の操作を上回るほどの力で、拘束を意に介していないのだ。


『ゴオオオオオオオオオ!!』

「───『鬼閃華(きせんか)』」


 一瞬の抜刀、そして納刀……鍔鳴り。

 イザナミが振り返った瞬間、オイルオーガは縦に両断された。 

 そして、音もなく地面が綺麗に割れ、天井も綺麗に割れる。

 

「あんの、馬鹿……」


 海斗がそう言った瞬間、最下層が揺れ始めた。

 ガラガラと、天井が崩れ始め、地面まで崩れ始めたのだ。

 

「……すまない。やりすぎた」

「大馬鹿かお前は!! やばい、どこまで影響あるかわかんねーぞ!? そういや原作でも、地下炭鉱は崩落したんだっけ……」

「お、おいカイト!! 地震が酷くなってるぞ!!」

「あわわわわわっ!!」


 マルセドニー、クルルも慌てていた。

 イザナミだけが落ち着いていた。


「ああもう!! 奥だ、奥へ走──」


 海斗がそう叫んだ瞬間、天井、そして地面が崩落するのだった。

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― 新着の感想 ―
斬撃で洞窟が崩落したのははじめてみたかもw
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